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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。
55 第○○回御前試合④
しおりを挟む「それで、この子、どうしよう…」
「……考えなしってことだな」
クリスが俺を膝に乗せたまま苦笑した。
しっかり謝った後、メリダさんに昼食の準備をお願いした。
ついでに、子猫が飲めそうなミルクもお願いした。
「瞳は凄い綺麗な赤なんだけどね。んー…、汚れてるのかな。小さいし弱ってるから、お風呂に入れると余計弱っちゃうかな…」
猫、飼ったことないからわからない。うん。
子猫にあげるものとして、ミルクでいいのかどうかもわからん。
うんうんうなっていたら、クリスは洗浄魔導具を取り出してさくっと起動させた。
「あ」
その手があったか…って思ったときには、子猫も俺の汚れも、綺麗になってた。
「すご……真っ白だ」
「だな」
灰褐色だったのは汚れだったらしい。
真っ白な柔らかい毛がふわふわしていて気持ちいい。
綺麗になったことに気づいたのか、魔力の動きに反応したのか、子猫は耳をピクピク動かしながら、首を上げて周りを見た。
「可愛い」
あ、これ、速攻で情が移るやつではなかろうか。
首の下のとこを人差し指でくすぐったら、気持ちよさそうに目を細めた。その顔がまた可愛らしい。
「クリス、どうしよう、可愛いよ…この子…!」
「……そうやって俺を見るアキも可愛いがな……」
「いや、俺じゃなくてっ、この子!この子が可愛い!!」
「そうだな」
クリス、呆れ気味に笑いながら肯定。
ほんとのことなのにさぁ。
「名前どうしようかな…」
「……アキ」
「何がいいと思う?」
「……駄目だな……」
「なにが?」
クリスはそれ以上何も言わなかった。
何が『駄目』なのか全然わからなかったんだけど、昼食の準備を終えて部屋に戻ってきたメリダさんに、子猫用の籠と、それに入れるクッションや毛布を頼んだから驚いた。
「え、飼うの?」
「……名前までつけたらもう手放せないだろ?」
「いいの?」
「……アキの好きにしていい。お前が魔力のない猫だと言うんだから、そうなんだろうし」
「ほんとに?」
何度も確認してしまった。
名前をつけたとしても、いい人がいたらお願いしようと思ってたのに。お城じゃ飼えないと思ってたし。
「今からでも駄目だと言おうか?」
笑ったクリスが俺の顎に指を添えてきた。
細めた目にちょっとドキドキする。
「言わないで」
「なら、もう確認するな。食事にしよう。早めに戻らないと」
「あ、うん」
そうだった。
子猫のことで頭いっぱいだったけど、今日は一日忙しい日だった。
「名前……名前……」
「アキ」
「ん」
口元にサンドイッチをあてられて、はむっと一口かじる。お肉美味しい。醤油とかほしいなぁ。照り焼き味食べたい…。
「お皿のほうが大きいですね…」
メリダさんがお皿と子猫を見比べて、困ったように手を頬に当てていた。
子猫用に持ってきてくれたミルクは、少し温められてた。
子猫をお皿の近くに移動させたとき、小さな声で鳴いた。
「んー…」
サンドイッチは、俺が一口食べたらクリスが食べて、飲み込んだあたりで二口目が運ばれる。
自分のことはすっかりクリスに任せきりになってしまった。
「ミルク…嫌かな…?」
お皿の中のミルクに指をつけて、指先を子猫の顔のところに持っていった。
子猫は赤い瞳を指と俺に向けて、確かめるように小さな舌で俺の指先を舐めた。
「おお」
ぺろぺろと、必死に舐めてくれる。
ちょっとざらついた舌が、擽ったい。
「ほら。アキも口開けて」
「んっ」
……も。
俺、子猫と一緒。
俺は指にミルクをつけて子猫にあげて、クリスは俺の口にサンドイッチを運んで。
……ん。
確かに同じ。
メリダさんは笑うし。
何回か俺の指を舐めてた子猫は、よろよろと立ち上がって、よたよたとお皿の方に歩いていった。
おお……と思いながら、じ…っと見守ってしまった。
小さめのお皿だけど、子猫は小さすぎて。届くかな。どうかな。
夢中になってたら、口の中になにか肉の小さな塊が入ってきて、とにかく咀嚼する。
子猫の前足がお皿にかかった。
あ……って思ったときには遅くて、子猫の体重でお皿が浮き上がり、中に入ってたミルクが溢れて子猫にかかった。
「あらあら」
「あー……」
子猫はとりあえずお皿に残ったミルクを舐め始めた。
メリダさんがテーブルの上を軽く拭いてくれた。
ミルクまみれだけど、またあとで綺麗にしてあげればいいのか…。
残ってた分がなくなったのか、子猫は顔を上げて「みぃ」って一声鳴いた。
……可愛い。やばい。可愛すぎるっ。
「クリス……っ、かわ」
「はいはい」
口を開けたら今度は果物だった。甘酸っぱくて美味しい。
食べながら、クリスのポーチから魔導具を取り出した。子猫のそばにおいて軽く魔力を流せば、子猫の濡れた毛がふわふわになる。
子猫はまた俺を見て、小さく鳴いた。
「おかわりかな」
「アキがな。ほら」
「ん」
果物がまた口の中に入ってきた。
子猫は俺をじっと見たまま。
んー、名前、どうしよう。
ふわふわの子猫。尻尾もふさふさ。さっきまでの死にそうなほど弱ってた感じはとりあえずないけど、獣医さん的な人に見てもらったほうがいいかな。
「んー……」
口元に、紅茶のカップが当てられて、無理のない程度に流し込まれる。俺の好きな甘い香りの。
キャラの名前とか、どうやってつけてたかなぁ。
アニメのキャラだったり、使い回しだったり、自分の名前もじったり……そんなんばっかだったな。
子猫……うーん……。
ふわふわの、真っ白な子猫。
指を近づけたら、すり寄ってきてくれた。
ほんとふわふわ。
目は綺麗な赤だけど。色からつけるなら、ルビーとか、ガーネット?……いや、紅ま……、いや、これは駄目だ。なんか駄目だ。紅蓮…ってイメージじゃない。大きくなったらどうなるかわからないけど、今のままの姿から連想するなら、赤い瞳より、真っ白なふわふわの毛のほうが、この子にはしっくりくる。
真っ白な、ふわふわの。
真っ白な。
…まっしろ、な。
「真白」
安直だけど。
俺が呟いたら、子猫の耳が動いた。
なんでだろう。
何かを期待してるような目に見える。
テーブルの上に掌を上にしておいたら、子猫が一生懸命よじ登ってきた。
子猫を手に乗っけて、別の方の指で喉の下を擽ってあげる。そしたら、気持ちよさそうに目を閉じた。
「ん。決めた。マシロ。この子の名前、マシロにする」
そう、口にしたとき。
……何故か少し魔力が抜けた。
子猫改めマシロは、耳をピクピクさせながら俺を見て、手に頭をこすりつけてきた。
*****
明日から通常ペースに戻ります^^
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