【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。

18 『クリスサイズ』……墓穴。

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 二度寝して起きたらいい時間だった。
 寝室の方もぐるりと見回したけど、ノートなんて影も形もない。クリス一体どこに隠したの…。

「ご婚礼衣装の仮合わせに、ソリア様がいらっしゃいますが、それまでどうされますか?」

 朝食後のお茶を淹れながら、メリダさんが口にした。
 衣装合わせ……ってことだよね。
 サイズ直しもあるのか……。

「レヴィの所にも行きたいんだが…」

 クリスの指が俺の頬をくすぐっていく。

「ギルマスに用事?」
「ああ。……お前の魔法についてな。あいつの助言を聞いておきたいんだ。昨日みたいなことになったらお前の負担になるから」
「……気をつけるから別にいいのに」
「俺が心配なんだよ」

 リップ音を立てながら、額にキスをされた。
 心配されるのは申し訳なく思う反面、ちょっと嬉しい。

「レヴィのところは明日だな」
「今日は?」
「オットーをあまり怒らせたくないから執務室に行くか」
「……いや、怒らせたくないからみたいな理由じゃなくて、ちゃんと仕事しよ…?」
「アキはどうする?」
「一緒に………、あー」
「ん?」
「厨房にちょっと行ってこようかな。メリダさんと」
「あら」
「何故…」
「内緒!用事終わったら執務室行くからさ」

 昨日料理長に頼み込んだことやらなきゃね。
 そりゃ、クリスと一緒にいたいけど、やると決めたことはやらねば。

「いい?」

 じ…っとクリスの目を真正面から見つつ、少しだけ首を傾げてみる。……間違ってもあざとさを狙ったわけではない。うん。
 クリスは盛大な溜息を付きながら、俺を抱き込んできた。

「寝てても俺を離さなかったのに…。起きたらすぐ俺から離れようとする…」
「いやいやいや」

 寝てるときは無意識!
 起きてるんだから、そこまでくっついてるわけに行かないし、いや、くっついてていいならずっとくっついてるけど、そんなことできないし。

「無理はしない。約束できる?」
「厨房に行くだけなんだけど…」
「護衛はつける」
「オットーさんは外してね」
「昼は……」
「お昼ごはんはクリスと一緒に食べます」
「………なら、いい」

 おお。
 やっとお許し出た。
 それにしてもクリスが大きい子供みたい。
 メリダさんも笑いっぱなしだ。

「ソリアが来たら俺も同席するから」
「普通、花嫁のご衣装は当日まで見ないものですよ?」
「……いや、見る」
「全く……」

 今度は呆れ気味に溜息ついたメリダさん。

「仕方ないですね」
「……俺は、クリスにもいてほしいよ……?」

 結婚式の衣装なんて俺わかんないし。
 任せられたらそれこそあたふたして終わってしまう。だったら、最初からクリスの好みに合わせるのがいい。
 ……そもそもほぼデザインは決まってるような感じだったし。

「あまり口は出さないから」
「出していいんじゃない?……あ、でも、採寸するとき触られるの怒らないでよ?」

 前のとき大変だったよな。
 でもソリアさんは流石プロ!って感じだったけど。

「べたべた触られるのは嫌だ」
「採寸は身体に触らないとできません」
「……腰回りは俺が測る」

 って、両手で鷲掴みにされた。
 いきなりで驚いて、「うひゃ」ってなんか変な声出たけど、鷲掴みしたままクリスの眉間に皺が寄った。

「細すぎる……。体重もまだ足りない」
「腰の細さと足に乗ったときの重さで体重測らないで…」

 器用すぎるというか、俺の体重に敏感すぎる。
 肋が浮いてるわけじゃないし、これでもだいぶ戻ったんだからさっ。

「ダンスには体力が必要だぞ?」
「ああ。そういえば、夜会用のご衣装も用意しないとなりませんね」
「え」
「……失念してた。今日発注しよう。間に合うだろうか」
「大丈夫でしょう。恐らく」

 ダンス…と聞いて固まったのに、また衣装…って。
 ほんと俺、普段着と隊の制服だけでいいんだけど…。

「……ああ、そうだ。メリダ、アキが着てきた羽織にも印を入れるようにソリアに依頼してくれ」
「かしこまりました。あのお色は素敵ですね。アキラさんがとても坊っちゃんのことを想ってるのだとよくわかりますから」

 ニコニコ笑うメリダさん。
 それは本当のことだけど、面と向かって言われると恥ずかしい。恥ずかしいけど嬉しい、複雑な気分。

「でも、少し大きすぎるのではないですか?」
「あー、うん。あれね、買い物に行ったとき偶然見つけて、クリスの色だったから絶対欲しくて、しかも男性用だったからクリスサイズ…えーと、クリスに丁度いい大きさのものがあって」
「ん?」
「あら」

 ベッドの上に置いたままだったカーディガンをメリダさんが手に取り、クリスの背中に合わせた。

「ね?クリスに丁度いい大きさでしょ?」
「あらあら」
「気づかなかったな」
「だから、これ着てたらクリスが傍にいる気がして、抱きしめてもらえてる気がして、こればっかり着て、て………、………………え、と」

 ……………やっちまった。
 言わなくていいことまで暴露したよ、俺!!
 完全に墓穴ほったよね!?
 だって、こんなの、恥ずかしすぎるのにっ。

「アキ」
「や、えと、あの、だから」
「測ってもいないのに俺の大きさがわかるくらい、共にいたということだな」
「あの」
「可愛すぎる。どれだけ好きにさせるつもりだ?」
「いや、だから」
「傍にいなくて寂しかったんだろ?」

 目を細めて、とてもとても嬉しそうに笑って、俺の頬を何度も撫でる。

「…………うん」

 だからほんの少しだけ、素直になってみた。
 だって、寂しかったのは本当のことだから。

「今日も着てるといい。春になったとはいえ、まだ肌寒いから」
「お色は大丈夫ですよ。今日のお召し物も坊っちゃんの色ですから。ふふ。どこからどう見ても坊っちゃんの大切な方ですね」

 そう言われるのもなんだか恥ずかしいけど、メリダさんはからかう口調じゃないから、ちゃんと笑顔になれた。





 そんなわけで、クリスの瞳色だというのはとっくに知られていたけど、クリスサイズでそれがよかった理由も暴露してしまった俺。
 盛大な墓穴をほってしまったけど、なんか喜んでくれた気がするから、まあ、いいか。



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