2 / 26
2
しおりを挟む
*
(もういやだ……)
何もかもすべて放り出したい…
そんな気分だった。
どれほど一生懸命働いても、病気の母親の薬代と、生活費でそんな金は全部なくなる。
それどころか、毎月お金が足りなくて、借金は膨らむばかりだ。
幼い弟達はいつもお腹をすかせている。
なぜ、僕はこんなにも不幸なんだろう?
思い起こしてみれば、僕はずっと不幸だった気がする。
僕が十歳の時に父さんが事故で亡くなった。
その悲しみがまだ少しも癒えないうちから、身体の弱い母さんが働いて僕達を育ててくれたのだけど、その無理が祟って、母さんはすっかり身体を壊してしまい、今では寝たきりの生活だ。
それからは僕が母さんの代わりに働くことになった。
僕と同じくらいの子は学校に行ってるけれど、僕は父さんが亡くなってから、学校にも行っていない。
そんな余裕はうちにはなかった。
今は、朝から晩までひたすら働いて家計を支えている。
けれど、僕の力はあまりにも微力だ。
母さんには、思うように薬も買ってあげられないし、お医者様にも診てもらえない。
お金がないからろくな食事もさせられなくて、弟達も栄養失調になりそうだし、この僕だっていつ倒れてもおかしくない。
このままいったら、僕の家族はそのうちに破滅だ。
なにもかも放り出せたら…
どんなに楽になれるだろう…
家族も仕事もなにもかも…
「それも良いんじゃないか?」
まるで、僕の思考を読んだかのような声に…
僕は、驚いて後ろを振り返った。
「今のは僕に言ったのか?」
「あぁ、そうだ。
なにもかも投げ出したいんだろう?」
黒くしなやかな髪は、腰近くまで長く伸びていた。
黒い帽子を目深にかぶっているその男は、どこか僕を馬鹿にしたような目をして微笑んでいた。
「あんたは何者だ?
僕の思考が読めるなんて、まともな人間じゃなさそうだな。」
「その通りだ。
……良かったら、あんたのその魂を俺にくれないか?」
「……悪魔か……」
その問いに男は何も答えなかった。
(もういやだ……)
何もかもすべて放り出したい…
そんな気分だった。
どれほど一生懸命働いても、病気の母親の薬代と、生活費でそんな金は全部なくなる。
それどころか、毎月お金が足りなくて、借金は膨らむばかりだ。
幼い弟達はいつもお腹をすかせている。
なぜ、僕はこんなにも不幸なんだろう?
思い起こしてみれば、僕はずっと不幸だった気がする。
僕が十歳の時に父さんが事故で亡くなった。
その悲しみがまだ少しも癒えないうちから、身体の弱い母さんが働いて僕達を育ててくれたのだけど、その無理が祟って、母さんはすっかり身体を壊してしまい、今では寝たきりの生活だ。
それからは僕が母さんの代わりに働くことになった。
僕と同じくらいの子は学校に行ってるけれど、僕は父さんが亡くなってから、学校にも行っていない。
そんな余裕はうちにはなかった。
今は、朝から晩までひたすら働いて家計を支えている。
けれど、僕の力はあまりにも微力だ。
母さんには、思うように薬も買ってあげられないし、お医者様にも診てもらえない。
お金がないからろくな食事もさせられなくて、弟達も栄養失調になりそうだし、この僕だっていつ倒れてもおかしくない。
このままいったら、僕の家族はそのうちに破滅だ。
なにもかも放り出せたら…
どんなに楽になれるだろう…
家族も仕事もなにもかも…
「それも良いんじゃないか?」
まるで、僕の思考を読んだかのような声に…
僕は、驚いて後ろを振り返った。
「今のは僕に言ったのか?」
「あぁ、そうだ。
なにもかも投げ出したいんだろう?」
黒くしなやかな髪は、腰近くまで長く伸びていた。
黒い帽子を目深にかぶっているその男は、どこか僕を馬鹿にしたような目をして微笑んでいた。
「あんたは何者だ?
僕の思考が読めるなんて、まともな人間じゃなさそうだな。」
「その通りだ。
……良かったら、あんたのその魂を俺にくれないか?」
「……悪魔か……」
その問いに男は何も答えなかった。
0
あなたにおすすめの小説
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる