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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。
10 嬉しいことは続く
しおりを挟む目が覚めたら、クリスに腕枕されてた。
思わずニンマリと笑ったら、寝てると思ってたクリスに笑われた。
でもいいんだ。
笑われたって嬉しいもんは嬉しいもん。
だから、すりすりと胸元によっていったら、ちゃんと背中を抱きしめてくれた。
その後すぐ夕食の時間になって、久しぶりに食事を食べた。
お粥と、俺が好んでいたものばかり。今度料理長さんのとこ行かなきゃ。
寝る前には、久しぶりの『一緒にお風呂』だった。
ガチガチに緊張してた俺を、クリスは笑いながら普段と変わらない感じで裸に剥いて(かなり抵抗したが無駄だった)、ひょいっと抱き上げて(久しぶりすぎで恥ずかしさで気絶するかと思った)、自分でできるって言ってるのにいい香りのする石鹸で全身洗われた。…本当に全身……。
石鹸で滑った指が後ろに入ってきて息を詰めたらキスで緊張をほぐされた。
ついでに、「アキのいい場所は変わってないな」って、低くて頭に響く声で言われて、のぼせそうになった…。
お風呂場で散々いじられて二回くらいイった。それからベッドに戻ってからも、キスされて触られて、十分解されてとろとろにされて、するんだな!って思ってたら、それ以上何もされなかった。
まあ、何回かイかされただけで気絶するように眠ってしまったから、クリスが俺の体調とか気遣ってしなかった、ってことも考えられるんだけど。
でも、朝目が覚めたときに、少し残念な気持ちになったのは仕方ないと思うんだ。……期待、しちゃってたから。
午前中は昨日と変わりなく過ぎた。
朝から身体の軽さを感じてたから、ちゃんと朝ごはんを食べて、しっかりしすぎない室内着に着替えて、やってきたラルフィン君に癒やしをかけてもらった。
これっていつまで続ければいいんだろう。ラルフィン君にだって予定とか都合とかがあるのに。
「アキラさま、余計なこと考えなくていいんですよ。…でも、この様子なら、明日で終わらせていいかもしれませんね」
「あ、そうなんだ。よかった」
「なら、明日の昼過ぎからは魔法の練習を始めてみるか」
っていうクリスからの提案に、一も二もなく飛びついた。
魔法だよ魔法!やっと使える!グリズリーさんに向けたときの『ぽすん』っていう煙だけじゃなくて、ちゃんとした魔法。女神様の言うところの身体の創り直しが終わっているんだから、俺には魔力が扱えるはず!
「アキ」
「な、に!?」
「……はしゃぐのはいいが、魔法を練習するときは、必ず俺がいるときにすること。守れないなら魔法は使わせない」
「え」
「俺がいないと無茶するだろ?」
「そうですね。殿下とご一緒がいいと思いますよ。万が一制御不能になっても、殿下ならどうにかしてくれそうですし」
「うう」
否定できない。
浮かれすぎてよくわかってないままやらかしそう。
「……はぃ」
ぽんぽんと、笑ったクリスに頭を撫でられた。
クリスと一緒じゃない状況なんてないんだから、四六時中練習ができるんだと、前向きに行こう。
癒やしが終わってラルフィン君が帰ってから、昼食を食べた。俺、相変わらずクリスの膝の上で、餌付け状態。
何食べてもお腹が痛くならないので、クリスと同じもので量少なめ。
料理長さんに俺のことを伝えたのかメリダさんに聞いたら、言ってないんだって。だから、メリダさんが注文する内容に、「まるでアキラ様が戻ってきたみたいですね」と言って涙を流したそうだ…。
ごめん…。料理長…。
「明日顔を出そうか」
「うん」
明日で治療終わる予定だし。
丁度いい、よね?
