タイムトリップはいかがですか?

神在琉葵(かみありるき)

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タイムトリップ

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予約してからひと月後…
ようやく俺の番がやって来た。



「岩崎様、こちらへどうぞ。」



俺が通されたのは小さな部屋だ。
そこにあった椅子に座らせられ、テーブルを挟んだ向かい側にスタッフの男が座った。



「始める前にもう一度確認させていただきます。」

「そんな面倒なことはいらない。早くやってくれ。」

「申し訳ございません。規則ですので。」

「……勝手にしろ。」

面倒臭いが、こういったマニュアルをこなさないと出来ないことになっているのだろう。
ならば、付き合うしかない。



「タイムトリップの期間は72時間です。
その間に数日間の過去を体験される方もいらっしゃいますし、数年を体験させる方もいらっしゃいます。
つまり、個人差が大きいということですが、それはご了承いただきます。」

 「それなら申込書を書く時に聞いた。
たとえ短くたって、文句なんて言わない。」

 「ご理解いただき、どうもありがとうございます。
それから、あなたのお考えになることをモニターさせていただきますが、それは、万一の時に備えるためです。
どんなことであれ、口外することは絶対にございませんので。」

「何なんだ、万一の時というのは」

「それはお客様が命の危険にさらされた時です。」

「命のって…?
俺は昔の記憶の中に戻るだけだろ?
そんなことが起きるわけないじゃないか。」

「いえ、あなたがもしも死を望んだら、実体にどんな影響があるかわかりません。
こんな話を聞いたことがありませんか?
目隠しをした囚人に『今から、熱いアイロンを押し当ててやる!』と言って、その腕に冷たいアイロンをあててやると、本当にやけどをすることがあるのです。
つまり、想像の力はあなどれないということですね。
ですから、あなたがもしも死を望んだら、それに似たようなことが起きる可能性もあるわけです。
その時の対策のためです。」

「わかったよ。好きにやってくれ。」

「では、まず、こちらへご署名を。」

俺は言われるままにサインした。
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