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「うっ!」
一瞬、何が起きたのかよくわからなかった。
背中にかぶさる律子の息遣いが荒い…何か熱いものを押し付けられたような感覚を感じ、俺は鼓動が急激に速くなった。
「……なぜ…なぜなんだ…」
俺の背中に密着している律子に訊ねた。
律子は、力を込め、俺の背中からナイフを引き抜いた。
その瞬間に生暖かいものが噴き出すのと同時に全身から力が抜け、俺は思わずその場にがっくりと膝を着く。
律子は、そんな俺を嘲笑うかのように、甲高い笑い声を上げた。
「あんた、どこまで間抜けなの?
この私が、あんたに本気で惚れてたとでも思ってたの?」
「り…律子…お、おまえ……」
「あんた、まだ思い出さないのね…
そうよね…あんたはあんな事件なんて、もう覚えてもいないんでしょうね…!」
*****
「だめだ!」
俺は、原稿用紙をびりびりと破り捨てた。
そこら中には千切れた原稿用紙が散乱している。
今度の連載は、ミステリー色の強いサスペンスだ。
ドラマ化もすでに決まっている。
今までにない新感覚のサスペンスを…と言われているのに、この既視感はなんだ。
こんなんじゃとても採用されない。
やはり、最初からプロットを練り直すしかない。
そう思って、何度書き直したことだろう。
なのに何度書いても、良いものが書けない。
俺は、気分転換に立ち上がり、大きな窓から外の景色を眺めた。
深夜だというのに、都会の町は眠らない。
明々と眩い光が、夜空の星よりも輝いている。
天にも届きそうな高層マンションの最上階から見るそんな景色は、俺の気持ちを落ち着かせるどころか、さらに苛々させるだけだった。
(どうすりゃ良いんだ…!)
俺は、手近にあった天使の像をテレビに向かって投げつけた。
一瞬、何が起きたのかよくわからなかった。
背中にかぶさる律子の息遣いが荒い…何か熱いものを押し付けられたような感覚を感じ、俺は鼓動が急激に速くなった。
「……なぜ…なぜなんだ…」
俺の背中に密着している律子に訊ねた。
律子は、力を込め、俺の背中からナイフを引き抜いた。
その瞬間に生暖かいものが噴き出すのと同時に全身から力が抜け、俺は思わずその場にがっくりと膝を着く。
律子は、そんな俺を嘲笑うかのように、甲高い笑い声を上げた。
「あんた、どこまで間抜けなの?
この私が、あんたに本気で惚れてたとでも思ってたの?」
「り…律子…お、おまえ……」
「あんた、まだ思い出さないのね…
そうよね…あんたはあんな事件なんて、もう覚えてもいないんでしょうね…!」
*****
「だめだ!」
俺は、原稿用紙をびりびりと破り捨てた。
そこら中には千切れた原稿用紙が散乱している。
今度の連載は、ミステリー色の強いサスペンスだ。
ドラマ化もすでに決まっている。
今までにない新感覚のサスペンスを…と言われているのに、この既視感はなんだ。
こんなんじゃとても採用されない。
やはり、最初からプロットを練り直すしかない。
そう思って、何度書き直したことだろう。
なのに何度書いても、良いものが書けない。
俺は、気分転換に立ち上がり、大きな窓から外の景色を眺めた。
深夜だというのに、都会の町は眠らない。
明々と眩い光が、夜空の星よりも輝いている。
天にも届きそうな高層マンションの最上階から見るそんな景色は、俺の気持ちを落ち着かせるどころか、さらに苛々させるだけだった。
(どうすりゃ良いんだ…!)
俺は、手近にあった天使の像をテレビに向かって投げつけた。
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