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「デイジー!!」



デイジーが沼に落ちていたのです。
 彼女は、恐怖に顔をひきつらせ、必死になって手足をバタつかせています。



 「だ、誰か…
誰か来てーーーー!」



アルバは叫びました。
その間にもデイジーの小さな体は、沼に沈んでいきます。
アルバがまだ幼い頃、友人が沼に落ちたことがありました。
アルバは不意にその時のことを思い出し、心の中が不安と恐怖でいっぱいになるのを感じました。



 「どうしたんだ!?
あっ!」



お客の男性が騒ぎに駆けつけ、今にも沈んでしまいそうになっているデイジーに気付きました。



 男性は、すぐに沼に飛び込み、デイジーを救い出しました。
しかし、デイジーはぐったりとしたまま、動きません。
アルバは、その様子に体がガタガタと震え、へなへなとその場に座り込みました。



 「何を騒いで…あ!デイジー!」



その場に寝かされているデイジーに気付いて、イルマの顔色がみるみるうちに青ざめていきました。



 「溺れたのね。大変だわ!」

イルマと一緒に来ていた女性が、デイジーの水を吐かせ、心臓をマッサージすると、デイジーは咳をして、大きな声で泣きだしました。



 「良かった。もう大丈夫よ!」

 「デイジー!!」

イルマは涙を流し、デイジーの小さな体を抱き締めました。



 「さぁ、早く家の中へ…
体を温めてあげてちょうだい。」

 女性に促され、皆、イルマの家の方へ向かいましたが、アルバだけはまだ立つことも出来ず、その場で泣きじゃくっていました。
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