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第二の依頼

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マジ……?
こんな異世界から、家に電話なんてかけられるのか…!?
まだどこか信じられない気持ちで、僕は家に電話をかけた。
おぉ…鳴ってる…呼び出し音が普通に鳴ってる……



「はい。井上です。」

 「お、おかあさん?
ぼ、ぼ、ぼく……」

 「何?おれおれ詐欺?
あ、ぼくぼく詐欺か……」

 「ち、ちがうよ!
 僕、まーくんだよ!」

 「まーくん?
……本当にまーくんなの?」

 「そ、そうだよ…僕…まーくん……」

 懐かしさと嬉しさと心細さで、僕の瞳からは熱い涙が溢れ出した。



 「あら~…今どこなの?」

 「今は……そ、その……外国。」

 本当のことが言えるはずもなく、僕は適当に言葉を濁した。
……どう考えても濁し過ぎだけど。



 「それでね……」

♪ぴんぽーん

「あ、まーくん、ちょっと待ってね。」

 「お、おかーさん、僕三分しか……」



電話越しに会話が聞こえた。
あの声は隣の大村さんだ。
あのおばさん、話が長いんだ。

 早く、早く戻って来て!
 僕には三分しか……



つー…つー…つー…



無情な音が耳をかすめ、それと同時に僕の手の中から携帯が消え失せた。



 「あっっ!」

 『残念じゃがそこまでじゃ。
ま、生きてることは伝わったじゃろう。』

 「そ、そんな…僕はまだなにも…」

 『ところで、良い報せがある。
 次の依頼が来たんじゃ。』

 僕の抗議を一切無視し、老人は勝手に話を続けた。



 『次はこの町に住む踊り子のアイリンさんからの依頼じゃ。
なんでも、魔法使いにもらった羽衣を盗賊に奪われたらしく、それを取り戻してほしいとのことじゃ。
 謝礼に天然石のブレスレットをくれるらしい。
それと、このアイリンさん…なかなかのべっぴんさんじゃぞ。
 良かったのう…』



 「……べっぴんさん…?
あ…あの!!」



 僕がまだショックから覚めないうちに、老人は言うだけ言って……



(おかーさん……)



また込み上げて来た涙を僕はぐっと堪えた。

そうだ。解決するしかないんだ。
 次から次に依頼を解決して、早く元の世界に戻るんだ!


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