【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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閑話 ①

似合うと思う。

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*時系列無視のお話です*







 いつもと変わんない。
 同じ制服を着た同い年の生徒達は、仲のいい友達同士でグループを作って、おしゃべりに花を咲かせてる。

 俺?
 俺は机の上においたノートを睨んで、シャーペンでトントンしてる。
 次のセッションは俺がGMするから、シナリオ考え中。
 定番の討伐系なら比較的楽だけど、なんか、味気ない。
 村が魔物に襲われることが多くて、冒険者ギルドに依頼を出して、依頼料もそれほど沢山は用意できないし、危険度で言えば駆け出し冒険者でなんとかなるレベルで。
 そうだなぁ。
 依頼ランクはEか、よくてもD。いや、Eだな。駆け出しだから、冒険者レベルは2~3。PLプレイヤーが、何人集まるかにもよるから、調整できる範囲で、ゴブリンメインで3~5体。火力的にいけそうなら、ホブゴブリンも出してもいいかも。
 ……って、だから、そこまでが王道というか、セオリーと言うか、よくある話。
 何か、ないかな。
 こう、いつもと違う感を出す演出。

ダークエルフダクエルがゴブリンを統率している背景にしたら?」

 うんうん唸っていたら、長くて男らしい指が、俺のノートをトントン叩いてきた。

「いずれ、冒険者たちの敵になるような立ち位置で」
「あ、なる」
「そしたら、その後の話にも繋がるし、続き物キャンペーンとしても組めるよね」
「それいい!」

 …って、思わず顔を上げたら、見たことないイケメンがそこにいた。

 え。
 誰?

「……どちらさま?」

 思わず声に出したら、周りからは笑い声が聞こえるし、イケメンさんも呆れながらも笑ってくる。

「全く話を聞いてないのは良くわかったけど。それから、君が、授業よりもTRPGに夢中だって言うことも良くわかったけど」

 授業……と聞いて、はたっと周りを見たら、皆しっかり自分の席に着席していて、英語の教科書を開いている。

「ふぁ!?」
「また変な叫び声を…。名前は?」
「え、と、……杉原、瑛、デス……」
「うん。杉原君ね。俺は、今日からしばらく君のクラスの英語を担当することになったクリストフ・エルスター。さっき自己紹介しまばかりなんだけどね?ちゃんと聞いててほしいな」
「ゴメンナサイ……」

 イケメンさん改め、エルスター先生は、苦笑して俺の頭をポンポン叩くと、壇上に戻っていった。

「それじゃ、改めて。授業を始めます」

 綺麗な日本語。
 見た目も名前も絶対外国の人なのに。
 髪、綺麗だな。銀髪、かな。青いメッシュ入ってるけど、染めてるのかな。
 声、いいな。低過ぎもなく、高くなく。耳に心地いい。……ああ、ほら、クラスの女子たちもうっとりしちゃってるよ。
 意識してみれば、この先生は本当にイケメンだ。細い黒縁の眼鏡もよく似合うし、時々前髪をかき上げるのがくせなのか、その仕草は色っぽく感じる。
 ネクタイにワイシャツにスーツ。
 定番の先生スタイルなのに、断然他の先生より格好良く着こなしていると思う。

 …俺、かなり見つめてたんだと思う。
 目が合うたびに微笑まれる。
 その度に、俺の心臓はけたたましく悲鳴を上げる。
 やばい。
 何がやばいのかわからないけど、これはやばい。

 やたら目が合うから、やたらと指名される。いち早く名前を覚えられたのは嬉しいけど、名前を覚えられた過程が情けなさすぎる。困ったものだ。

 しどろもどろになりながら質問に答えるを繰り返して、なんとか授業が終わった。
 やっと開放される…って思っていたら、

「杉原君は放課後、俺のところに来てくださいね」

 と、爆弾を落とされた。
 あう。
 逃げれないらしい。





 ノートが没収されなかったのを喜ぶべきか、味気なかったシナリオにスパイスを投下してくれたことを喜ぶべきか、全女子生徒の羨望の眼差しを一身に受ける先生に名前を覚えてもらったことを喜ぶべきか、呼び出されたことをよろこ……いや、ここは、嘆くポイントか。
 とにかく、喜んでいいのか嘆けばいいのか、よくわからなくなりながら、職員室に向かい、そのまま指導室に連れてかれた。

 あ、詰んだ、これ。
 赴任初日から目をつけられた。
 俺、比較的真面目な生徒なのに…。

 ドアに『使用中』の札をかけて、部屋に入って早々に、先生は鍵をかけた。
 俺、普段は真面目なただのゲーヲタってことだけでも、しっかり分かってもらわなければ……って、意気込んでいたんだけど。

 部屋に入るなり、抱きしめられた。
 ……何故!?
 状況が理解できないまま硬直していたら、口に、暖かくて柔らかいものが触れてきた。
 ……何故!?!?

「え、ちょ」
「可愛い」
「はぃぃ!?」

 イミフなセリフを吐かれ、また、口が……いぁ、キス、されて。
 生徒指導じゃないの!?って大混乱してるところに、ぬるりと、舌が、入って、きて……!!

