一足早い春が来た!

神在琉葵(かみありるき)

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 「本当にありがとう!」

 「いえいえ、それじゃあ、また夕方お迎えに来ますから…頑張って下さいね。」



 早乙女さんは、俺達をバイト先の駅前の商店街まで送ってくれた。
 今までバス停までてくてく歩いてそこからさらに循環バスで小一時間かかってたのが、車だと三十分もかからない。
だから、朝もいつもよりゆっくり出来たし、快適だった。



 「良い人に来てもらって良かったな。」

 「って、何度も言うけど、早乙女さんはあくまでもバンドのメンバーなんだからな。
 好き勝手に使うんじゃないぞ。
お金なんて払えないんだから。」

 「はいはい、わかりましたよ。じゃあな!」

 振り向きもせずそう言って、龍之介はさっさとバイト先に向かって行った。



 確かに、早乙女さんが来てくれて助かることは助かってる。
 部屋は綺麗にしてくれたし、料理はうまい、バイト先まで送ってもらえて、文句の付けどころなんてなにもない。
だけど、そんなことをさせて良いのか?
ただ、バンドメンバーだってことだけでそんなことしてもらって…
ありがたい反面、俺はそう言う部分で迷ってた。
だけど、早乙女さんはバンドメンバーとしても申し分のない人だし、あの演奏を聞いてしまったら絶対に他のバンドには譲りたくない。



 (とにかくしばらくは様子見っていうか……
早乙女さんの好きにさせてみるしかないか…)



そう思いながら、俺はバイト先に向かった。


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