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絶対に盗み見しないと誓い合った恋人のスマホ・女編

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「美穂…落ち着いて。
 大丈夫だから…」

 彼の両手が、私の手をそっと包み込む。
その温もりに、私はだんだんと気持ちが落ち着いていくのを感じた。



 「玲君…ごめんなさい。
 私…あなたのスマホをのぞきたいって思った。
もうちょっとで、のぞいてしまうところだった。」

 「……そんなこと、気にしなくて良いのに。」

 彼はそう言って微笑んだ。



 「私が言い出したんだよ。スマホをのぞくようなことはやめようって。
その私が、玲君のスマホをのぞこうとした…
私…最低だよね。」

 「最低なんかじゃないよ。
そんなの、ごく普通のことだよ。」

 「私は、あなたの信頼を裏切るような真似をしようとしたんだよ。」

 「実際にはしてないじゃない。」

 玲君はどうしてこんなに優しいんだろう?
その優しさが却って辛い。



 「ねぇ、何が気になったの?
 僕が浮気でもしてると思った?」

 「私…地味だし、良い所も全然ないし、玲君と全然釣り合わない…
そんなこと、自分でもわかってるんだ。
だから、いつも不安で…」



 玲君は、私の前にスマホを差し出した。




 「良いよ、調べて。
 僕は、やましい所はなにもないから。」

 「やだ、見たくない。」

 「ううん、僕が見てほしいんだ。
 僕のこと、信じてほしいから。」

そう言うと、彼は私の隣に来て、スマホを開いた。



 「やめて。」

 「見て!美穂に信じてもらえないなんて、僕には耐えられない。」

 彼が開いたギャラリーには、私の画像がいっぱいあった。
いつの間にこんなに撮ったんだろうって驚くくらい…



「あの誓いは撤回しよう。
これからは僕のスマホをどんどん見てほしい。
そしたら、僕がどれほど美穂のことを愛しているか、きっとわかるから…」

 「玲君……」



 彼の目は真っすぐで澄み切っていた。
そんな目でみつめられたら…



「わかった…
だったら、私のスマホも見て。
 私、玲君に隠し事なんて、何もないから…」



もう惑わされることはない。
 誰が何と言おうと、私は玲君を信じることに決めた…!



 ~fin.
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