「ん……っ!!!」

 口、口の中があぁぁぁ!!!
 あまりのことに大混乱で、突き放す選択肢がでてこない。
 状態異常:混乱・魅了はある意味最強。ある意味最凶。
 何が言いたいかって、だから、抵抗できない、心臓バクバクする、しかも気持ちがいい、ってさ!

 あ、やばい。
 力、抜ける。

 膝から崩れ落ちそうになったとき、力強い腕にぐいっと抱き上げられた。
 キス、やめないまま。
 とさっとソファに降ろされる。

「ん……っ、ふ、ぅ」

 口の中、気持ちいい。
 流される唾液を飲み込むのも嫌じゃない。
 思わず背中に手を回そうとして、引っ込めた。
 なんか、回しちゃったら、後戻りできない気がして。

 でも、頭の中はボーッとする。
 ようやく唇が離れていっても、俺は放心状態で起き上がることもできない。
 先生は俺の頬を撫でると、スーツの上着を脱ぎ捨てて、ワイシャツのボタンを2個くらい外す。それから、人差し指だけで、ネクタイをくいくいっと器用に緩めていくけど、……それが、なんとも様になっていて格好いい。

 見惚れていたら、またのしかかられた。
 さっきと同じように熱いキスをされて、目尻から涙が落ちる。

「…せんせ、やめて……」

 離れたとき、少しだけ声を出せた。
 先生は少し困ったような、それでも意志の強い表情で、俺を見下ろす。

「一目惚れしたんだよ、杉原………、いや、瑛、か」
「ふ、ぇ…?」
「お前もだろう?…ずっと、熱のこもった視線で俺を見ていた」

 するりと頬から首筋にかけて撫でられた。そしたら、ゾクゾクと身体に震えが走る。
 ……たしかに、見てた。
 ノートを取るとき意外、本当にずっと見てた。

「……好き?」
「そこで疑問形にされても困るな」
「え、でも、先生は……一目惚れ?」
「ああ。さっさと俺のものにしてしまいたいくらいに」
「……俺も、同じ?」
「俺がお前を見ている時と同じ熱量で、お前も俺を見てただろ?」

 ぶわわわわ…と、顔が一気に熱くなった。

「え、え」

 俺も、この先生が好き?一目惚れ?マジで?

「嘘だ……」
「ほんと」

 先生がくすくす笑った。
 ……やっぱり、超イケメンさんだ。

「先生……」
「『クリス』って呼んで。瑛?」
「……………クリス……?」
「そう。それでいい」

 …また、キスが。
 手、回していいかな。回していいかな?

「ん……」

 恐る恐る、背中に両手を回した。ワイシャツ越しの体温に、胸が苦しくなる。
 ……回しちゃったよ。もう、離せないよ。

「クリス……っ」

 頭、クラクラする。
 でも、そんな、ふわふわした気持ちは、クリスの手がベルトを緩めてズボンの前を寛げてきて霧散した。

「え、ちょっ、待って…クリス……っ」
「待てない」

 首筋に、ねっとりと這う舌の感触。
 指が、固くなり始めた俺のそこを撫でて――――







「待ってってば…!!!!」

 自分の耳元で鳴り響いたでかい声。

「待って、って、言ってるのに……っ」

 ……て、叫んで、それが俺の声だとわかると、はたっと目を見開いた。

「アキ?」

 少し驚いたような声が隣から聞こえてきて、ゆっくりそっちを見たら、声と同じように驚いた表情の、クリスがいた。
 …肌けたワイシャツも、緩めたネクタイもしてない。
 素肌の中に、俺を抱き込んでるクリスがいる。

「……クリス?」

 え、なんでスーツじゃないの…って、言いそうになった。

「……あ~~~、夢かぁぁぁ……」
「どうした?」

 ちゅ……って、額にキス。
 それから、唇にも触れるだけのキス。
 ああ…クリスは下は穿いてるんだ。俺はクリス服だし。

 穏やかな笑みで俺を見るクリスの目元に、指で触れてみた。

「……眼鏡、似合ってたなぁ」
「ん?」
「スーツも…格好良かった…。指くいでネクタイ緩めたりとか…色気ダダ漏れだった……」
「う、ん???」

 不思議そうな顔をするクリスに、夢の話をする。
 日本の学校で、クリスが教師としてやってきたこと、日本の定番のスーツ姿が格好良かったこと(スーツとかの説明も含めてね!)、一目惚れしたと言われて突然キスされたこと、それから、ソファに押し倒されたこと。

「ほんっと、クリスってば手が早いというか……。まぁ、夢だけど」
「ふむ」

 俺の夢の話を楽しそうに聞いていたクリスは、にやりと笑うと俺に覆いかぶさってキスを仕掛けてきた。

「ん……、なに?」
「夢は願望の現れだろ?」
「へ?」
「アキはそんなに俺から口付けられたいんだな。幸いまだ早朝だ。望み通り抱いてやる」
「へ!?」
「夢のつづき、だな」
「はぅっ」

 妖しい笑みのまま俺を見下ろすクリス。バクバクし始めた心臓を自覚しながら、俺は広い背中にそっと、手を回した。


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