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 (……疲れた……)



 思うのはただただそれだけだった。
あれ以来、僕達のペースはさらに遅くなったような気がする。
だが、それでも全く進まない日はない。
 亀のような歩みではあっても、僕達は歯を食いしばり階段を上り続けた。
 幸い、ルイスのようなことをする者もいなかった。



ルイスの行動は僕達の心に大きな傷を付けたが、不思議なことにそのことが支えのようになっているような部分もあった。



あんなことだけはしてはいけない。
 少なくとも僕は、彼の死によってそんなことを決意した。
 僕は、皆をこの過酷な階段上りに導いた責任がある。
だから、どれほど苦しくても、逃げてはいけないんだ。
 心の奥底で、僕はそんなことを考えた。



とはいえ、そんな決心が揺らぐことも何度もあった。
だけど…今のところ、階段室の明かりもついている、酸素もある…
これはとても幸せなことだ。
 動力が稼働している間は、たとえ一日に一段だけでも進もう…僕はそう考えて、無理矢理自分を奮い起こした。



 *



 「あれ……」



ある日のこと、先頭を歩いていたダグが立ち止まって声を上げた。



 「どうかしたのか?」

 「あれ…扉じゃないか?」

そう言ってダグは上を指差した。



それに倣って僕は上を見上げた。



 (……扉だ!)



 間違いない!
 鼓動が急に速さを増した。



 「ダグ!扉だ!」

 「だよな!?あれ、扉だよな!」

 僕達は抱き合って飛び上がった。
 皆も上を見上げて、一気にざわめきが広がった。



 「行こう!」

ダグが跳ねるように階段を上り始めた。
 今までとは別人のような動きだ。
 僕も彼の後を追いかける。
 皆の足音が急に生き返ったようだった。



もしかしたら、地上にたどり着いたのではないか?
そう思う気持ちとは裏腹に、自分は妄想を見てるんじゃないかと思う気持ちもあった。
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