昼食の後はお茶を飲んで食休みして、メリダさんも寝室から退室してから、ベッドの上で後ろからクリスに抱きしめられるように座って、魔力の流れを感じる練習をしてた。
最初は、キスをしてから。
飲み込んだクリスの魔力が、俺の身体の中を巡るのを、目を閉じて感じられるように。
少ない魔力から試すのは、強い魔力を流して俺が暴走しないように。
それから、クリスに背中を預けて、左手を握る。お互いの親指には、針で刺したようなちいさな傷をつけて、傷同士をこすり合わせるようにする。
血を介してクリスの魔力が流れてくる。
…他国から来た使者の人で言葉がわからない相手に『コトノハ』を使うときのやり方だったっけ。
触れ合わせてる指から、じんわりと温かさが広がっていく。それは、唾液を飲んだときよりもはっきりとわかる強さで、俺の身体のなかを巡った。
それに絡むように、多分自前の魔力も巡る。魔力までクリスが大好きなのか、俺。なんか恥ずかしいな。
「…魔力、あった」
「いいな。じゃあ目を開けて。俺の魔力は感じる?」
目を開けて視界がブレることはない。
クリスが後ろにいることはわかっているけど、クリス自身の魔力を感知できるように。
難しいかな…って思ったけど、案外あっさりわかった。
俺の身体の中を巡ったものと同じものが、すぐ後ろから感じることができて。
「ん、わかる」
「そうか。…アキ、身体から力を抜いて。緊張してガチガチだ」
「うわ」
深呼吸して手を振っていたら、ノックの音がした。
クリスが入室を促すと、顔を出したのはやっぱりメリダさんだった。
「王太子殿下がいらっしゃいましたが、お会いできますか?」
「ああ」
クリスはさっと俺を抱えると、ベッドから降りて椅子に降ろした。
「問題ないよ。通してくれ」
「はい」
お兄さん。
いつぶりだろう。
「失礼するよ」
って入ってきてのは、変わらない笑顔のお兄さん。
それから、そのお兄さんに手を引かれた、ティーナさんだった。
「………!」
「ティーナさん」
一歩部屋に入ってきたティーナさんは、俺を見るとその場で立ち竦んで、口もとを手で抑えた。
俺とお兄さんを交互に見て、大きな瞳からぼろぼろ涙を流し始める。
「ア…キラさん……っ」
少しフラフラしながら、一歩一歩、俺に近づこうとしてくれる。お兄さんは背中を支えて。
「ティーナさん!」
俺は思わず駆け出して、ティーナさんの一歩手前で立ち止まった。
さっきまで魔力の流れを感じていたせいか、すごく敏感になってるらしい俺の魔力感知。それが、ティーナさんから魔力を感じ取った。
よく見れば、コルセットとかで閉めるようなドレスじゃなくて、ひかくてきストンと着やすそうなドレス。
記憶の中のティーナさんより、ほんの少し痩せていて。
「ティーナさん」
震えてる両手を握った。
「アキラさん……っ」
「心配かけてごめんなさい。自分の国に戻って、この間帰ってきて。ちょっと寝込んでたけど、もう、大丈夫だから」
「……っ」
「俺、もうどこにも行かないから。また仲良くしたいです」
「……っ、嬉しい……嬉しいです……アキラさん…っ。おかえりなさい……!」
「ただいま、ティーナさん!」
泣き笑いになったティーナさんを、そっと抱きしめた。ティーナさんも俺を抱きしめてくれる。
「……ティーナさん、泣き止まないと、お腹の赤ちゃんびっくりするよ?」
って笑いながら言ったら、ティーナさんはすごく驚いた顔をした。
お兄さんも苦笑してる。
「アキ」
後ろからクリスに抱きつかれた。
「どうしてわかった?」
あ、クリスは知ってたんだ。
「魔力を感じる。……多分、赤ちゃん、魔力持ちだよ」
これにはその場にいた皆が、息を呑んだ。
ティーナさんの嬉しそうな笑顔が、不安そうなものになってしまった。
「大丈夫だから」
もう一度ぎゅっとティーナさんの手を握る。
「俺がいるでしょ?」
「!」
「赤ちゃんが生まれるまでに、魔力制御のこととか、……魔法の使い方とか、全部覚えて、俺が教えてあげるから。何も心配いらないよ。魔法はいい力だから。だから、自分のためにも国のためにも……お父さんとお母さんのためにもなる優しい力になるよ」
「アキラさん……」
「おめでとう!ティーナさん!!」
「あ……ありがとう……!」
よかった。不安な顔じゃなくなった。
その後、メリダさんがお茶を準備してくれた。ティーナさんには当然妊婦さんでも飲めるお茶。多分、ノンカフェイン系のものだよね。
タリカへの視察が決まったあたりから体調が優れなくて、お兄さんの代わりにクリスが城を出てから、妊娠がわかったんだって。
王太子妃懐妊のことは、まだ公表してないんだって。安定期に入ったら、ちゃんと公表するらしい。
今は王太子妃の仕事はお休みしてて、お部屋でのんびりしてるって。
そんなことを話していたら、今度は陛下が来て。
俺を見て『父親』の顔になって、何度も頭を撫でられた。目尻に、ほんの少し、涙を浮かべて。
家族お茶会になった午後の一時だったけど。
すごく、嬉しくて、楽しかった。
…やっぱり俺、帰ってきてよかった。
帰ってこれて、よかった。
ありがとう、女神様。
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