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婚約披露パーティーには波乱がつきものです?
67 嘉貴のことで、頭ん中一杯だよ
「……あのさ」
「なに?」
「………」
灯りを落とした病室の中、点滴の外れた嘉貴の両腕に抱きしめられながら、なんとなく明日のことが気になって話しかけてしまった。
けど、どう話せばいいものか。
人生初のパーティは、あろうことか婚約披露のもので、つまりは嘉貴だけじゃなくて俺も主役、ってことだ。
嘉貴は立食パーティで身内だけの集まりだから気楽に行けばいい…みたいなことを言ってくれたけど、そこが問題のような気がする。
俺なんかが嘉貴の隣に立つことをよく思わない人は沢山いるだろうから。
みんながみんな、雷音監督や合田教授、樹里さん、深山さんのように好意的だなんてありえないだろうから。あ、教授が本当はどう思ってるのかはわからないか。……嫌な顔ではなかったように思うけど。
…俺が中傷受けるならまだいい。でも、嘉貴の評価が落ちたら……嫌だ。
「浩希?」
嘉貴の声はいつだって優しい。
この人の傍にいるだけで、不安もつらいことも、消えてなくなる。
そりゃ、悩んだりすることだって大いにあるけど、それは「好き」って気持ちのせいだから、仕方がない。
「……俺」
「……何か不安なことでもあるんですか?」
嘉貴は肩を抱く手に力をいれて、俺の額に口付けてくる。
目を閉じた。
うん。気持ちいい。
「不安っていうか……ほんとに俺でいいのかなって思っただけなんだけど」
「俺は、浩希がいいんですよ。……貴方が傍にいてくれるなら、他に何もいらないって思うくらいに」
「嘉貴…」
「大丈夫ですよ」
嘉貴はなんだかあっさりとそんなことを言う。
「…なんでわかんだよ」
「明日のパーティーに招待されているのは、俺たち家族と親交の深い人たちばかりですし。貴方とのことを反対している人は一人もいませんから」
「……身内……って、家族だけじゃないの?」
「ええ。家族の他にも招かれてる人が数人います。樹里もその一人ですよ」
「あ、樹里さんも来るんだ」
「ええ。あと、深山と彼女の父親も」
「……」
なんだか、想像していたパーティーよりも規模がでかい気がする。
「……俺、なんだか色々不安になってきた」
ため息がでた。
俺、うまくできるんだろうか…とか、そんなことばかりよぎる。
「大丈夫、って、言ったでしょう?」
嘉貴はそむけていた俺の顔を上向かせて、唇を塞いできた。
「ん……」
「俺の傍にいるだけでいいんですから」
「……でも」
「貴方は貴方のままでいいんです」
「それって……考えるだけ無駄ってこと?」
「そうではなくて」
嘉貴はすこし困ったように微笑んだ。
それから、俺の前髪をかきあげる。
「そんな些細なことに心を奪われてないで、俺を見ていてほしいっていうことだけなんですが」
「……」
軽く絶句。
それから、また顔が熱くなる。
「浩希は俺のことだけを考えて見ていてくれればいいんですよ。他の誰かのことも…他のどんなことも、必要ない。俺のことだけを……想っていて?」
それからまた、優しい口付け。
……観念しよう。
恥ずかしいって思うのに、「独占」されていることが嬉しくもある。
「…嘉貴のことで、頭ん中一杯だよ」
キスの合間の言葉に、また嬉しそうに目を細めた。
「浩希」
今度は軽いキスじゃなかった。
しっかりと重なって、舌をからませる。
唇の間から洩れる自分の吐息が熱くなっていく。
「……ん…」
歯の裏の弱いところを舐められて、体が震えた。
「んぁ……」
我慢できない声が漏れてしまう。
「………浩希」
口付けだけで熱くなった体。
「………もう眠りましょう」
「…うん……」
今夜は「しない」って決めていた。
けど、寄り添っているからお互いの昂りがわかってしまう。
それでも、……妙に早くなる鼓動を感じながらも、息を整えて、気持ちを落ち着かせて……眠るしかなく。
「…怪我が治ったら……そのときは、覚悟していてくださいね?」
耳元で囁かれた言葉に、頬がカッと熱くなる。
覚悟、覚悟しておけ、って、って!!
どうしてそんな恥ずかしいこと、普通に言えるんだよ……この人!!
「嘉貴……っ」
笑ったままの嘉貴が、俺の唇を指でなでた。
「またここで愛してほしいな」
「っ」
「咥えながら俺を見上げるときの浩希は酷く妖艶で綺麗でしたよ」
「っ、っ」
ようえん
って!!
「……っ、も、もっ、しなぃ……っ!!」
「……可愛い、浩希」
「嘉貴のバカ……っ」
笑いっぱなしの嘉貴。
抱きしめられて……、…………腰を、また、押し付けられて。
「ん、ぅ」
ゴリゴリと擦られて、ぞくぞくって背中が震える。
だ、か、らっっ、しない、って、決めたんだからっ、こんな我慢できなくなりそうなこと、しないでほしいんだけど!!
「嘉貴っ」
「……本当に悔しいですね。こんな怪我をしなければ浩希を一日中愛せたのに」
「っ」
「……ああ、でも、怪我をしたから一日中浩希が傍にいてくれたんですよね。……怪我をしなければ会えたのは夜だけ、か。なら、良かったのか悪かったのか……」
どうしようもないことを俺を抱きしめながらうんうん多分本気で悩む嘉貴。
「事故で怪我なんてしないほうがいいに決まってるだろ!」
……思わずツッコんだけどさ。
事故ったって聞いたときの俺の心境だって考えてほしいっ。
「……そうだね。ん、浩希、いつもの顔ですね。ほら、パーティーの不安なんて消えたでしょ?」
……と、嘉貴は笑うけど。
「……バカ嘉貴」
背中に回した腕に俺も力を入れた。
ため息が出る。
不安も緊張も消えたよ。
とりあえず、だけどね。
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