タイムトリップはいかがですか?

神在琉葵(かみありるき)

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タイムトリップ

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最近、めきめきと頭角を現して来たサイエンストリップ社の売り物は『タイムトリップ』だ。
とはいえ、いまだタイムマシンは開発されていない。
では、サイエンストリップ社にはどうしてそんなことが出来るのか?



つまり、サイエンストリップ社のタイムトリップは、その人間そのものを違う時代へ送るのではなく、その人間の意識だけを送るのだ。



そんなことなら、法外な金を払ってまでしなくても、過去を思い出しさえすればすぐに出来そうなものだが、サイエンストリップ社のものはやはりそれとは違う。



どういう技術を使っているのかはもちろん企業秘密だが、サイエンストリップ社のすごいところは、大きな誤差なしに目的の時代へ意識を飛ばせること、そして、過去に戻っている間は、今現在までの記憶をすべて忘れていることだ。
それだけではない。その過去では、実際とは違った行動が出来るケースもあるという。



ただ、その時代のことを思い出すだけなら、もちろんそれがどうなったかという結末もわかっている。
だが、サイエンストリップ社のタイムトリップでは、それがわからない。
なぜなら、実際に体験した過去を過ごすかどうかわからないからだ。
つまり、実際に過ごした過去であってもタイムトリップ中はそのことを忘れているから、新鮮な気持ちでそれをまた再体験出来る上に、実際とは違う過去を体験出来るかもしれないのだ。



だが、それが弊害を生んでもいる。
たとえば、最近起こった事件では、ある青年が数年前に亡くなった恋人と出会った頃にタイムスリップしたのだが、そこでは彼女は死ぬことはなかった。
タイムスリップによって、実際とは違うとても楽しい時を過ごしたが、現実に戻り、彼女が死に、この世にはもういないという事実が青年の心を深く傷付け…
そのあげく、その青年はその辛さに耐えきれず、自ら命を絶ってしまったのだ。


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