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if番外編:聖夜は異世界(日本)で
④
しおりを挟む翌朝。
寝ぼけてた俺は、起き抜けにクリスを襲いかけた。理性的だったのはクリスの方で、キスだけで俺を現実に引き戻してくれた。
習慣って恐ろしすぎる。
向こうでの生活、もう少しちゃんとしよう…。
朝食のときに明日の午後には向こうに帰ることを伝えたら、短すぎると怒られた。しょうがないじゃん。
今夜はごちそう作らなきゃ、と、母さんは張り切ってた。
クリスと適当な時間に出かけて、そんなに遅くならないうちに帰ることを約束した。
今日は平日だから、二人とも仕事。
だから、二人を見送ったあとは、クリスと二人で朝食の後の片付けをして(かなり新鮮)、家の中の物について質問攻めにされて、二泊三日の里帰りだから身体の改造がされてなくて魔力は使えることを確認して、そうこうしてるうちに十時を過ぎた。
魔法が使えるからと言って、使う気はない。もし使うとしたら……って考えて、恥ずかしくなったのでやめた。
まずは換金しなきゃな…なんて考えながら、小一時間歩いて賑わう街の中心地まで来たけど、すれ違う人が男女関係なく必ずクリスを見て惚けるんだよね…。
クリスはクリスで全部が全部目新しい物ばかりだから、俺に質問攻め。周囲の視線をわかってるはずなのに、完全無視。
そして、さりげなく車道側を歩く完璧さ。俺の旦那様格好いい。
滅茶苦茶注目されてるけど、手は繋いでる。絶対離すもんかって勢いで、ぎゅっと力強く握ってる。
平日の昼前だけど、やっぱり予想通り人は多かった。
学生ぽい人も多い。もう冬休みの季節だっけ??
クリスマス・イブデートぽい男女も多いけど、二人してクリスに見惚れるのやめたほうがいいんじゃないかな…。喧嘩にならない?ねえ、大丈夫?
とりあえずまずは目的の質屋さんに入る。
俺も入ったことがないからちょっと緊張した。
けどクリスは堂々としていて、外套の下に着けていたポーチの中から、小さめの宝石を取り出して店主さんに見せた。
結果、手元には十数万の現金が…。とりあえずの活動資金としては十分すぎる。
宝石を前に唸る店主さんにお礼を言って、二人でまた街に出た。
お金はさっさと、ポーチの中にしまったよ。財布も持ってないんだよね、俺たち。
「街の中が装飾されてるな…。光っているのも『電気』とかいうやつなのか?」
「うん。クリスマスだから、イルミネーションの電飾だと思う。昼間見るのも綺麗だけど、日が落ちてからのほうが綺麗だよ」
「イルミネーション…」
「夜遅くまでは無理だけど、暗くなり始めた頃のだったら見れるよ」
夜じゃなくても綺麗。ほんとに。木とか、必要以上に装飾されてる。
でも、それを楽しむ前に、まずは身なり整えなきゃね!
俺自身店に詳しいわけじゃなくて、むしろ全く興味が無かったから、このブランドがぁとか、あのブランドがぁ、とか、そういう興味も趣味も持ち合わせていない。
だから、買うにしても、ショッピングモールだとか、複合施設だとか、そういうとこでいいんだよね。
俺自身が何度か行ったことがある場所にむかった。それが一番確実。服だけじゃなくて、靴も、何なら財布も欲しいから。
店に入ったら入ったで、またしても視線の嵐。
もう諦めよう。
俺の旦那様が格好良過ぎるのがだめなんだ。
「クリス、ここ寄ろう」
「ん」
手を繋いで主張する。
この人俺のなので声かけないでください、って。
お店のエリアに入って、クリスはお店の様子に興味深そうに見入っていた。
まあ、クリスの買い物って、基本、城に来てもらってのオーダーメイドだもんな。
「…凄いな」
「この中からサイズ選んだり、デザイン選んだりするの。クリス、どんなのがいい?」
基本、何を着ても似合うと思うんだよね。ジャージも着せてみたい。
クリスは何か考えながら、俺をじっと見た。
ジーンズに薄手のセーターなんだけど。外套の下。
「アキと同じ感じのもの?」
「えっと…、ジーンズとセーター……ってことかな」
ぐるっと見てたら、店員さんと目が合いそうになって、ぐるっとそらした。
声かけられるの苦手。
だけどその店員さん(男)は、機を得たり!って感じでこっちに来ちゃったんだよね。
「なにかお探しですか?」
クリスを見て。俺を見て。また、クリスを見て。
『俺、この人苦手』
思わず口に出したのは、向こうの言葉。
きょとんとした顔の店員さんが、俺とクリスを見比べてる。
『嫉妬?』
『違うしっ』
放っといてくれればいいのに。
どう見てもクリスにしか興味なさそうな店員さん、嫌だし。
……嫉妬か?これって嫉妬になる?
『品物を探すのを手伝ってくれるんだろ?』
ぐいっと腰を抱かれて。
『頼んだら色々出してくれるだろうけど』
『その中からアキの好みで選んだら?二人で探すのも楽しそうだけど、時間がかかりそうだから』
『……そう?』
『気に入るものがなければ買わなければいいだけだ。勧められたものでも、アキが気に入ったものなら、アキが選んだことになるだろ?』
宥めるように頭にキスを落とされて、クリスにくっついて匂いを感じてたら、それだけで落ち着いてきた。
『……なら、そうする』
頷いたら、くすっと笑って頬にキスをされた。
そしてはたっと、ここが店内で、目の前に店員さんがいたことを思い出したんだよ。
思わず周りを見たら、他のお客さんとか、店の外にいた人たちとかに凄く見られてた……。
「す、すみません……っ」
「い、いえ、えっと…」
店員さんと頭を下げあった。
ちょっかいだしてきた張本人は、しれっと俺の腰に腕を回しっぱなし。
「あ、あの、とりあえず、その、ジーンズと、セーター、見たくて……っ」
こっちの人の!って勢いでクリスを指さしてお願いした。
お互い挙動不審になりながらも、何本もジーンズを出してきてくれて、セーターも何枚も出してくれた。
そして、あれです。
クリスのスタイルの良さを改めて実感しました。
まずは股下が長いんですよ。ええ。とても。店員さんも俺も頭を悩ませた。裾上げ必須のジーンズが、裾上げどころか足りないという状況になり、サイズを図り直したり、もう色々。
筋肉付いてるから何着ても似合う。それはそうなんだけど、何にしてもサイズが問題。
他の店員さんもやってきて、棚の中からあれこれ出してくる。
服とサイズと格闘し続けること一時間。
俺と店員さんが滅茶苦茶疲れてる中、一人だけ涼しい顔をして、王子サマから現代的な好青年にチェンジしたクリスが鏡の前に立っていた。
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