10 / 45
タイムトリップ
10
しおりを挟む
あいつとの出会いは、確か三年程前のことだったと思う。
ライブ後の出待ちのファンの中にあいつはいた。
髪を染めた者が多い中、黒髪のあいつはそれだけで目立っていた。
しかも、いかにもOLといった感じの服装は完全に場違いだった。
俺が出て行くと、すぐにファンの子が群がって来る。
だが、あいつは少し離れた場所にいて、静かに頬笑むだけだった。
だから、最初は俺のファンだなんて思わなかった。
あいつが俺に近付いて来たのは、二度目か三度目の出待ちの時だったと思う。
小さな包みを手渡され、ライブとても良かったです。頑張って下さいとかなんとか…小さな声でそう言うと、さっといなくなった。
変わった子だなっていうのがその時の印象だ。
家に戻り、包みを開けてみたら、革のリストバンドと手紙が入っていた。
リストバンドは、良い素材を使った、しっかりした作りのもので、けっこう値の張るものだろうと思った。
手紙には、簡単な自己紹介と、友達に誘われて初めて行ったライブハウスで俺達を見てファンになったと書いてあった。
いつもはたいてい似たような系統のバンドと演るんだが、主催者の都合で、ごくたまに、毛色の違うバンドと対バンになることがある。
少し前に、J-POPみたいなバンドと一緒になったことがあったが、あいつが俺達を見たのはどうやらその時だったようだ。
自分とは違う世界に迷いこんだような気がしたとか、あんなに心が動いたのは初めてだったと書いてあり、何よりも、まるでペン字のお手本みたいに綺麗で真面目な字が、印象に深く残った。
ライブ後の出待ちのファンの中にあいつはいた。
髪を染めた者が多い中、黒髪のあいつはそれだけで目立っていた。
しかも、いかにもOLといった感じの服装は完全に場違いだった。
俺が出て行くと、すぐにファンの子が群がって来る。
だが、あいつは少し離れた場所にいて、静かに頬笑むだけだった。
だから、最初は俺のファンだなんて思わなかった。
あいつが俺に近付いて来たのは、二度目か三度目の出待ちの時だったと思う。
小さな包みを手渡され、ライブとても良かったです。頑張って下さいとかなんとか…小さな声でそう言うと、さっといなくなった。
変わった子だなっていうのがその時の印象だ。
家に戻り、包みを開けてみたら、革のリストバンドと手紙が入っていた。
リストバンドは、良い素材を使った、しっかりした作りのもので、けっこう値の張るものだろうと思った。
手紙には、簡単な自己紹介と、友達に誘われて初めて行ったライブハウスで俺達を見てファンになったと書いてあった。
いつもはたいてい似たような系統のバンドと演るんだが、主催者の都合で、ごくたまに、毛色の違うバンドと対バンになることがある。
少し前に、J-POPみたいなバンドと一緒になったことがあったが、あいつが俺達を見たのはどうやらその時だったようだ。
自分とは違う世界に迷いこんだような気がしたとか、あんなに心が動いたのは初めてだったと書いてあり、何よりも、まるでペン字のお手本みたいに綺麗で真面目な字が、印象に深く残った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる