チクタクの森

１

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 「……今日もまただめでございましたね。」

 「もぅっ！そんな顔しないの！
 大丈夫！世界はまだまだ広いのよ！」

うなだれるクリストファーの背中を、シュゼットは景気良く叩いて、にっこりと微笑みました。
それにつられて、クリストファーも懸命に微笑みます。



 私、シュザンヌとシュゼットとは、双子です。
 年齢は八歳……ということにしておきましょう。
それは嘘ではありませんが、本当とも少し違うのですが……。
 私達とお供のクリストファーは、ある者を探して、街から街へと、それはそれは長い旅を続けています。



それは、妹シュゼットのちょっとした好奇心が発端で……
その時の私達は、まさかこんなことになるなんて、思ってもみなかったのです。



 ＊＊＊



うちの別荘の近くには、チクタクの森という少し不思議な森がありました。
その森ではどこからともなく、チクタクと言う時計の音が聞こえるのです。
ですが、その音がどこから聞こえてくるのかは誰も知らず、しかも、その音は大きくなると聞こえなくなる…つまり、子供にしか聞こえないのです。

お父様やおじいさまも子供の頃にその音を聞いたと、おっしゃいました。 もちろん私達にも聞こえていますが、お父様のお話によると、ちょうど今の私達くらいの年から聞こえなくなったとのこと。
ですから、シュゼットは、聞こえなくなる前になんとしても、音の在りかをみつけるんだと、それはたいそう張り切っていたのです。



 「良い？シュザンヌ……
私達は双子なのよ。
つまり、それは、お父様やおじいさまの二倍良く聞こえるってことなの。
だから、私達には絶対にみつけられるわ！」



 双子だから二倍というのはどうなんでしょう？
でも、そういう話をする時のシュゼットの瞳は本当にきらきら輝いてまるで宝石のようでした。
 彼女の自信に満ちた言葉を聞いていると、本当になんでも出来るように思えて来るから不思議です。