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(だけど……)



 仲谷さんはいまだ最優秀賞を取ったことがない。
 前回の時、今回はなんとしても最優秀賞を取るんだって言ってて…
いつもなら三作投稿するところを、一作だけにして、いつもの何倍も推敲し、気合いを込めた作品を投稿された。



 仲谷さんが本気で取り組まれたことが良くわかる作品で、とても面白かったし、きっと、今回は仲谷さんが最優秀賞だって僕は思ってた。
それは他の人も同じで、レビューは皆、良い評価ばかりだったし、『絶対にこれが最優秀賞だと思います!』なんて、コメントを書いていた人もいたくらいだ。
だけど…最優秀賞を取ったのは別の作品だった。



 仲谷さんもさすがにショックを受けられたようで、一時は「次の月の石賞に参加する気力がなくなった。」なんて、言われていた程だ。
すぐに、またいつもの元気な仲谷さんには戻られたけど、そのことがあったから、仲谷さんが最優秀賞を欲しがっている気持ちはとても大きくなってると思う。



そんな時、僕のあのプロットを見たら…



誰にでも『魔がさす』ってことはある。
 最優秀賞がほしいという気持ちが大きくなればなる程、手段を選ばなくなってしまうんじゃないだろうか…



(あ…また……)



あの仲谷さんのことを疑うなんて、僕はどうかしている。
 仲谷さんはとてもお世話になってる恩人だっていうのに…
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