【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。

28 ストップがかかった

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 気を取り直していこう。
 気合を入れるために軽く頬を叩いた。

「よし」
「……坊主はやることがたまに男前なんだよな……」
「たまに、って」
「たまに、だろ。じゃあ、坊主、基本行くぞ」
「あ、はい」

 唐突に始まった。
 ギルマスからの魔法講義。

「手のひらを上に向けて、その上に現出させる」
「何を?」
「水なら水、火なら火。魔力を絞って、本当にごく僅かにだしてみろ。ほら」

 そう言って見せてくれたのは、ギルマスの手のひらの上に出来た本当に小さな雷みたいなもの。

「あ、なる」
「できそうだと思ったら属性を変えてみろ」
「はい」

 最初は水がいい。イメージしやすい。
 クリスの腕が俺のお腹をぎゅっと抱いてて、そのぬくもりとか感じて肩の力を抜いた。
 万が一何かあっても、クリスがいてギルマスがいる。どうにかなりそう。

 見せてもらったように手のひらを上に向けて、小さな水の球体が浮いてるようなものをイメージする。
 自分の中で魔力が動くのを感じながら、手のひらに集中していると、ぽわん…って、水の塊が浮き出た。

「へぇ…。面白いな。無理がないようなら続けろ」

 頷いて、魔力を変質させていく。
 水なら、次は氷が楽。
 手のひらの上の水の球体は、徐々に凍りつき、やがて氷の結晶になった。
 水と氷はやっぱり楽。
 それから、氷を溶かして消してしまう火、火から巻き起こる小さな竜巻、竜巻に絡む雷……って、どんどん変えていく。
 自分の手のひらで事象が進んでいくのが楽しくなったところで、クリスの片腕に力が入って、もう片方の手が俺の目を隠した。

「坊主、深呼吸」
「あ、はい」

 二人から入った『ストップ』だ。
 危ない危ない。

 何度か深呼吸をしたら、気分が落ち着いた。
 クリスの手も離れると、一気に脱力した。
 相当身体に力が入ってたんだ。

「休むか?」
「まだ大丈夫です」
「ん。なら続けるか」
「はい」

 一度深呼吸してから、手のひらを上に向ける。
 なんとなくは一巡した。
 前も今回も、まだ使ったことのない属性。できるだろうか。

 イメージするのは小さな鉢植え。
 インテリアにも使いそうな、土のちいさな塊。

 他の属性のものより、出てくるのに少し時間がかかった。でも、イメージしたとおりの土の塊が出来上がる。
 それができたら、今度は芽。
 …そういや種がない。
 植物系の魔法って、種がなくても使えるのかな。そもそもそんな魔法あるのかな。
 ……うん。わからん。どうしよう。

「どうした。眉間にしわ寄せて」
「えーと」

 手のひらの上の土の塊が解けないように魔力に注意しながらギルマスを見た。
 こういうことを聞いてもいいのかよくわからないけど、ギルマスならいいか。

「この土の塊に」
「ああ」
「草とか花とかを咲かせようと思ったんですけど」
「ほう?」
「種があったほうがいいのかわからなくて」
「ああ。なるほどな」

 ギルマスは納得して、さっさとその辺の草を一摘み取って俺の土の中に埋めた。

「え」
「それを元にやってみろ」
「えーと、はい」

 なんと大雑把な。
 埋めた草を大きくしたり?……そもそも魔法がイメージ力なら、この草を元にして花も咲かせられるだろうか。
 草と、花。
 可愛い小さな花。
 色…薄桃色とかどうだろう。
 なんとなくたんぽぽみたいな形を思い浮かべながら魔力を流した。たんぽぽみたいなのは、それくらいしかまともに思い浮かばないからだよ。花なんて詳しくないし、俺っ。

「お」
「あ」
「へえ」

 ぽん…っと咲いた花は、形は小さいたんぽぽなのに薄いピンク色のものだった。
 ……うん。想像通りだけど、これなら黄色でいいな……。

「出た」
「出たな」

 ギルマスは俺の手の中を興味深そうに見てる。

「土に植物系…。お前一人いれば飢饉知らずになりそうだな」
「……魔力切れます。これ咲かせるのにも結構使ってます……」

 無駄が多いのか、さっきよりも疲労感が強い。
 仕方ない。
 土も植物も初めてだし、そもそもこの花はこの世界にもないものだと思う。

「魔力、切っていいぞ」
「はい」

 流していた魔力を止めたけど、土も花も消えなかった。
 なんか可愛い花だな。
 どうしようと思っていたら、ギルマスが土の塊ごと持っていって、練習場の片隅に植えてた。いいのかな、植えて。そこだけ、ほっこり空間になってる。

「まだいけそうか?」
「えーと、はい、まだ」
「よし」

 ギルマスが改めて俺たちの前に座った。
 あと出せそうな属性……光と闇?
 光……って、なんだろう。やっぱり『ライト』みたいな感じかな。光源、んー……、懐中電灯?

 そんな想像してたら、手の中に直径五センチくらいの球体がうかび出た。それがチカチカと明滅を繰り返し、一定の光を放つようになった。

「『光』か」
「はい。明るくすることくらいしか思いつかなくて。あと、精神干渉系はよくわかりません」
「ふむ」
「あとは……」

 光を消して、改めて手のひらに小さな球体を出した。
 それは黒よりも濃い闇のようなもの。
 …あれ。『闇』って、これほど暗いものだろうか。
 なんか変だ…って思ってる間に、それが徐々に大きくなっていく。
 なに、なんなのこれ。

『やめろ、アキラ』
「坊主、魔力を止めろっ」

 声が二重に聞こえた。

「え」

 何…って意識する前にクリスの右手が俺の目を覆った。お腹に回ったままの左手は、ぐい…って力を増す。
 そうしてるうちにわけのわからなかった『闇のようなもの』が消えた。

「なに……今の」
「禁忌魔法だ。俺も文献でしか見たことがない。魔物を喚ぶものだ」
「魔物……」
「闇属性に酷似しているが異なるものだ。闇魔法自体は禁忌魔法ではないからな」
「じゃ、闇って…どんな?」
「目眩ましや行動阻害のものだ。攻撃魔法として分類されてないからか、特殊性が強いのか、何故か使用者は少ないがな」

 じゃあ俺には闇の適正はない、ってことかな。
 闇を出そうとして、禁忌魔法発動とか意味がわからん。

 とりあえず、はぁ…って皆で息を抜いた。

「……禁忌魔法……って、こんなに簡単に出るもの……?」
「出るわけ無いだろ。はあ……焦ったわ。危うく処刑されるところだった」
「……そんなに駄目な魔法なんだ…。……てか、そうだよね。魔物、喚んじゃうんだもんね……。召喚魔法だよね……。……あー、そっか。だから女神様が止めたんだ」

 ギルマスの声と重なって聞こえた声、あれは女神様の声だ。

「女神様?」
「うん。『やめろ』って言われた」
「俺には『塞げ』だった」
「クリスにも聞こえたんだ?」
「ああ。その一言だけだったが」
「そーか。…興味深いが、詳しくはまた今度だな。魔力はどうだ?坊主」

 クリスに背を預けて目を閉じた。
 それほど無くなった感じはしないし、何よりクリスにくっついてるせいか、疲れも感じない。不思議。

「まだ、大丈夫」
「よし。じゃあ、もう一つの禁忌の方、やるか」

 ギルマスが悪い笑みを浮かべてた。



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