【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。

0 女神

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 俺の目の前に、黒髪の少女がいる。
 例のごとく、真っ白い空間に、謎のちゃぶ台に、謎の煎餅に、謎の湯呑。
 …これって、ばぁちゃんセットじゃなかったの?

「……あ、の?」
「食べろ」
「あ、はい」

 え。なに。
 見た目可憐な女の子のなのに、口調があれだ。
 状況が全くわからないまま、俺は正座して湯呑を手に取り、一口お茶を飲んだ。……いい香りの緑茶だ。
 それから、海苔のついた煎餅を、パキンカシカシみたいな音を立てて食べる。
 ん。美味しい。
 美味しい、けど。
 ちらっとその女の子の方を見ると、美味しそうに緑茶を飲んでいた。

「あの」
「何が聞きたい」
「え。あの、全部?」
「………やはり我儘で困る」

 どっかで聞いたフレーズだなと思いつつ、その女の子を見続けた。だって、それしかやることがないから。

「あの……女神様、ですよね?」

 この声の感じとか、感じる雰囲気とか。
 この不思議空間で堂々とお茶を飲んでるところとか。
 ……見た目、何故か日本の女子高生なんですが。

「……瑛」

 ちらりと俺を見た女神様(仮)は、また視線を落としてお茶を飲み、煎餅を手に持った。

「お前の祖母は、私の愛子の一人だった」

 あ、ほら。やっぱり、女神様だった。
 てか、ばぁちゃん、愛子って。それって、クリスとかラルフィン君と一緒、ってこと?

「そうだな。そのとおりだ」

 ……女神様、俺の思考と会話した。

「……え、っと、それじゃ、ばぁちゃんは、転移…?」
「転生だな。こちらで一旦生を終え、色々あって向こうの神に任せた。…見守ってはいたが、界が異なれば加護も届かない。私の声を聞くこともできなかったろうに、祈ることもやめなかった」
「…じゃあ、ばぁちゃんは…ばぁちゃんの魂は、女神様の元ですか?」
「いや。むこうの神の元に還った。添い遂げた伴侶が余程好いた相手だったんだろう」
「ああ…。じぃちゃんとばぁちゃん、凄い仲良かったから……」

 なんか、納得した。
 それから、ほっとした。
 ばぁちゃん、ずっと俺のこと心配してたから。

「……女神様、なんで俺、こっちの世界に来れたんでしょう。俺自身はずっと病院のベッドの上だったのに」
「それは、お前の祖母が私に願ったんだよ。お前を助けてほしいとな」

 …前に聞いたことがあるようなないような。

「『助ける』って…?」
「事故の衝撃でな、お前は肉体と魂が分離してな」
「え」
「このままじゃお前の魂が消えてしまうから、保護してくれと、祖母が私に泣きついてきたんだ」
「ばぁちゃん……霊感とかあった……?」
「自分も死の淵にあって、感じたんだろ。愛子の最後の願いだ。聞いてやらなければ女神の名がすたる」

 ……なんか女神様が人間臭く感じてきたぞ……?

「そちらの神とも交渉してな。一時的にこちらに魂を引っ張った。お前がこちらに来たときの身体は、魔力で作ったものだ。理解したか?」
「た、ぶん…?」
「ちなみに、本来であればクリストフとはあの場で会わなかったはずだった」
「え」

 …一番衝撃的な話なんですが。

「あと一時間ほどもすれば、行商人があの道を通るはずだったんだ。彼らに保護され、一月ほどこちらで過ごした後、便魂を向こうに戻すはずだった」
「でも、スライムが」
「魔物は私の管理下になくてな。……まあ、今となっては、偶然ではなく必然だったと思えるが」

 必然。
 うん。
 必然だよ。
 クリスと出会わなかったら、きっと、俺、今ここにいない。

「後は?この際だ。話せることは話してやる」

 開き直り女神様ですか…?
 なんとなく……わかった。
 俺が生死の境彷徨うたびに、女神様が迎えに来てたのは、元の世界に魂を戻すためだったのか…って。
 魔力で作られた身体。だったら、魔法を使えば使うほど、弱くなっていったのも納得というもの。

