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究極の選択

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騙された…?



そんなこと、あるはずがない。
 俺は、寮に入るための保証金100万もちゃんと払い込んだし…



(まさかあの100万…)



 全身から血の気が抜けていくような気がした。



 俺は、交番を探して駆け込んだ。
そこで、俺ははっきりと現実を突きつけられた。



 俺は、詐欺にあったのだという厳しい現実を…
信じたくはないけれど、受け入れるしかない。



 (どうしよう…)



田舎にはとてもじゃないけど帰れない。
皆の反対を押し切って出て来た手前、詐欺にあったなんて、恥ずかしくて言えるはずがない。



だけど、俺の手元には今10万程の金しかない。
これが俺の全財産だ。
10万で、借りられる家なんてあるのか?
でも、家を借りなきゃ、きっとバイトだって出来ない。



(とにかく不動産屋だ!)




俺は不動産屋へ走った。







「この条件はかなり難しいですねぇ…」

「そこをなんとか…」



両親にはすでに住む地域を伝えてある。
だから、どうしてもそこに住まなければならないのだ。
だけど、大都会のど真ん中…1ルームでも家賃が高い。



「あるとしたら、このアパートだけですね…」

そこは、駅から徒歩35分、風呂なし、共同トイレの3畳のアパートだった。
なんと、築75年だという。
よくぞ、都会の真ん中にこんなアパートが残っていたものだ。
だけど、憧れの東京で、こんなオンボロアパートに住むのはいやだ。



「他にないんですか!?」

「実は、あるにはあるんですが…」

不動産屋の歯切れが悪い。



「見せて下さい!」

「おやめになった方が良いですよ。実はそこは所謂事故物件で…出るみたいですよ…」

「えっ!?」



 出るって…アレだよな?
 俺は霊感なんて全くないけど、だからと言って、そういう所が平気かと言うとそうではない。
 誰だって、そんなところは嫌に決まっている。
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