【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。

5 結局、俺の悪い癖は直ってなかった

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「アキには敵わないな」

 クリスは憑き物が落ちたもうな顔で笑ってくれた。
 頬に添えた手に、クリスの手が重なる。

「みんなで考えよう」
「うん」

 クリスの額にそっとキスをした。そしたらクリスも俺の額にキスをする。
 みんなで考えれば、きっといい案が出るよ。
 俺の手を外して、背中にクリスの腕が回る。
 そっと抱き寄せられて、胸元に寄り添う形になる。
 ……凄く、安心する場所。
 匂いや、鼓動や、体温や。

 ……ほんとに、離れられないと思う。
 本物の体温を感じてしまったから。
 指先から伝わってくる体温が愛しい。
 半年もの間、よく我慢できたな。
 この体温に触れずに過ごしていたなんて。

 促されるままに上を向いた。
 ゆっくり重なってくる唇からは、ほんの少しのクリスの魔力が流れてくるのがわかる。
 俺だけの特別。
 俺だけの特権。

 舌が絡む前に離れてしまって、それが嫌で追いかけた。
 もっとしてほしい。
 もっと、たくさん。

「アキ」
「ん………、クリス、もっと」

 耳元で、クスって笑う声がした。
 背中に回っていた手が、俺をなだめるように動いて、ベッドに倒される。

「また熱が出てきてる」
「……大丈夫だし」

 クリスに向かって伸ばした手は、しっかりと握られた。
 ……抱いてくれればいいのに。女神様も言ってた。そしたら、もっと回復が早くなるのに。

「クリス」

 気づいてくれないかな。
 抱かれたい、って、言葉にするには恥ずかしすぎる。だから、気づいてくれないかな。

「アキ」

 クリスの、少し困った顔。
 それにムッとしたら、俺の右手を誰かが握った。

「癒やしを続けますね」

 にこにこと弾んだ声のラルフィン君が、俺の手を握ってる。

 ………あ。

 クリスを見たら、苦笑顔。
 更にその向こうを見たら、ギルマスの呆れ顔と、オットーさんとザイルさんの見守る笑顔。

 一気にブワワッと、顔が熱くなった。

「後でな」

 クリスは『何を』とは言わなかった。
 きっと、俺がしてほしいこと伝わったんだ。
 でも俺はそれに頷くことはできなかった。
 左手で毛布を口元まで引っ張り上げて、目を閉じた。
 もー、どうして俺、こうなんだろっ。
 ちょーっとクリスと触れ合っただけで、すぐに周りのことを忘れてしまう。
 誰がいて、とかも、気にならなくなる。……と言うか、意識の外に追いやってしまうから、その時は本当にクリスの他の存在のことを忘れてしまうんだ。
 直さなきゃ…直さなきゃ…っ。

「アキラさんがアキラさんのままで安心しました」

 って、オットーさんの笑顔の言葉。

「相っ変わらずだな。どこからどう見ても本人だとわかるが」

 呆れた結果、笑うギルマス。

「アキラさんは殿下の伴侶になるんですから、いいんですよ、今のままで。本気なんですから。大して本気でもないのに手を出してるわけじゃなく、相思相愛とわかりますからね」

 ザイルさん……いつもどおり……なのに、棘を感じるのはなんで?いや、俺に対しては思いやりたっぷりなんだけど。

「とりあえず、寝ておけ」
「ふぁぃ……」

 額にキスをして、クリスがベッドから離れた。
 どこかに行くわけじゃなくて、作戦会議中だったテーブルに戻っただけで、なんとなくホッとしてしまった。

「魔法師団のことは今後考えていく。レヴィには助言を求めるからな」
「あいよ」
「それはまあそれでいいとして、昼を過ぎたら陛下と兄上にアキのことを伝えに行く。……異世界人ということを伝えるかどうかなんだが」

 ふむ…と、ギルマスが腕を組んだ。

「俺のじーさまは、リーデンベルグの当時の王に自分のことを明かしたそうだ。その上で保護されたらしい。魔力と異世界の知識を研究所で生かす結果になったようだ」

 エイタロウさんだっけ。
 言葉も通じなかっただろうに、凄いな。行動的だったんだ。

「……他国の例だが、言葉が通じず、異端者として処刑された者もいたようだ」
「処刑………」

 時代によっては、って言われたけど、きっと、国によっても違うんだ。
 ぶる…って震えたら、クリスが気づいて俺の頭を撫でてくれる。

「大丈夫だ」
「…うん」
「俺もエルスターの現国王と王太子は問題ないと思う。だが、貴族はだめだな。すぐに他国に漏れる」

 クリスは頷いてから、また、俺の頭を撫でて、表情を緩めた。

「陛下と兄上には異世界人だと話すことにするよ。その上で貴族たちには先程の話を広めていく。それでいいか?」
「うん。クリスが決めたことでしょ?…それに、俺も、陛下とお兄さんには隠し事したくない」
「ありがとう、アキ」

 嬉しそうに笑ってくれるクリスが好き。
 クリスのことが一番大事だけど、クリスの家族も俺にとって大切な人たちなんだ。
 だから、お礼を言われるのは、なんだかくすぐったい。

 クリスたちはその後もいくつか確認していた。
 俺は、クリスの手とラルフィン君の癒やしのぬくもりで、瞼が落ち始めた。
 俺のために話し合ってくれてるのにごめんなさい。

「眠れ」

 その声は、低く優しく俺の中に響く。
 俺は素直に、眠りに落ちた。



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