【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

文字の大きさ
409 / 560
if番外編:聖夜は異世界(日本)で

しおりを挟む



 翌朝。
 寝ぼけてた俺は、起き抜けにクリスを襲いかけた。理性的だったのはクリスの方で、キスだけで俺を現実に引き戻してくれた。
 習慣って恐ろしすぎる。
 向こうでの生活、もう少しちゃんとしよう…。

 朝食のときに明日の午後には向こうに帰ることを伝えたら、短すぎると怒られた。しょうがないじゃん。
 今夜はごちそう作らなきゃ、と、母さんは張り切ってた。
 クリスと適当な時間に出かけて、そんなに遅くならないうちに帰ることを約束した。
 今日は平日だから、二人とも仕事。
 だから、二人を見送ったあとは、クリスと二人で朝食の後の片付けをして(かなり新鮮)、家の中の物について質問攻めにされて、二泊三日の里帰りだから身体の改造がされてなくて魔力は使えることを確認して、そうこうしてるうちに十時を過ぎた。
 魔法が使えるからと言って、使う気はない。もし使うとしたら……って考えて、恥ずかしくなったのでやめた。

 まずは換金しなきゃな…なんて考えながら、小一時間歩いて賑わう街の中心地まで来たけど、すれ違う人が男女関係なく必ずクリスを見て惚けるんだよね…。
 クリスはクリスで全部が全部目新しい物ばかりだから、俺に質問攻め。周囲の視線をわかってるはずなのに、完全無視。
 そして、さりげなく車道側を歩く完璧さ。俺の旦那様格好いい。
 滅茶苦茶注目されてるけど、手は繋いでる。絶対離すもんかって勢いで、ぎゅっと力強く握ってる。

 平日の昼前だけど、やっぱり予想通り人は多かった。
 学生ぽい人も多い。もう冬休みの季節だっけ??
 クリスマス・イブデートぽい男女も多いけど、二人してクリスに見惚れるのやめたほうがいいんじゃないかな…。喧嘩にならない?ねえ、大丈夫?

 とりあえずまずは目的の質屋さんに入る。
 俺も入ったことがないからちょっと緊張した。
 けどクリスは堂々としていて、外套の下に着けていたポーチの中から、小さめの宝石を取り出して店主さんに見せた。
 結果、手元には十数万の現金が…。とりあえずの活動資金としては十分すぎる。
 宝石を前に唸る店主さんにお礼を言って、二人でまた街に出た。
 お金はさっさと、ポーチの中にしまったよ。財布も持ってないんだよね、俺たち。

「街の中が装飾されてるな…。光っているのも『電気』とかいうやつなのか?」
「うん。クリスマスだから、イルミネーションの電飾だと思う。昼間見るのも綺麗だけど、日が落ちてからのほうが綺麗だよ」
「イルミネーション…」
「夜遅くまでは無理だけど、暗くなり始めた頃のだったら見れるよ」

 夜じゃなくても綺麗。ほんとに。木とか、必要以上に装飾されてる。
 でも、それを楽しむ前に、まずは身なり整えなきゃね!
 俺自身店に詳しいわけじゃなくて、むしろ全く興味が無かったから、このブランドがぁとか、あのブランドがぁ、とか、そういう興味も趣味も持ち合わせていない。
 だから、買うにしても、ショッピングモールだとか、複合施設だとか、そういうとこでいいんだよね。
 俺自身が何度か行ったことがある場所にむかった。それが一番確実。服だけじゃなくて、靴も、何なら財布も欲しいから。

 店に入ったら入ったで、またしても視線の嵐。
 もう諦めよう。
 俺の旦那様が格好良過ぎるのがだめなんだ。

「クリス、ここ寄ろう」
「ん」

 手を繋いで主張する。
 この人俺のなので声かけないでください、って。

 お店のエリアに入って、クリスはお店の様子に興味深そうに見入っていた。
 まあ、クリスの買い物って、基本、城に来てもらってのオーダーメイドだもんな。

「…凄いな」
「この中からサイズ選んだり、デザイン選んだりするの。クリス、どんなのがいい?」

 基本、何を着ても似合うと思うんだよね。ジャージも着せてみたい。
 クリスは何か考えながら、俺をじっと見た。
 ジーンズに薄手のセーターなんだけど。外套の下。

「アキと同じ感じのもの?」
「えっと…、ジーンズとセーター……ってことかな」

 ぐるっと見てたら、店員さんと目が合いそうになって、ぐるっとそらした。
 声かけられるの苦手。
 だけどその店員さん(男)は、機を得たり!って感じでこっちに来ちゃったんだよね。

「なにかお探しですか?」

 クリスを見て。俺を見て。また、クリスを見て。

『俺、この人苦手』

 思わず口に出したのは、向こうの言葉。
 きょとんとした顔の店員さんが、俺とクリスを見比べてる。

『嫉妬?』
『違うしっ』

 放っといてくれればいいのに。
 どう見てもクリスにしか興味なさそうな店員さん、嫌だし。
 ……嫉妬か?これって嫉妬になる?

『品物を探すのを手伝ってくれるんだろ?』

 ぐいっと腰を抱かれて。

『頼んだら色々出してくれるだろうけど』
『その中からアキの好みで選んだら?二人で探すのも楽しそうだけど、時間がかかりそうだから』
『……そう?』
『気に入るものがなければ買わなければいいだけだ。勧められたものでも、アキが気に入ったものなら、アキが選んだことになるだろ?』

 宥めるように頭にキスを落とされて、クリスにくっついて匂いを感じてたら、それだけで落ち着いてきた。

『……なら、そうする』

 頷いたら、くすっと笑って頬にキスをされた。
 そしてはたっと、ここが店内で、目の前に店員さんがいたことを思い出したんだよ。
 思わず周りを見たら、他のお客さんとか、店の外にいた人たちとかに凄く見られてた……。

「す、すみません……っ」
「い、いえ、えっと…」

 店員さんと頭を下げあった。
 ちょっかいだしてきた張本人は、しれっと俺の腰に腕を回しっぱなし。

「あ、あの、とりあえず、その、ジーンズと、セーター、見たくて……っ」

 こっちの人の!って勢いでクリスを指さしてお願いした。
 お互い挙動不審になりながらも、何本もジーンズを出してきてくれて、セーターも何枚も出してくれた。

 そして、あれです。
 クリスのスタイルの良さを改めて実感しました。
 まずは股下が長いんですよ。ええ。とても。店員さんも俺も頭を悩ませた。裾上げ必須のジーンズが、裾上げどころか足りないという状況になり、サイズを図り直したり、もう色々。
 筋肉付いてるから何着ても似合う。それはそうなんだけど、何にしてもサイズが問題。
 他の店員さんもやってきて、棚の中からあれこれ出してくる。

 服とサイズと格闘し続けること一時間。
 俺と店員さんが滅茶苦茶疲れてる中、一人だけ涼しい顔をして、王子サマから現代的な好青年にチェンジしたクリスが鏡の前に立っていた。


しおりを挟む
感想 543

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

処理中です...