141 / 560
第3章 遠征先でも安定の溺愛ぶりです。
40 聞きたくない、でも、聞かなきゃならない
しおりを挟む夜も更けた頃、宣言通りギルマスが俺たちのところに来た。
天幕に入って早々に、遮音の魔導具を発動させる。
それから俺を見て、ため息をつくギルマス。
「………アキラ、毛布巻いとけ。昨日のより裾短いから」
「うぁっ」
って、ベッドに座ってる俺を見て開口一番だよ。やばいよ。ごめんなさい。顔熱い……。大急ぎで毛布にくるまりました。はい。
「見ていたかったのに…」
「お前も大概にしろ」
呆れた口調でそうクリスに言い放ったギルマスは、俺の頭を何度もなでた。
「?」
「身体はどこもおかしいところないか?」
……ああ。ギルマス、めちゃくちゃ心配してくれてたんだ。目元が娘を心配するお父さんみたい。俺、女の子じゃないけどね?
「クリスに沢山魔力もらったし…、ずっとくっついてたから、もう大丈夫です」
「そうか。よかったな」
魔力も、精神的にも。
心を落ち着けるためにはクリスにくっついてるのが一番いい。
「クリストフ、お前はもうちょっと早く行動しろ。あんな挑発に簡単に乗るな。アキラを貶められて怒る気持ちはわかるが」
「……わかって、いる」
クリスの表情がこわばった。
少し唇を噛んでて、後悔したような、悔しそうな表情。
それから、ぎゅって抱きしめられた。なんか、俺よりクリスの方が弱ってそう。包まってた毛布が落ちちゃって、裾がまた心許なくなってるけど、仕方ない。
何度かクリスの背中を撫でる。
大丈夫だよ。俺は無事だし。大丈夫、大丈夫。
「あと……、アキラが話してた『勝手に入り込んできた何か』ってのは、なんだ?」
「えと……、俺にもはっきりわからなくて。なんか、あの人と目があった瞬間、ざわざわーって、身体の中気持ち悪くなって」
「それで旦那にキスをせがんでたのか」
「ううう…。はい…。クリスの魔力もらったら落ち着くかな…って」
「そんなのいくらでもやるが…、気になるな。魔力でも流されたか?」
「触れてないし…、多分違うと思うんだけど…」
正直なとこ、はっきりとわからないから、説明の仕様もなくて困る。
「それにしてもあれだな。お前らのキスを見て、魔法師の奴ら勃ってたな」
「うぇ」
「魔法師長なんざ、蕩けきったアキラの顔を穴が空くほど見てやがった」
なにそれ、気持ち悪いんですけどっ。
「アキラも面倒なやつに目をつけられたな」
「魔法師長は確かに面倒だが…。どういうことだ、レヴィ」
ギルマスの顔から、笑いが消えた。
俺とクリスを見て眉間にシワを寄せる。
「ありゃ、アキラを殺したい目じゃねーよ。アキラのことを犯してやりたい、っていう目だ」
「え」
「あいつん中はアキラを犯すことで一杯になってやがる。気分が悪い。森の中でもそのことばかり言ってやがった。ついてきたあの三人も、何をどう言われてるのか、ニタニタ笑ってたな。それを俺に自慢気に話す時点で、色々終わってるんだってことにも気づいていない小者だがな」
あの視線はそういうことだったのか…って思ったら、悪寒に身体が震えた。思わず自分の身体を抱きしめたら、俺を抱きしめてたクリスの腕に力が入る。
「……アキ、大丈夫。そんなことには、絶対にさせない」
「ん……うん……」
他人からそういう目で見られる…って、すごく、気持ち悪い。
「なぁ、クリストフ、知っているか?」
「何を」
「レイランド魔法師長の噂だよ」
「自分より有能な者たちを不慮の事故に見せかけて殺しているというやつか」
なにそれ。
「それもあるがなぁ。魔法師として認められた者の中で、有能で見目のいいやつは、レイランドに散々犯され、体を開くだけの愛玩動物にされる、って話だ。…精神が崩壊しても生きてたやつは、性奴隷として貴族に引き渡されてる。中には自害する者もいるそうだ」
「……似たような話は兄上から聞いていた。だからアキを軍属にしないように手を回したが…事実なのか」
「俺が調べた範囲じゃ、事実だな。……あー、アキラには聞かせないほうが良かったか」
できれば聞きたくなかった。
でも、きっと、俺も知っておかなきゃならないことで。
嫌だよ。とても。だけど、聞かなきゃ…。
「…大、丈夫」
目をそらさないように。
俺自身の決断のためにも。
指先はなんだか冷たい。
「アキ」
クリスが触れるだけのキスをしてくれた。
ほっとする。
「その辺りの粛清はお前と王太子の仕事だな。期待してるぜ。……『息子を探してほしい』って依頼を受けて、見つけ出したときには廃人…なんて、もう真っ平御免だ」
ギルマスは苦々しい表情で呟いた。
……それじゃ、増々軍属魔法師に対する不信感は強くなるわけだ……。
やだな…。
「魔法師団の手入れについては兄上と話を進めている。昨日も話したとおりだ。――――それで、レヴィ、森で何があった」
「本題、だな」
ギルマスが面白そうに話し始めた。
251
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる