【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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if番外編:聖夜は異世界(日本)で

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 里帰り。
 言葉で言うのは簡単でも、俺にとっては中々簡単なことじゃない。
 でも、特別な日だから、って、女神様が許してくれた。
 毎年、ってわけにいかないけど、今年は特別だそうで。
 翌々日の夜には戻されちゃうんだけど。

「クリスの服はどうしようもないよね。俺は着てきたのあるけど…。あ、外套はそのままいけるかも。剣は置いていってね?」
「……持っていかなくていいのか?」
「持っていったら捕まっちゃうから」

 こっちじゃ剣を佩帯するのが基本だからなぁ。
 剣がなくても派手。
 完全コスプレ雰囲気になっちゃうけど。

「髪、束ねておこ。俺も」

 なんだかんだ長くなった髪。
 いつもは青混じりの銀色の紐で結ってもらってるけど、今もそれでいいや。

 冬のニの月。
 女神様が突然俺の里帰りを許可してくれたので、ごねてごねてクリスも一緒に行くことになった。

「……アキのご両親に挨拶……」

 比較的質素な服に、外套を羽織ったクリスは、リアさんに何を吹き込まれたのか、ずっと何かを考え込んでぶつぶつ言ってる。
 まあいっか。

「クリス、行こ」
「ああ」

 今日は護衛はない。
 神殿に向かって、奥の部屋から送り出してもらう。帰ってくるときも同じ部屋に出る予定。
 …タリカに放り出されても、まあ、クリスと一緒だからいいっちゃいいけど、移動の手間は省きたい。

 二人で手を繋いで、神殿へ。
 待っていてくれたのはラルフィン君。
 奥の部屋に案内されて、厳重に鍵がかけられて。

『女神さま』

 ラルフィン君の呼びかけに、光が舞い始める。

「アキラさま、殿下、ちゃんと帰ってきてくださいね」
「もちろん。行ってきます!」
「いってらっしゃい!」

 手を振っていたら、ふっと一瞬暗転した。
 クリスの手をぎゅっと握りしめていたから不安はなかったけど、唐突すぎやしませんか、女神様。

 感慨に耽る時間も何もなしに、目の前に玄関が現れた。……いや、現れたのは俺たちの方?
 辺りを見回したら、それほど記憶の中と違わない光景が見えて、なんか泣きそうになった。
 頭上には満天の星空。……あ、そっか。夜なのか。

「……ここが、アキの世界?」

 クリスは物珍しそうに家や庭なんかを見てる。

「うん」

 このまま立ちんぼになってても仕方ないと思いながら、インターフォンを押すべきかどうか悩んで、結局押した。
 クリスは色々聞きたそうにしていたけど、俺がテンパってるから無理。

「はーい、どちらさま――――」

 玄関が開きながら、懐かしいと思える声が聞こえて。

 中から出てきた母さんと目が合って、……沈黙の時間が流れた。

「え」
「か」

 母さん……って言おうとしたら、無情にも目の前で玄関閉められた。……何故?

 どーしよ…って思って玄関に手を伸ばしたら、いきなりクリスに後ろに引っ張られて、それと同時に勢いよくまた玄関が開いた。……うぉ。危なかった。

「「瑛!?」」

 ……父さんも出てきた。

「うん。えと――――」
「瑛……瑛……!!!」
「なに、なんなの!?なんで連絡の一つもよこさないの!?」

 二人からぎゅうぎゅう抱きしめられて、言葉が出ない。
 苦しい。
 けど、嬉しい。

 勢いでクリスと離れてしまったけど、それどころじゃなかった。

「帰ってくるなら一言くらい――――あ、れ?」

 一言の連絡も入れるのめっちゃ大変なんだよ…って内心悪態ついていたら、父さんが俺の後ろを見て目を丸くした。

「ま、ま、まさ、か」
「え、王子様の旦那様!?」

 変なこと言わないで、母さん。

「あ、あのね、今日は特別だから、って、女神様が――――」
「旦那様連れて異世界から里帰りなんて、なんでもっと早く言わないの……!!」

 ……母さんのテンションについていけません。
 俺があたふたしてると、背後でくすって笑う気配がした。

「申し遅れました。クリストフ・エルスターと申します。春の二の月に、アキ――――アキラとしました。ご両親には何の挨拶もなく申し訳ありません」

 ……って、胸に手を当てたしっかりとした礼を、クリスが両親の前でした。

「まあ、まずは家に入ろう。あー、クリストフ君……は、流石に駄目か?殿下?王子様?……なんて呼べば……」

 クリストフ君!!
 なにそれ新鮮!!

「クリストフ君で!!」
「瑛には聞いていない」
「ひどいっ」
「クリス君でもいいんじゃないかしら。それか、クリスさん?」

 母さんの順応性が高い気がする。

「お二人の呼びやすいように呼んで頂ければ嬉しい限りです」

 クリスはあたふたする両親に、最高の笑顔で促した。その笑顔、好きだ。

「…あー…、じゃあ、クリス君だな。もうそれで。早く家に入ろう。凍えてしまう」

 クリス君。
 なんか、あれだ。
 幼い男の子みたいな呼び方…!
 貴重すぎ!

「そうね。早く入ってちょうだい。温かいココアをいれるから。あ、もしかして、お夕飯はまだ?」
「夕飯は食べてきたからいいけど、父さんと母さんは?」
「食べ終わってるから大丈夫よ」

 それならよかった。

 改めて母さんと父さんは、俺をじっと見た。
 それから、さっきまでと全然違う、落ち着いた、少し涙で震えた声で、「おかえりなさい」って、言って、抱きしめてくれた。













*****

ifストーリーのクリスマス小話。
一話で終わらせる予定だったのに、なんか長くなりました……(いつものこと…?)
少しの間お付き合いくださいな^^


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