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「それでも、かまいません!
彼女が助かるのなら、僕はどうなっても構わない!」

「そう焦らずに、今夜一晩良く考えた方が良いよ。
重大なことなんだから。
それでも、あんたの心が変わらないっていうのなら、あんたの思い通りにしてあげるよ。
あ…その時には、あんたの恋人の髪の毛を持っておいでよ。」

「マリアの髪の毛を…?」

魔女は小さく頷いた。



「あぁ、魔法に使うんだよ。
言っておくが、恋人の病状が重ければ重い程、あんたはエネルギーを多く吸い取られる。
下手をしたらそのまま死んでしまうかもしれないよ。
それでも良いのかい?」

 「し、死ぬ……?」

アンソニーは大きく目を見開き、魔女をじっとみつめた。



「どうする?やめておくかい?」

 「い、いえ…それでも構いません!
彼女が元気になれるのなら、僕はどんなことだって…たとえ死んだって構わない!」

アンソニーの気迫に、魔女はどこか困ったような顔で溜息を吐き出した。




「まぁ、急ぐことはないよ。
とにかく、今夜ゆっくり考えなよ。
明日、また来るからね。
それじゃあ、ライアン…お暇しようかね。」

魔女は黒猫を抱き上げ、部屋を出て行った。




「どうかよろしくお願いします!」

魔女の後ろ姿に、アンソニーは精一杯の声を叫んだ。
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