愛すべき隣人

神在琉葵(かみありるき)

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「めっちゃおいしいから、ほっぺた落ちても知らんでぇ~」

 青年はそんな冗談を言って、機嫌良さげに鼻歌を歌いながら、ごちゃごちゃした液体を丸く整形する。



 「……あ、そういえば、まだ名前も聞いてへんかったな。」

 「えっと…ぼ、僕は…」

 僕はまた返答に詰まった。
 名前を答えるのはどうにも都合が悪い。
なぜなら、名前というものには国や時代によってなんらかの規則性があるからだ。
この世界ではどういう名前が一般的なのかもわからない今、僕は適当な名前を思いつくことさえ出来なかった。



 「……言いたないんか?
しゃあないな。
 本名やのうても、ニックネームでもええねんけど…あかんか?」

 「えっと…その……」

そう言われても、僕はなんと答えれば良いのか…
僕が黙りこんでいると、彼は苦い笑いを浮かべた。



 「……わかった、わかった。
ほんだら……そうや!君は『江藤君』にしよ。
さっきから、『えっと』ばっかり言うてるからな。
 俺はかた……いや、てっちゃんでええわ。」

 「は、はい、わかりました。
てっちゃん。」

 僕がそう答えると、てっちゃんはにっこりと微笑んだ。
そういえば、この青年はよく笑う。
それに、表情がとても豊かだ。
もしかしたら、この世界の住人は、友好的な種族なのかもしれない。



 「ところで、江藤君…
自分、仕事は何してるん?」

 「し、仕事ですか?」

 科学者だと言って良いものか…
どの世界にもこういう職業はあると思うのだが、もしもなかったら、不審がられてしまわないだろうか?
 僕がまた答えを躊躇っていると、てっちゃんは予想もしないことを口走った。
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