「………あ」
「ん?」
「もしかして、生身の俺には魔力がない、とか?」
「ないな」

 まーじかー!
 どーりでグリズリーさんに襲われた時、魔法使えなかったわけだ…。

「……あれ?でも、ぽすん、って、煙出た気が……」
「出るだろうな」
「??」

 しれっとお茶を飲む女神様だけど、俺の頭の中は『?』だらけ。

「だって、魔力はない、って」
「元々のお前には魔力はない。お前の身体は、あくまでもむこうの世界に適したものだからな」
「……つまり??」
「今改造中だ」

 女神様の口元が『ニヤリ』って笑った気がした。

「改、造…?」

 めっちゃ不穏な響きなんですけど!

「創り直してる。こちらの世界に適するように、魔力を扱う身体にな」
「おお……」

 ほんとの意味での肉体改造されちゃってるわけですか……。

「……魔法、また使える?」
「当然だ。お前はあれの孫だからな。私の愛子も同然。たっぷりと加護を与えてやろう」
「いや、普通で……」
「不満か?」

 ギロリ……と、こっちを睨んでくる。
 見た目女子高生なのに、めっちゃ迫力あって怖いんですけど!!

「い、頂きます!喜んで使わせていただきます!!」
「ふん。最初からそう言えばいいんだ」

 満足そうに笑う女神様。
 ……あ、もしかして、本当はばぁちゃんにあげたかったのかな。愛子、だったんだもんな。

「目が覚めたら創り直しは終わっている。暫くはだるいだろうが、ラルフィンに癒やしをかけてもらえ。楽になるはずだ」
「はい」
「後は?…『全部知りたい』と言ってただろ?」

 後……あと、なんだろう。
 ばぁちゃんのこととか、俺がこっちに来た体のこととか、今の状態とか。
 他に……何か。

「あ」
「ん?」
「あの……、俺、魔力のある身体になる、っていうのはわかりましたけど…、使いきったら……また、死にますか…?」
「そりゃ死ぬだろうな」

 ……ああ、やっぱり。
 改造されても、駄目、なのか。

「使い切れば死ぬ。それは、誰でも知っていることだな」
「……ん?」
「魔力は生命と連結している。使いすぎれば動けなくなる。まったくの空にするということは、命を捨てるということだ」
「え、と?」

 なんか、思ってたのと違うけど…?

「使いすぎたらクリストフに補充してもらえばいい。お前たちは相性がいいからな。たっぷり抱かれれば、あっさりと魔力の補充くらいできるだろう」
「……っっ」

 熱い。
 これ、絶対、俺、真っ赤になってる。
 だって、女子高生の見た目で、そんな、身もふたもないこと……っ。

「今寝てる間にも、クリストフがお前の中に子種を注げば、魔力も癒やしも巡って一石二鳥なんだがな。ラルフィンには中々伝わらん。唾液だけじゃ何もかも足らんのに」
「そ………………、ですか」

 聞かなきゃよかった。
 女神様が明け透けすぎる…っ。
 俺、泣きそうなんですけど…っ。

「まあ」

 バリン、と、いい音を立てて煎餅をかじる女神様。

「何かあれば祈れ。少しくらいなら助けてやれないこともないからな」
「………はい。わかりました」
「クリストフにも、私の声を聞く努力をしろと伝えておけ。……全く。言いたいことだけ言って、私の声を聞こうともしない。腹立たしいことこの上ない」
「……………はい」

 最後のザラメ煎餅も食べきって、女神様はふっと息をついた。

「時間だ」

 女神様は立ち上がり、身体がふわりと浮く。

「瑛」
「はい」
「人は送れないが、紙くらいなら転移も容易い」
「………それ、って」
「お前の母はあれの娘だからな」

 ……手紙は送ってやる、って、聞こえるけど。
 本当に?俺の解釈間違ってない?

「女神様――――」
「またな」

 女子高生な女神様の姿が花びらに置き換わり、弾けて消えた。
 それから、ばぁちゃんセットも砂のように崩れて消えていく。
 真っ白な空間は、硝子でも割れたかのように、キラキラと輝きながら崩れ始めて。

 目が覚めるんだ、と、理解した。



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