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エリーズを探して

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そしてまた次の日…俺は、昨日と同じような時間にレストランに向かい、夕飯を摂ってから酒場に向かった。 

レストランでは、たまたま話好きな男と相席になり、思ったよりも少し遅い時間になってしまった。 



いつものようにテーブルをまわりながらエリーズの話を聞いていたら、昨日の男に声をかけられた。 



「よう、あんちゃん!
あんたと同じような境遇の男がいるぜ。
一緒に飲んだらどうだ?」

「同じような境遇って?」

「結婚を誓った女に逃げられたらしい。」

「ば、ばかなことを言うな!
俺は逃げられてなんかいない!」



全く失礼な奴だ!
エリーズはただちょっと気晴らしに出かけただけなのに…
逃げられただと!?
俺は、頭にかーっと血が上るのを感じた。




「まぁまぁ…」



そんな俺の気持ちにも気づかず、男は俺の腕をつかんで、奥のテーブルに連れて行く。 




(あっ!)



俺はその後ろ姿に見覚えがあった。
まずいっ!
逃げようと思ったら、運悪くそいつが振り向き、俺と目が合ってしまった。
そう…アランと目が合ったんだ。



「あ…あの…その…」



焦る俺とは正反対にアランはまるで反応しない。



(なんで……あ、そうか…!
俺は男に戻ったんだ!)



ついうっかりしていた。 
アランが今の俺を見ても、あのステファニーだとわかるはずがないんだ。
俺はほっと胸をなで下ろした。



「このあんちゃんも、結婚を誓った女に逃げられたんだ。」

「だ、だから、それは…」

「そうか、あんたも…
今夜は飲もう!飲んで、あんな女のことなんて忘れようぜ!」



アランはふらふらと立ち上がって俺の腕をつかみ、自分の隣に座らせた。 



「さ!飲めっ!」



アランはグラスになみなみと酒を注いだ。 



「あ、ありがとう。」



出された酒を俺は素直に飲み干した。 



それにしてもひどい顔だ… 
元々、アランは酒に弱いのに、かなり無理して飲んだんだろう。 
目が完全に据わっている。 



「ううう…ステファニーの馬鹿野郎~!!」



アランはテーブルを殴り付けながら、泣き崩れた。 
やっぱりあんな騙すようなやり方はせずに、ちゃんと話した方が良かったのか…
アランの心の傷は思ったより深いようだ。
今更ながら、罪悪感に胸が締め付けられる。



「今夜はとことん付き合うぜ。さぁ、飲もう。」



俺は、アランの背中を優しく叩いた。



「ありがとう…あんた、良い人だな…」



アランは俺に抱きつき、子供みたいに泣きじゃくる…



(すまない、アラン…)



俺は朝までずっと、ステファニーの悪口と、ステファニーがどれだけ良い女だったかって話を聞かされた。
アランは、思ってた以上に、俺にぞっこんだったようだ。
この分じゃ、立ち直るにもまだずいぶんかかりそうだ…

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