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タイムトリップ

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あいつとの出会いは、確か三年程前のことだったと思う。 
ライブ後の出待ちのファンの中にあいつはいた。 
髪を染めた者が多い中、黒髪のあいつはそれだけで目立っていた。 
しかも、いかにもOLといった感じの服装は完全に場違いだった。 
俺が出て行くと、すぐにファンの子が群がって来る。 
だが、あいつは少し離れた場所にいて、静かに頬笑むだけだった。 
だから、最初は俺のファンだなんて思わなかった。 



あいつが俺に近付いて来たのは、二度目か三度目の出待ちの時だったと思う。 



小さな包みを手渡され、ライブとても良かったです。頑張って下さいとかなんとか…小さな声でそう言うと、さっといなくなった。
変わった子だなっていうのがその時の印象だ。



家に戻り、包みを開けてみたら、革のリストバンドと手紙が入っていた。 
リストバンドは、良い素材を使った、しっかりした作りのもので、けっこう値の張るものだろうと思った。 



手紙には、簡単な自己紹介と、友達に誘われて初めて行ったライブハウスで俺達を見てファンになったと書いてあった。 
いつもはたいてい似たような系統のバンドと演るんだが、主催者の都合で、ごくたまに、毛色の違うバンドと対バンになることがある。
少し前に、J-POPみたいなバンドと一緒になったことがあったが、あいつが俺達を見たのはどうやらその時だったようだ。 
自分とは違う世界に迷いこんだような気がしたとか、あんなに心が動いたのは初めてだったと書いてあり、何よりも、まるでペン字のお手本みたいに綺麗で真面目な字が、印象に深く残った。 
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