ヒロインが強すぎるので、弱点オールコンプリートな吸血鬼主人公の俺はROM専に徹底します。

茶竹 葵斗

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緊張の対面

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 エレベーターで高層階へ向かう。体にかかる重力がふわりとしたものに変わると、エレベーターのドアが開いた。
 廊下を歩いていると、ノアがふとルイを振り返った。

「イグニスに来る前は何を? あ、答えたくなかったら答えなくていいよ」
「大丈夫ですよ。ここに来る前はレストランでアルバイトを……情けないですよね、二十四にもなって」
「まあ人それぞれワケはあるからね。キミも苦労してたんじゃない? 吸血鬼も住みやすい時代になったとはいえ、少なからず偏見もあるから」

 ノアの言う通りで、ルイも以前のアルバイト先では、吸血鬼という理由だけで夜のゴミ捨てを押し付けられていた。反論するほど強気な性格でもなかったため、ルイは仕方なく押し付けられた仕事をこなした。
 黒光りするゴキブリも、走り回るネズミも、ルイは人一倍苦手だった。男として情けないと自覚していたルイだったが、それを克服する術など見つからなかった。
 そんな生活から抜け出し弱虫を克服するべく、ルイはイグニスへ入ったのだ。

 フロアの一番奥の部屋へ辿り着くと、ノアは頑丈そうな扉の横に設置されたインターホンを押した。

『はい』
「総司令、ボクだよ」
『ノアか。今開ける』

 少しの間の後、扉のロックが解除される音がした。ノアは重そうにしながら扉を開く。その先にはノアの部屋以上にモニターが所狭しと並べられた空間が広がっていた。デスクの前に立つ人物——総司令官エミは、ノアとルイの姿を見て、美麗な笑顔を浮かべた。
 彼女の隣にはルキアもいて、ルイを見るなり不機嫌そうな表情を貼り付ける。

「ルキアから話を聞いていたところだ。君が初瀬川ルイ君か」
「は、はい。よ、よ、よろしくお願いします」

 ガチガチに緊張しているルイにエミはおかしそうに笑う。その様も絵になるエミの立ち振る舞いに、ルイは恐縮するばかりだ。

「そんなにかしこまらなくていい。これからは共に世界を守っていく仲間だ。気軽に話をしよう」
「そう言われても無理だよ、総司令。アナタに慣れるには時間がかかる」
「そうかな。そんなに私が怖いか? ふむ、もう少しフランクになる必要があるか……」
「エミはそのままでいいっしょ。大体このおにーさんが小物なだけだし」

 ルイを『小物』呼ばわりして、ルキアはふんっと鼻を鳴らした。だが、ルイにはそんなことを気にしている余裕はなかった。
 エミはルキアの言葉に指摘こそしなかったが、軽く咳払いをすると腕を組んでルキアとルイを交互に見やった。

「確かに二人の相性的には少しばかり不安があるが……ルキア、君ももう少し協調性というものを身につけなくてはならない」
「う……」
「それから、ルイ。君もルキアに対しては大人になってくれ。私からのお願いだ」

 エミから言われれば、ルイから拒否という選択肢は消え去った。元々はルイもルキアと組むことに同意したのだ。後はルキア次第といったところではある。
 それを感じ取ったのか、ルキアは居心地が悪そうに視線を彷徨さまよわせると、エミを上目遣いに見上げて口を尖らせた。

「……この人になんであたしのこと任せようとするワケ? あたしが納得するように説明してよ」
「ふむ。納得するように、か。君はどう説明しても納得するようには思えないのだが?」
「むう……」

 そこを否定しないルキアに苦笑を浮かべたルイに目敏めざとく気付き、ルキアは「んべっ」と彼に向かって舌を出した。
 話が平行線になりそうなのを予感してか、ノアが「それより」と切り出す。

「総司令、彼らにBCバンドの説明をしてあげてよ」
「む、分かった。もう彼らに渡しているのか?」
「それは今から」

 ノアは肩にかけていたポシェットから二つ黒い箱を取り出すと、それぞれをルイとルキアに手渡した。

「開けてみて」

 促されて箱を開けると、中には箱と同じ黒い腕時計のような液晶のついたバンドが入っていた。オレンジ色の差し色がコントラストになったお洒落なものだ。

「それはBCバンドというものだ。BCとはボーンコンダクションの略で、その名の通り骨伝導の通信機。イグニスの人員は皆これを身につけている。BCバンドをつけている方の人差し指を耳の根元に当てると骨伝導で音が聞こえる。周りに音が聞こえないのが利点だな。直感的に操作しやすく設計してあるイグニスだけのオリジナルだ」

 そう説明して、エミは自身の左腕に付けられたバンドを二人に見えるように袖をまくった。

「バンドを操作すれば特定の人物と会話できる。基本的な操作は電話と同じだ。説明書も入っているから、後で確認してくれ」
「分かりました」

 そんな時だった。
 フロア全体に、サイレンの音が響き渡った。
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