ミステリーSS集

神在琉葵(かみありるき)

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人形師

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「エディ!いる?」


 「やぁ、アニー!」



お昼を知らせる鐘が鳴り始めた頃、恋人のアニーが、エディの家に手作りのランチを持ってきた。



 「いつもありがとう。」

 「そんなこと気にしないで。
ねぇ、エディ…今日は外で食べましょうよ。
こんなに良いお天気なんだもの。
 家の中にいるのはもったいないわ。」

 「そうだね、そうしよう。」



 家の傍の倒木に二人は並んで腰かけ、仲良くランチを一緒に食べる。
そんなありふれた日常が、二人にとってはとても楽しい時間だ。



エディは人形作りの職人だ。
まだ若いが彼の名は遠くの町にも広まっていた。
なぜならば、彼はとても人間に近い人形を作るからだ。
その腕を買われ、特定の人物…特に亡くなった人にそっくりな人形を作ることで評判になったのだ。
 遺された者は、故人にそっくりな人形に深く癒された。



 「あなたの作る人形には、魂までこもってるみたいね。」

 「まるで本当にあの人が生き返ったみたいだわ。」



エディのその評判は、お城にも届いていた。
つい最近、国王から亡くなった王妃の人形を作るように命じられ、エディは遺された王妃の肖像画を頼りに、一心不乱に人形を作った。
その甲斐あって、素晴らしい人形が完成し、国王はそれを見て涙を流す程だった。




 「あら?あれは?」

アニーの指さす方向から、兵士らしき二人の男が歩いて来る。



 「人形職人のエディか?」

 「は、はい、そうですが、何か?」

 「王様のお呼びだ。私達と一緒に城へ参れ。」

 「え?お城に?」

アニーは心配そうな顔で、エディをみつめた。



 「大丈夫だよ、アニー…心配しないで。」

エディは、兵士たちと一緒にその場所を後にした。



そして、エディはそれから数か月もの長い間、家に戻って来ることはなかった。
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