【完結】婚約者からはじめましょ♪

ゆずは

文字の大きさ
69 / 83
婚約披露パーティーには波乱がつきものです?

69 開始五分前に駆け込んできた人物は…




「…嘘……だろ」
「コウ……お前が婚約者だと……!?」

 俺も優弥もお互い呆然としていて、何をどう言ったらいいかわからず固まったままだった。



_______________

「…俺、スーツなんて似合わないよ…」

 ずらりと並べられたスーツを前に、ため息しかでてこなかった。
 おそらく俺サイズのものがやたらと多い。

「どれも似合いますよ?」
「……七五三にしかならないと思うよ……?」

 そう言うと、背後で嘉貴がくすっと笑った。
 ……笑うなよなぁ。
 スーツ着なれない俺がこんなの着たって、せいぜい七五三どまりなのは絶対なんだから。

「じゃあ、俺が決めてもいい?」
「うん」

 むしろ、その方がありがたい。
 嘉貴は俺の隣に立って、吊るされたスーツを一つ一つ見ていく。
 その手がいくつかの前で止まって…、そこから選ぶような手つきで一着を出してきた。

「これがいいでしょう」

 スーツの評価なんてよくわからん。
 そもそも、ネクタイなんかも締められるかも怪しいのに。

「シャツはこちらを。挨拶がすんだら上は脱いでしまっていいですからね。着たままだと熱中症になってしまいますから」
「そんなもの?」
「ええ。身内のパーティーですからね。…スーツなんて着なくてもいいくらいなんですが」

 じゃあどうしてスーツなんだ。

「ネクタイ……じゃ硬いかな。ああ、丁度いいのがありますね。こちらの方が可愛い」

 嘉貴が見つけたのは青いタイだった。ネクタイのようにかっちりしたものじゃなくて、学生服とかにもついていそうなものだ。

「あ、そういえば靴は?俺、スニーカー…」
「ありますよ。サイズもあいそうですね。……どこから情報を仕入れたのかな」

 嘉貴は苦笑していた。
 これ用意してくれたのはあの由貴ちゃんお母さんなんだよな。嘉貴が全部用意していたんならすんなり納得できるんだけど、どうして由貴ちゃんお母さんが……っていうのは、確かに不思議。

「とりあえず、着替えをどうぞ。俺も着替えますから。……浩希の着替えが終わったら、手伝ってくれますか」

 あ、そっか。
 なんだか普通そうにしてるからコロっと忘れそうになるけど、嘉貴は全治一カ月の怪我人だった。

「ごめん、気が利かなくて」
「気にしないでください。…貴方を飾ってみんなに自慢したいのは、母さんだけじゃなくて俺もなんですから」

 その「母さんだけじゃなくて」ってどういうことだ。由貴ちゃんお母さんまで俺を着飾って自慢したいというのか…?何故に。
 …なんて思ったけど、嘉貴の唇が頬に触れてきて「まあいっか」って気分になる。

「それに」

 嘉貴は頬にキスをしてから耳元に唇を移動させてきた。

「貴方が着替える姿も見ていたいし」
「………っの、エロ嘉貴…っ!!」

 あーもー、ほんと何を言うんだ、この男!!
 着替えなんて、病室でだってしてたじゃないか。
 なのに、改めてそんなことを言われると意識してしまう。
 妙にドキドキしてしまって、嘉貴の腕の中から逃げ出した。
 嘉貴が出してくれた物を一式両手に抱えて、部屋の隅に逃げる。

「浩希」
「……こっち見たら、嘉貴の着替えなんて手伝わないからな!!」
「はいはい」

 嘉貴は面白そうに笑うと、自分の着替えを取り出してソファに腰掛けた。
 俺に背を向けて座る嘉貴をやや一分じっとりと観察してから、着替え始める。
 …ほんと、油断もすきもない。




 パーティーの開始時間まで三十分もあるというのに、会場である庭(やたらと広くてびっくり)にはもうお客さんがほとんど揃っていた。
 嘉貴のお父さん(嘉紀さん)も仕事から戻ってきていて、うちの両親と勢ぞろいの挨拶を終えたところだった。

「それにしても浩希君は可愛く育ったな」

 嘉貴並みに大きな手で頭をわしゃわしゃされて、悪い気分ではないが「可愛くなった」ってところには複雑な気分だった。
 勝利は相変わらずの仏頂面だった。……そんな顔するくらいなら、こなければいいのに。
 会場には合田教授も雷音監督もいた。そりゃそうか。父親違いのお兄さんと、仲のいい友人、なんだから。
 でも、合田教授の傍にいる赤い髪の女性は誰なんだろう…。
 それから、樹里さんや深山さんがいた。深山さんの隣に立つ長身の男の人には見覚えがないけど、親戚、もしくは親しい友人……なんだろう。

「後で紹介しますから」

 嘉貴は耳元でそう言ってくれた。
 ちらりと見上げれば、嘉貴は特に無理をしている様子もなく、談笑している。
 ……なんかちょっと、安心した。




 そして、開始五分前に駆け込んできた人物。

「すみません、仕事が長引いてしまって……」
「いいのよ。まだはじまっていないのだから」

 由貴ちゃんお母さんが出迎えた人物。
 その声にはやたらと聞き覚えがあった。
 ……というか、聞き覚え、なんてレベルじゃない。

「……優弥!?」
「コウ?……何故お前が……」

 そういえば、優弥も今日身内の婚約披露パーティーがあるって言っていたな……なんてことを思い出したけど、じゃあ、どうしてここにいるんだ?

「あら、もう知り合いだった?浩希くん、こちら豊原優弥。私の一番下の息子よ。それから、優弥、こちらが嘉貴の婚約者で浩希くん」

 ええ。
 紹介されるまでもありません。



_______________

 そして、冒頭に戻る。
 お互いに声がでない。
 このパーティーで一番の驚きだった……。



感想 10

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

あなたの家族にしてください

秋月真鳥
BL
 ヒート事故で番ってしまったサイモンとティエリー。  情報部所属のサイモン・ジュネはアルファで、優秀な警察官だ。  闇オークションでオメガが売りに出されるという情報を得たサイモンは、チームの一員としてオークション会場に潜入捜査に行く。  そこで出会った長身で逞しくも美しいオメガ、ティエリー・クルーゾーのヒートにあてられて、サイモンはティエリーと番ってしまう。  サイモンはオメガのフェロモンに強い体質で、強い抑制剤も服用していたし、緊急用の抑制剤も打っていた。  対するティエリーはフェロモンがほとんど感じられないくらいフェロモンの薄いオメガだった。  それなのに、なぜ。  番にしてしまった責任を取ってサイモンはティエリーと結婚する。  一緒に過ごすうちにサイモンはティエリーの物静かで寂しげな様子に惹かれて愛してしまう。  ティエリーの方も誠実で優しいサイモンを愛してしまう。しかし、サイモンは責任感だけで自分と結婚したとティエリーは思い込んで苦悩する。  すれ違う運命の番が家族になるまでの海外ドラマ風オメガバースBLストーリー。 ※奇数話が攻め視点で、偶数話が受け視点です。 ※エブリスタ、ムーンライトノベルズ、ネオページにも掲載しています。