扉(ちょっとだけ)ロングバージョン

神在琉葵(かみありるき)

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「なに、これ?」

「聞きたいのはこっちだ。
なんなんだよ、これ!
1000円って言ったら硬貨しかないだろう?」

 僕は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
 得体の知れない恐怖が僕を襲う。
 三島もおかしな顔をしている。



 「どうしたんだよ、こんなの。
 手品の道具か何かか?」

 三島は好奇の目で、1000円札を見ていた。



 「い、いや……」

 僕は、1000円札を慌てて財布の中に仕舞った。



 「じゃあ…5000円で…」

 「ありがとな。じゃあ…」

 三島は1000円硬貨を交えてお釣りをくれた。



 「あ…あの三島…」

 「なぁ、咲子も呼ばないか?」

 咲子という名前には憶えがあった。
 昨日、オフ会で会った創作仲間の地味な女の子だ。
サイトでは咲子とはけっこう気が合っていて、勝手に咲子に可愛いイメージを妄想していたけれど、会ってみると、不愛想でとにかくすごく地味で…正直ちょっとがっかりした。



でも、三島は昨夜のオフ会には来ていない。
サイトでのことも、三島にはほとんど話したことはない。
それなのに、なぜ咲子のことを知ってるんだろう?
あの咲子以外に、『咲子』と言う名前の女性に覚えはないけど…



「えっと、咲子っていうのは…」

「えっ!?おまえ…まさか自分の彼女のことを忘れたんじゃないだろうか?」

「えっ!あ、あの咲子が僕の彼女!?」

ありえない!
 咲子とは、昨夜、会ったばかりだぞ。
しかも、全然タイプじゃなかった。
 多分、向こうだってそうだろう…なのに、なんでそんなことに…
三島は怪訝な顔で僕を見ていた。



おかしい…何かがおかしい。絶対に変だ!



 「中村…大丈夫か?」

 「え?あ、あぁ…なんともない。
と、とりあえず、今日は咲子はやめておこう。」

 「なんだ、喧嘩でもしたのか?
まぁ、お前がそう言うならやめとこう。」

 三島はやけにあっさりとそう言った。
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