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婚約披露パーティーには波乱がつきものです?
69 開始五分前に駆け込んできた人物は…
「…嘘……だろ」
「コウ……お前が婚約者だと……!?」
俺も優弥もお互い呆然としていて、何をどう言ったらいいかわからず固まったままだった。
_______________
「…俺、スーツなんて似合わないよ…」
ずらりと並べられたスーツを前に、ため息しかでてこなかった。
おそらく俺サイズのものがやたらと多い。
「どれも似合いますよ?」
「……七五三にしかならないと思うよ……?」
そう言うと、背後で嘉貴がくすっと笑った。
……笑うなよなぁ。
スーツ着なれない俺がこんなの着たって、せいぜい七五三どまりなのは絶対なんだから。
「じゃあ、俺が決めてもいい?」
「うん」
むしろ、その方がありがたい。
嘉貴は俺の隣に立って、吊るされたスーツを一つ一つ見ていく。
その手がいくつかの前で止まって…、そこから選ぶような手つきで一着を出してきた。
「これがいいでしょう」
スーツの評価なんてよくわからん。
そもそも、ネクタイなんかも締められるかも怪しいのに。
「シャツはこちらを。挨拶がすんだら上は脱いでしまっていいですからね。着たままだと熱中症になってしまいますから」
「そんなもの?」
「ええ。身内のパーティーですからね。…スーツなんて着なくてもいいくらいなんですが」
じゃあどうしてスーツなんだ。
「ネクタイ……じゃ硬いかな。ああ、丁度いいのがありますね。こちらの方が可愛い」
嘉貴が見つけたのは青いタイだった。ネクタイのようにかっちりしたものじゃなくて、学生服とかにもついていそうなものだ。
「あ、そういえば靴は?俺、スニーカー…」
「ありますよ。サイズもあいそうですね。……どこから情報を仕入れたのかな」
嘉貴は苦笑していた。
これ用意してくれたのはあの由貴ちゃんお母さんなんだよな。嘉貴が全部用意していたんならすんなり納得できるんだけど、どうして由貴ちゃんお母さんが……っていうのは、確かに不思議。
「とりあえず、着替えをどうぞ。俺も着替えますから。……浩希の着替えが終わったら、手伝ってくれますか」
あ、そっか。
なんだか普通そうにしてるからコロっと忘れそうになるけど、嘉貴は全治一カ月の怪我人だった。
「ごめん、気が利かなくて」
「気にしないでください。…貴方を飾ってみんなに自慢したいのは、母さんだけじゃなくて俺もなんですから」
その「母さんだけじゃなくて」ってどういうことだ。由貴ちゃんお母さんまで俺を着飾って自慢したいというのか…?何故に。
…なんて思ったけど、嘉貴の唇が頬に触れてきて「まあいっか」って気分になる。
「それに」
嘉貴は頬にキスをしてから耳元に唇を移動させてきた。
「貴方が着替える姿も見ていたいし」
「………っの、エロ嘉貴…っ!!」
あーもー、ほんと何を言うんだ、この男!!
着替えなんて、病室でだってしてたじゃないか。
なのに、改めてそんなことを言われると意識してしまう。
妙にドキドキしてしまって、嘉貴の腕の中から逃げ出した。
嘉貴が出してくれた物を一式両手に抱えて、部屋の隅に逃げる。
「浩希」
「……こっち見たら、嘉貴の着替えなんて手伝わないからな!!」
「はいはい」
嘉貴は面白そうに笑うと、自分の着替えを取り出してソファに腰掛けた。
俺に背を向けて座る嘉貴をやや一分じっとりと観察してから、着替え始める。
…ほんと、油断もすきもない。
パーティーの開始時間まで三十分もあるというのに、会場である庭(やたらと広くてびっくり)にはもうお客さんがほとんど揃っていた。
嘉貴のお父さん(嘉紀さん)も仕事から戻ってきていて、うちの両親と勢ぞろいの挨拶を終えたところだった。
「それにしても浩希君は可愛く育ったな」
嘉貴並みに大きな手で頭をわしゃわしゃされて、悪い気分ではないが「可愛くなった」ってところには複雑な気分だった。
勝利は相変わらずの仏頂面だった。……そんな顔するくらいなら、こなければいいのに。
会場には合田教授も雷音監督もいた。そりゃそうか。父親違いのお兄さんと、仲のいい友人、なんだから。
でも、合田教授の傍にいる赤い髪の女性は誰なんだろう…。
それから、樹里さんや深山さんがいた。深山さんの隣に立つ長身の男の人には見覚えがないけど、親戚、もしくは親しい友人……なんだろう。
「後で紹介しますから」
嘉貴は耳元でそう言ってくれた。
ちらりと見上げれば、嘉貴は特に無理をしている様子もなく、談笑している。
……なんかちょっと、安心した。
そして、開始五分前に駆け込んできた人物。
「すみません、仕事が長引いてしまって……」
「いいのよ。まだはじまっていないのだから」
由貴ちゃんお母さんが出迎えた人物。
その声にはやたらと聞き覚えがあった。
……というか、聞き覚え、なんてレベルじゃない。
「……優弥!?」
「コウ?……何故お前が……」
そういえば、優弥も今日身内の婚約披露パーティーがあるって言っていたな……なんてことを思い出したけど、じゃあ、どうしてここにいるんだ?
「あら、もう知り合いだった?浩希くん、こちら豊原優弥。私の一番下の息子よ。それから、優弥、こちらが嘉貴の婚約者で浩希くん」
ええ。
紹介されるまでもありません。
_______________
そして、冒頭に戻る。
お互いに声がでない。
このパーティーで一番の驚きだった……。
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