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第2章 お城でも溺愛生活継続中です。
3 ヤキモチ焼きの視線は人を泣かせることができる。
しおりを挟む凄く唐突に覚醒した。
夢も見ないで深く眠ったらし。体がスッキリしてる。
クリスはテーブルでまじめな顔で何か書類を見てた。
「クリス?」
「よく眠れた?」
「うん…」
目をこすりながら起き上がったら、すぐにクリスがキスをしてくれる。
しっかり重なって流し込まれたものを飲み込んだら、ほんのり花の香りがした。
「紅茶?」
「もっと飲むか?」
「……アツアツなのが飲みたい」
クリスは笑って軽くキスをしたあと、ベルを鳴らす。すぐ部屋に来たメリダさんは、何も伝えてないのに紅茶を持ってきてくれてた。
なんというか、凄い。
「いい香り…」
「こちらのお菓子もどうぞ」
しかもお茶受けつきだった。食べたら、さくさくのクッキーで、にんまりと笑みが浮かんでしまう。
「っ」
クリスが吹き出すように笑った。
「ほんと可愛いな」
ひとしきり笑って、俺の頭をなでて、クリスもクッキーに手を伸ばす。
自分で食べるのかと思ったら、俺の口元に持ってきた。
「ほら」
「ん」
……食べさせてもらうことに慣れすぎてしまって、疑問にも思わない。
「坊っちゃん、行商人の方々が来ておりますけど、こちらに通しますか?それとも隣に?」
「ああ、来たのか。隣で用意させておいてくれ。飲み終わったらいくから」
「はい」
メリダさんは微笑むと、一礼して部屋を出ていった。
「行商人?」
「王都に出るほうが早いが、当面の着替えは必要だろう?」
俺の顎の下に指を添えながら、クリスが目を覗き込んでくる。
あ、俺のものを買うのか。
「ありがとう」
自分から、触れ合わせるだけのキスをした。
よかった。これで下着をゲットできる!
「アキが気に入ったものがあればそれも買うから」
「うん」
「宝飾品関係も揃っているはずだ」
「アクセサリーってこと?いらないよ?」
クリスは不思議そうにする。
「俺、これがあれば十分だし」
左腕の袖をぐいっと引っ張って、クリスに買ってもらったブレスレットを見せる。
クリスが目を細めた。
「そうか」
嬉しそう。
アクセサリーとか興味ないし。本当にこれだけあれば十分で。クリスが選んでくれた、クリスと俺の色のブレスレット。俺の大切なものの一つ。
紅茶を飲みきったら、クリスが俺を抱き上げてきた。
居間の方に入ると、作業していた男女数人の方々が、クリスに向かって一斉に礼を取った。
「殿下、お気に召したものがございましたら、なんなりとお申し付けください」
「ああ」
クリスはその中を進み、商品が見渡せるように置かれたソファの上に俺を座らせて、俺の隣に腰掛けた。
あ、この服、結構裾短かった…。
近くにいたメリダさんが、すぐに俺にひざ掛けをかけてくれる。
クリスは行商人さんのいろいろな説明を聞いてるんだけど、品物が多すぎて俺にはよくわからない。
「一度採寸をしておきたいのですが…よろしいですか?」
女性スタッフさんからそう声をかけられた。
「えっと」
隣を見たら、クリスがうなずくから、ひざ掛けをソファにおいて立ち上がった。
こちらへ、と、指示された場所に立つと、メジャーのようなものを持った女性が近づいてきた。
「失礼します」
首周り、肩幅、腕の長さ、首から足元まで、とか、とにかくあちこちメジャーをあてられたり、まわされたり。
「細いですね…」
女性が腰回りに手を触れたときだった。
「触れるな」
…って、そりゃあ、たいそう怖い声が後ろから聞こえてきた。
当然、その場にいた行商人さんたちの顔が青ざめてしまって、俺の採寸をしてた女性なんて、今にも泣き出しそうだ。
「クリスっ」
むすっとしたままのクリスを軽くにらみつける。
「採寸!さわんないでどうやって測るのさ。俺の服なんでしょ?そんな怖い声出さないで」
「……わかった」
むすっとした顔。
「もう…」
怯えた顔で俺を見る女性に、精一杯笑いかけた。
