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時を超えて

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「木本さん、大変です!
また例の事件です!」

 「なんだと!?
 今度の被害者はどんな奴だ?」



 今年に入ってから、奇妙奇天烈な事件が起きている。
いや『事件』かどうかはまだわからない。
 奇病なのか何なのか、詳しいことはまだ何ひとつわかっていないのだ。



 「今回の被害者は、小早川貢。
 20歳の大学生とのことです。」

 「またか!」



 俺達は、小早川の所に急行した。



 「あれです。」

そこには、虚ろな目をした老人が、腰掛けていた。



 「あの…小早川貢さんですか?」

 老人は何も答えないばかりか、俺の方さえ見ようともしない。



 最近、起きている事件は、若い青年…それも、この国の将来を担っていくであろう、特別に優秀な青年ばかりが被害者だ。
その青年達は、一夜にして老人と化し、しかも、これまでの記憶の一切を失っているのだ。
 DNA検査により、その老人が本人であることは証明されている。
だが、その姿はどう見ても20歳の大学生には見えない。



 俺と太田は、上からの命令で、赤坂剛という男の警護に行くことになっていた。
 幼い頃から、頭脳の明晰さは抜きんでており、それは成長するにつれ、ますます顕著なものとなっていた。
 将来は、日本を動かす逸材だと評価されている男だ。



だが、その前に、小早川貢が被害に遭ってしまったのだ。
 小早川にも近々、警護の者がつくことになっていた。
その矢先の不幸な出来事だった。



 「太田、赤坂だけは絶対に護り抜くぞ!
いいな!?」

 「はいっ!もちろんです!」

 俺は、相棒の太田と一緒に、赤坂の家に向かった。
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