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「……キちゃん!
ユキちゃんってば!」
「え…は、はいっ、何か!?」
早乙女さんが、びっくりしたような顔をバーバラの方に向けた。
なにやら考え事でもしていたらしく、バーバラのあの大きな声も彼女の耳には届いていなかったみたいだ。
「だ~か~ら~…お腹すいたってば~」
「え…あ、はい、わ、わかりました。
すぐに準備しますね。」
こんなきれいなキッチンが出来たら、女子ならつい使ってみたいなんて思いそうなものだけど、バーバラにはそんな気持ちは微塵もないようだ。
大きくなったこたつで寝転んでいる。
「なんかふかふかして気持ち良い…」
そういえば、このカーペットもけっこう高そうだ。
エアコンもついてるし、やっぱりどう考えても金かかってるぞ!
「ねぇ、山田…もっと大きいテレビ買ってよ。
部屋がこんなに広くなったんだから、こんな小さい奴じゃあ見にくいよ…」
「そんなこと言ったって、大きいテレビなんかそうそうすぐには……」
俺とバーバラがそんなことを話していると、突然、雨男が立ち上りキッチンの方へ歩いて行った。
「雨男さん…なにか?」
「あの…おいら……」
雨男は俯いて、そのまま黙ってしまった。
「雨男さん…?」
「お、おいら、お手伝いする。」
「え?あ……そ、そんな…
私なら大丈夫ですから、雨男さんはあちらで…」
「おいら…お手伝いがしたい…」
赤らめた顔をそっと上向け、蚊の鳴くような声で雨男がそう言った。
雨男が自分から何かをしようとするなんて、とても珍しいことだ。
多分、あいつも今回の改築に感謝をしてて、それで何かしたいと思ったんだろう。
そんなあいつの気持ちに、なんだか、ちょっとうるっと来てしまった。
少なくともバーバラよりはずっとマシな奴だな。
「……キちゃん!
ユキちゃんってば!」
「え…は、はいっ、何か!?」
早乙女さんが、びっくりしたような顔をバーバラの方に向けた。
なにやら考え事でもしていたらしく、バーバラのあの大きな声も彼女の耳には届いていなかったみたいだ。
「だ~か~ら~…お腹すいたってば~」
「え…あ、はい、わ、わかりました。
すぐに準備しますね。」
こんなきれいなキッチンが出来たら、女子ならつい使ってみたいなんて思いそうなものだけど、バーバラにはそんな気持ちは微塵もないようだ。
大きくなったこたつで寝転んでいる。
「なんかふかふかして気持ち良い…」
そういえば、このカーペットもけっこう高そうだ。
エアコンもついてるし、やっぱりどう考えても金かかってるぞ!
「ねぇ、山田…もっと大きいテレビ買ってよ。
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「そんなこと言ったって、大きいテレビなんかそうそうすぐには……」
俺とバーバラがそんなことを話していると、突然、雨男が立ち上りキッチンの方へ歩いて行った。
「雨男さん…なにか?」
「あの…おいら……」
雨男は俯いて、そのまま黙ってしまった。
「雨男さん…?」
「お、おいら、お手伝いする。」
「え?あ……そ、そんな…
私なら大丈夫ですから、雨男さんはあちらで…」
「おいら…お手伝いがしたい…」
赤らめた顔をそっと上向け、蚊の鳴くような声で雨男がそう言った。
雨男が自分から何かをしようとするなんて、とても珍しいことだ。
多分、あいつも今回の改築に感謝をしてて、それで何かしたいと思ったんだろう。
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少なくともバーバラよりはずっとマシな奴だな。
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