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バディー? お断りします。
しおりを挟む「ふーん。まあいいんじゃない、邪魔にならなさそうで」
「しれっと酷いこと言わないでもらえますか」
「ルキアはそう思うかもしれないけど、隠密行動が完璧にできるのは優秀だよ。ウイルスの発生状態を現地で安全に確認できるし、仮にウイルスの巣があったとすればそこに潜入して状況を把握できる。今は前衛での戦力しかない防衛総隊の頭脳になり得る能力だ」
ノアはそう説明して自分を納得させるかのように頷いた。その説明があってもルキアは不満そうな顔をしている。
「もっとすごいのが来ると思ってたんだけどなー」
「ちょっと失礼じゃない……?」
「てかおにーさん種族何なの?」
ガン無視である。
「……俺は吸血鬼。ごめん、まだ言ってなかった」
「ふーん。なんかぱっとしないね」
「やっぱり君さっきから失礼だな! 俺君よりも八つも年上なんだけど!」
「え、おじさんじゃんウケるー」
「おじさん言うな! まだ二十四だよ!」
「まあまあ言い争いはやめて、これからバディーになるんだから……」
「「こんなバディー嫌です!!」」
お互いを指差し声を荒げる。見事な共鳴っぷりに、ルイとルキアは目を合わせて顔を顰めた。二人の間には火花が散っているようにも見えた。
「せめてちゃんと戦える人にしてよね……」
「すみませんねぇ非戦闘員で」
「……いやルキア、本当はキミのためなんだよ」
「え?」
ルキアはノアの言葉にぴたりと動きを止めた。ルイもその意味が分からないようで、疑問符を浮かべる。
「キミは強すぎる。だから自分の力を過信してる。それにその怖いもの知らずで傍若無人な性格。一人でウイルスに突っ込ませて周囲の建物を破壊したり人を巻き込んだり、取り返しのつかないことになる可能性だって否定できない。そんなキミを制御するために、ルイ君にはキミを見守ってもらおうと思ってるんだ」
「……俺が?」
「……あたしを制御?」
ルイとルキアは二人して目を丸くする。ノアの言葉を要約すると、ルイは強すぎて歯止めの効かないじゃじゃ馬のお守りをする監視役、というところだ。
一方のルキアは、猛犬注意のレッテルを貼られた、頑丈な首輪付きの厄介者である。
ルイにはこれを否定することができなかった。
「……分かりました。どんな状況でも彼女を見守ります」
「うん。頼んだよ」
「……っ分かんない!」
そこでルキアはまた声を荒げ、悔しそうに拳を握り締めて顔を背けた。
「なんであたしが監視なんかされなきゃいけないワケ? 見守るってなに? あたしは守られる必要なんかないっつーの!」
「ルキア」
「誰もなんも分かってない! 絶対イヤだから!」
そう言ってルキアは詰所から勢いよく出ていってしまった。再び静寂が部屋に流れるが、ノアが咳払いをして沈黙を破る。
「……ルキアは自分が一番強いと思ってるんだ。実際それに近いよ、正直。ルキアが中学生の頃、ボクらが現場に到着する前にあの子は無傷のまま一人で十体のウイルスを撲滅してるから、自分の力を過信するのも頷ける。まあ、その時民家を三棟全壊させてるんだけどね。だから一人にはできないんだ」
「え……」
ウイルスを倒すことなど一般人には無理だ。ウイルスは猛獣などをも喰らう、凶暴で殺戮的な存在。それを中学生の少女が撲滅するなんて、ルイには到底信じられなかった。——しかも、十体もだ。
「まあ放っておいても問題ないよ。きっと総司令のところに行ってるだけだろうから。……見てみるかい? 彼女の強さ……恐ろしさを」
ノアはルイを見上げてかくりと首を傾げた。
***
ノアがルイを連れて来たのは、巨大なモニターが壁にずらりと並ぶ部屋だった。窓際の高級そうなデスクにも大きめのモニターがあって、その多さにルイは呆気に取られる。
「ここはボクの仕事部屋。大体はここにいるから、何か用がある時は言ってね。今はBCバンドがあるから直接来る人はそんなにいないけど」
「BCバンド?」
「それについては後で説明するよ。まずはキミに見てもらいたいものがあるからね」
そう言って、ノアはデスクへ向かう。ルイもその後を追って彼のそばに立つ。デスクチェアに座ったノアは、モニターを起動すると大きな翠の瞳でルイを見上げた。
「キミはウイルスを見たことは?」
「……一度だけ」
「そっか。じゃあ驚くことはないね」
ノアはそれだけ確認してデスクへ視線を戻した。
デスクに映像が映し出される。恐らくドローンで撮影したものだろう。その映像の中には水色の髪の少女がいた。
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