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第3章 遠征先でも安定の溺愛ぶりです。
22 魔力を貯めた魔物は進化を遂げる。
しおりを挟む突然の戦闘態勢に、俺だけが事態を飲み込めてなかった。
でも、すぐに理解した。
数人の冒険者と見られる人が、森の中から走ってきたんだ。
その後ろには緑色の長い触手が迫っている。それから、巨大な、本体が。
え、待って。あれ、クリーパーなんて可愛いもんじゃないよ?形はベルの形ような本体でクリーパーだけど、精々人間と同じくらいの高さしかないはずなのに、クリスの2倍くらいありそうなんですけど!?しかも、普通のやつなら、触手=蔓だから、木々を渡り歩くのが普通のはずで、触手で地上を走るなんてことしないはずなのに。
「ちょっと待って……、俺、あんなの知らないんだけど……!!」
「ん?ああ…。クリーパーが魔力を貯めに貯めた果に進化でもしたんだろ。あんなデカ物、どこにいたんだか……」
周囲の様子とは裏腹に、ギルマスはとても落ち着いてる。両腰の剣を抜いているけど。
触手が冒険者さんの身体に巻き付いた瞬間、いつの間にか動いていた他の冒険者さんやオットーさんが、触手をぶった斬っていた。切り落とされてもうねうねする触手、気持ち悪い…。しかも、斬られたところから、紫色の体液が出てる。
なぜ体液。
よくよく見たら、本体も涎のように紫色の体液を垂れ流してる。…触手を絡めて体液とかを吸うタイプと、触手に絡めた獲物を本体の中に入れて溶かして養分を取るタイプと、どっちなんだ、これ。
「アキはここにいろよ」
「ん……」
クリスは一度俺の頬にキスをすると、前線に向かって駆けた。無駄のない動作で触手をかわし、本体へと近づく。
俺の近くには、隊員さんが二人、残った。
「ザイル!!切り離した触手は松明の火で燃やせ!!オットー、本体への攻撃の手を緩めるな!!」
「御意!!」
「お前ら体液に触れるなよ。毒持ちだ!!」
「はい!!!」
クリスとギルマスの指示が飛んてる。
てか、毒持ちって…!あの紫の、全部毒!?接近戦だめじゃん……!!絶対体液に触れちゃうじゃん……!!
心臓がバクバクしてる。
火の魔法なら使える。本体に局所的に効果出るように収束させれば、延焼はしないはず。
収納魔法を使ったときにごっそりなくなった魔力は、それなりに回復してる。だから、使える。
身体の中が熱くなる。
距離は問題ない。
……でも、思わず唇を噛んでいた。
いつでも放てる。けど、できない。
本体にはクリスとオットーさんと、ギルマス以外にも数人が接敵状態。絶え間なく動く皆の隙間から、ピンポイントで魔法をあてるなんて……、多分、俺には無理で。
だったら、「魔法使うから」って叫んで避けてもらえばいいのか。
それなら大丈夫なはず……って、魔力を練り上げていったんだけど。
「アキ、手を出すな!」
……って、クリスに叫ばれた。
「でも!」
「何も問題ない。もう少し待ってろ」
声が通る距離。
その声には焦りとか何もないけど、俺の中はもやもやで一杯になった。
クリスを助けたい。俺だって戦える。剣は無理でも、魔法が使える。だから、毒を撒き散らすような危ないやつの相手だってできるのに。
もし、もしも、クリスが毒に侵されたら。そしたら、もしかしたら――――
……右耳に触れたのは無意識。
ひんやりとした石の感触に、ちょっと落ち着いてくる。
……きっと、大丈夫だ。だって、どう見てもクリスたちが優勢だもの。だから、大丈夫……大丈夫……!
もしかして、毒属性の魔法が使えたら、毒無効とかそういうバフがけできたりするんだろうか。俺には…使えないけど。
「クリス……」
身体の中を蠢いていた熱い魔力の流れは落ち着いた。けど、不安はなくなるはずもなく、ずっとどきどきしてる。
暫くして、クリーパーから放たれる触手の数が減った。動きも鈍くなっている。もう少し、もう少し……!
そして、巨体が音を立てて崩れ落ちた。
上がるのは、冒険者さんたちの雄叫び。
「クリス……」
思わず走り出した。
護衛についてくれた隊員さんの静止の声も聞かないで。
なんで俺は回復系の魔法が使えないんだろう。
俺が近づいていくと、クリスは厳しい顔のまま俺に向かって、「来るな」と一言声をかけてきた。
その声はとても厳しくて…、俺はピタリと足を止めて、ただじっとクリスを見ていた。
***************
〘補足説明〙
■クリーパー(キラークリーパー)
食虫植物「ウツボカズラ」に触手(蔓)が生えた感じの植物系魔物。
マイン○ラフトの爆発する方のクリーパーじゃないです(笑)
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