【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第5章 王子サマからの溺愛は甘くて甘くて大変です。

14 出発の前に




 謎な貴族の測量技師(って、勝手に名前つけた)のエアハルトさんと、衝撃的な出会いをした翌日の午後は、クリス隊の皆さんはお休みになった。
 遠征前に『英気を養おう!』的なものみたいで、クリスも当然お休み。二人でまったりゆっくりできると思ってたら、まあ、甘かった。がっつり押し倒された。

 クリスの熱に翻弄されながら、西に行く前もこうだったなぁ…なんて思い出した。
 あのときは、どちらかというと、俺の魔力の補充とか、すり減ってた精神的なところを回復するためのものだったと思ってるんだけど……。
 今回のは、あの時の状況とは違うよね。魔力枯渇してないし、精神面も安定してる。……まあ、あのどうしようもない貴族の人と会ってから、ちょーっと疲れてたけど。

 まあ、だから、したかっただけ。
 ……って感じで。
 俺も拒否しなかったから、まあ……、まあ……、いいんだけど。






「クリス……だっこ……ぎゅして」
「可愛いな」

 お昼食べて、食休みして、押し倒されて、応えて、とろとろになって、くたくたになって、甘々になってるとこにお風呂に入れられて、いつの間にか用意されてた夕飯をクリスに食べさせてもらって、多分メリダさんから小言をもらって、変なスイッチが入っててまたクリスを欲しがって。
 流石に寝なきゃだめだって、なって、もう一回お風呂に入って。
 身体全部洗ってもらって、もっとくっついていたくて、クリスに手を伸ばした。

「ん……あったかい」
「風呂だからな」

 くすくす笑うクリス。

「痛いところはない?」
「ん……な、ぃ」

 あ……、眠い。

「ねむい……」
「そうだな」
「くりす……ねる……」
「ねていいぞ」
「ん……」

 ぎゅって抱きしめられて、クリスの体温とお湯が心地よくて。
 身体も疲れてたから、俺、そのまま寝落ちした。

 魔力も癒やしももらって、不調になるわけもなく。ただ心地のいい疲労だけで。
 夢も見ないで眠った。
 大好きなぬくもりだけを感じて。




 翌朝。
 まだ太陽も昇りきらない頃に、クリスのキスで起こされた。
 でも頭はかなりボーッとしてて、苦笑気味のメリダさんが用意してくれた水で顔を洗って、ようやく少し目が覚めた。
 朝ごはんは、クリスの膝の上で、果物と、パンと、ゼリー。それは俺仕様の朝食で、クリス用にはその他にお肉とか生野菜とかちゃんと準備されてる。
 全く食べれないわけじゃないから、クリスの分から少し分けてもらうんだけど、飲み込むのにかなり時間がかかるから、ほんとに少しだけ。
 それから、クリスのウェストポーチに、俺の好きな日持ちのするお菓子を入れておく。
 メリダさんの前だけど、気にしない。大丈夫。お菓子を準備してくれたのはメリダさんだしね。

「んー……、いっそ、時間停止とかつければよかった」
「ん?」

 ポーチに次々に収まる俺用のお菓子(遠足に行くみたい……)を見ながら、そんなことをぼやいてしまった。
 なんであの時つけなかったかなぁ。お試しだから、とりあえず時間停止はいらないや……って、思ったんだよな。詰め込みすぎて失敗しても悔しいし。
 成功したら、また今度、つければいいや、みたいな軽い気持ちで。
 でも、今は、クリスから魔法使用禁止令出されてるし……。

「ほら、時間停止つけておけば、ゼリーとかも入れて置けるわけでしょ?」
「ああ。まあ、そうだな」
「……今からでもつけていい?」
「駄目」

 ううーん。
 この魔法禁止令、いつになったら解けるんだろう。
 そもそも、魔法が使えない俺の価値なんて……、殆どないのに。
 うう。卑屈になってきた。

「クリスっ」

 こういうときはクリスに抱きつくに限る。
 ぎゅってしがみつけば、クリスも抱きしめてくれる。
 不安になったらクリスを貰う。俺の特効薬。

 ねだったキスは、すぐにもらえた。
 もうすぐ馬上になるから、キスは暫くしてもらえない。充電大事。

「ん……くりすっ」

 舌で上顎をくすぐられる。
 そこ、気持ちがいい。
 喉の奥に溜まった唾液は、あふれる前に少しずつ飲み込んでいく。
 甘くて、とろとろする。
 昨日たくさん抱かれたせいもあると思うけど、舌を吸われる度に、腰がじん…って甘い疼きを覚える。
 心臓、ドキドキしすぎて苦しい。
 唇までじんじんしてきたとき、クリスがキスをやめた。
 宥めるように啄むキスを繰り返す。

「ん……っ」

 クリスにぎゅって抱きしめられる。
 昂ってた身体を自覚して、少しはずかしい。
 でも、抱きしめてもらってたら、気分も身体も落ち着いてくる。

「満足か?」
「ん……ぅん」

 もうちょっと…って思ったけど、これ以上は俺がやばい。
 クリスの匂いを胸の中いっぱいに吸い込んで、体を離した。

 夏仕様の制服に着替える。一応マントも。
 悩んだのは左手を吊るかどうか。
 相談した結果、乗馬中は吊らないことにした。バランス取りにくくなるし、何かあったとき逆に危ないから。

「そろそろ行こうか」
「うん」

 制服に身を包んで、腰に愛剣を挿すクリスは、文句なく格好いい。
 そのクリスにあっさりと片腕抱っこされると、すかさずメリダさんが頭を下げた。

「いってらっしゃいませ、坊っちゃん」
「ああ。留守を頼んだ、メリダ」
「ええ。お帰りお待ちしております。アキラさん、ご無理されませんように」
「はい。今回はちゃんと帰ってきます!」
「ふふ。行ってらっしゃい」
「行ってきます!」

 部屋を出るとき、メリダさんはにこにこの笑顔で見送ってくれた。



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