「大丈夫なので、続けてください」
そしたら女性は泣き笑いの表情でうなずき、採寸を続けた。流石プロ。これ以上クリスを怒らせるのはまずいと思ったのか、体に触れるのはほぼメジャーだけ。
びっしり書き込まれたメモを確認して、女性がほっと息をつく。
「終わりました」
「ありがとうございました」
そう伝えてソファに戻ったら、すぐにクリスに口づけられた。みんなに、見せつけるように。
「クリスっ」
「我慢したんだから褒美があってもいいだろう?」
機嫌が治った。
俺の羞恥心はマックスだけど、これは仕方ない。クリスが機嫌損ねてお開きになんてなったら、元も子もない。俺の下着ゲット計画が泡となる。
それからクリスは俺の腰を抱いたまま、服選びを続けた。
俺も気に入ったものを…と言われたけど、流石にジーンズやジャージみたいなものはない。全体的にひらひらしてる感じがする。
宿場街でクリスが用意してくれた服、動きやすかったんだけどな。
「ね、クリス」
「ん?」
「前にクリスが用意してくれた服って…」
「ああ、乗馬服か」
なるほど。そういう服だったのか。
「あれ、動きやすくて良かったんだけど…、ああいう感じの服って、ないかな…?」
「ふむ…」
乗馬服と聞いて、行商人さんたちも考え込んだ。そしたら、さっき採寸してくれた女性が、スケッチブックみたいなものに、何か書き始める。
「殿下、このようなデザインはどうでしょう?」
「――――ああ、いいな」
どれどれと覗き込んだら、確かにズボンの形がよく似てる。けど、あのときの服よりも少し華やかで。お城の中だから、それなりにちゃんとした服じゃなきゃだめ、ってことか。
「アキ、生地は何がいい?」
「そんなこと言われてもわかりません」
クリスが笑った。
「じゃあ、色は?」
「色?」
好きな色…。
クリスの目元に指で触れていた。
「俺、クリスの目の色がいい」
綺麗な、緑がかった、碧色の瞳の色。
クリスが満足そうに微笑んで、俺の指先を握りしめた。
「殿下、瞳の色を確認させてください」
「ああ」
女性はクリスの瞳を見て、またメモに書き込んで、終わったらすぐに離れた。
「生地は…」
いくつかのサンプルを持ってきてくれる。
しっかりしたもの、やわらかいもの、なめらかなもの。
「あ」
触ってしっくり来た生地があった。手触りがいいし、伸びるから動きやすそう。
「これがいい」
「ではその生地で。染め上げから仕上がりまでどれくらいかかる?」
「7日ほど、お時間がかかるかと思います」
7日か。結構かかる。
クリスは何やら考え始めた。
「近い色の既製品は?生地はこれで」
クリスが指定したのは、比較的さらさらのもの。
「明日の夜までに仕上げてもらいたい。謁見用の魔法師の正装だ」
「!!か、かしこまりました!」
その場にいた行商人さんたちの動きが慌ただしくなった。
…なんだ、謁見て。
俺の疑問を余所に、お買い物は続いた。
色的に、碧ばかり、というのも何なので、水色だとか紺色だとか鮮やかな青とか、白とか黒とか。…モノトーン以外がほぼほぼクリスの色だ。俺、どうしようもないな…。
宝石類はやんわり断った。
ほかにも、靴とか帽子とか、上から下までとにかく全部。
大量の注文をして、お開きになった。
「では、皆、よろしく頼む」
クリスがそう言うと、全員がその場で礼を取った。
俺は、また抱きあげられて、寝室の方へと移動。
「疲れただろ?」
「ん…少しね」
「お茶の準備をしてきますね」
後ろからついてきていたメリダさんが、部屋を出ていく。動きが機敏だ…。
ベッドに降ろされるとあくびが出た。
「眠るか?」
「ん…」
眠い、けど。
ベッドに腰掛けたクリスの足の上にあがる。
「アキ?」
「ん…」
足をまたぐように腰を下ろして、向かい合わせになって、胸元にぺたりとよりかかった。
鼓動が心地よくて。
髪を撫でるクリスの手も気持ちよくて。
そのまま、俺は眠りに落ちた。
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