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 (ここもか…)



ちょっと良いかな?と思ったお店は、どこもいっぱい。 
しかも、カップルが多くていやになる。 



 (駄目だ、こりゃ。仕方ない。コンビニで何か買って帰るか…)



どこかで食べて帰ることは諦めて、私は駅への道を歩き始めた。
ところが、たいして酔ってもないのに、どうやら道を間違えたようで、なかなか駅にたどり着けない。
 誰かに道を訊ねようと思っていたところ、私の足は、ある喫茶店の前で唐突に停まった。



どこにでもありそうな小さな喫茶店…その古びた看板には『喫茶 三毛猫』の文字と猫のシルエットが刻まれていた。

 私は特に猫が好きというわけではない。 
 子供の頃、実家では犬を飼っていたくらいだ。
だけど、大樹君の家はみんな猫好きで、特に三毛猫を好んでいた。 
そうそう、昔、猫は船の守り神とされていて、特に三毛猫のオスは守り神中の守り神なんだって、大樹君が教えてくれた。 
うちのミケが、そのうち、オスの三毛猫を産むかもしれないって、大樹君は楽しみにしてたけど、オスの三毛猫が産まれることはなかったっけ。
なんでも、オスの三毛猫っていうのはすごく珍しいんだって。 
そういえば、大樹君家の猫達は、確か、親戚の人に引き取られたんだよね。



ふと、そんなことを思い出したら、私はその店を素通りすることは出来なかった。 
ドアベルの軽やかな音と共に扉を押し開けた。 


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