一足早い春が来た!

神在琉葵(かみありるき)

文字の大きさ
33 / 46

33

しおりを挟む




その晩、俺と雨男は、完成したばかりの居間で寝ることにした。
と、いうのも、龍之介の部屋は荷物がまだそのままで、落ち着かないと言い、それなら龍之介の新しい部屋を使えばどうだと言ったら、龍之介があの部屋を一番に使うのは自分だと言って譲らなかったから。
じゃあ、バーバラの部屋は?というと、バーバラはバーバラで、今夜は一人で寝たいと言うし、それなら俺の部屋に来るか?と聞いたら、俺の部屋は怖いからいやだと雨男が言って…
それじゃあ、居間のこたつで寝たらどうだと言ったら、ひとりじゃ寂しいと言うので、俺も付き合う羽目になってしまったんだ。
でも、これも良い機会だ。
 今まで雨男とじっくり話す機会はなかったから今夜は少し話をしてみることにした。



 「雨男…
新しい家、気に入ったか?」

 「うん…」

ぼんやりとテレビを見ながら、雨男が答える。
 確かに、この部屋に、あのテレビは小さいな。
でも、大きいテレビはやっぱり無理だ。



 「龍之介は明日もバイト休んで部屋片付けるって言ってたから。
 明日からはあの部屋で寝られるからな。
ところで、雨男…おまえの荷物はどのくらいあるんだ?」

 「荷物?そんなもんはない。」

 「ないって…ほら…その……森に住んでたんだろ?
その時に…」

 「何もないよ。おいら達は人間みたいに家があるわけじゃないし。」



まただ…
こいつはいまだ自分は人間じゃないようなことを言う。
イラッとする気持ちはあるにはあったが、でも、もしも、雨男が心の病気か何かだったら、頭ごなしに否定するのはきっと良くない。
だから、俺は平静を装って話を続けた。



 「そっか~…じゃ、引っ越しの必要はないんだな。」

 「うん。」

 雨男は俺の方を見もせずに、そう答えた。



 「何か必要なものはあるか?」

 「ううん。あ……布団があると嬉しいけど。」

 「布団なら今まで使ってたのがあるじゃないか。
 他には何かいるもんはないのか?」

 「う~ん…なんでも言っていいのかい?」

 「え?…あ、あぁ、あんまり高いものは無理だけど…とりあえず言ってみろよ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

思いを込めてあなたに贈る

あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...