ミステリーSS集

神在琉葵(かみありるき)

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跳ぶ人

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「うっ……」

 「坂本さん…?気が付いたのですか?
 坂本さん!」



 僕は、体に走った酷い痛みに顔を歪めた。
 不思議な事に、僕はベッドに横になっていた。



 「坂本さん!わかりますか?」

 「え…何が…?」

 「覚えていないのですか?
あなたはトラックにはねられ、半年もの間、意識がなかったのですよ!」

 「え…?」

 呆然とする僕には構わず、医師はいろんな事を話し続けた。



トラックにはねられた僕は、瀕死の重傷を負い、この半年間は所謂植物状態で、意識が戻ったのは奇跡のような事だと言われた。



つまり…僕がワープしたのは…
眠ってる間に見た妄想…夢だったのだ。



 考えてみれば確かにおかしい。
そんな特殊な能力を、僕が使える筈なんてないんだ。



 (全く馬鹿馬鹿しい夢を見たものだ。)

 苦い笑いがこぼれた。



 僕は、それから順調に回復し、三か月程して退院した。
その後、一か月程してから、仕事にも復帰した。



 *



 「お兄ちゃん!」

ある時、近くのスーパーに向かっていると、僕の元へ小さな女の子が駆け寄って来た。



 「危ないから走っちゃだめよ!」

 子供の後を母親らしき女性が追いかける。



 「お兄ちゃん、この前はありがとう!」

 「ありがとうって……何が?」

 「私のこと、助けてくれたじゃない。」

 「えっ!?」

 言われてみれば、なんとなくその子供には見覚えがあった。



 「助けるって…?」

 「ほら、ひながトラックにひかれそうになった時、お兄ちゃんが来てくれて、魔法で…」



 (魔法……?)



 「陽菜ちゃん!変なこと言っちゃだめでしょ!
すみません。おかしな事を申しまして。」

 「変じゃないもん!
ひな、本当にこのお兄ちゃんに助けてもらったんだもん!」

 「はい、わかったから行くわよ。
 失礼します。」



 (……え??)



 僕は、混乱したまま、母子の後ろ姿を呆然とみつめるしかなかった。
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