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第7章 魔法が使える世界で王子サマに溺愛されてます。
91 夜会②
しおりを挟むクリスは俺を見て、ふ…っと目元を緩ませる。
「いい顔だ」
「そう?」
次の人が前に出てくる。
春色のドレスに身を包んだご令嬢さんを伴った貴族な人。
ちらりと列の後ろに視線を向ければ、まだまだその列は長い。どんだけ挨拶したい人がいるのか。
結婚式に来てた人たちの挨拶はもう終わってる。国の主要な役職についている人も。
腰を抱いてるクリスの手が、さわさわと動き出す。腰を撫でられる。ちょっと下までおりて、そこも撫でられる。
なんでここでこんなおさわり。
目の前に次の人が来て挨拶を述べ始めたけど、クリスの目は俺を捉えたまま。
「……殿下?」
クリスの対応にようやく疑問を持ったらしい男性は、怪訝な声でクリスを呼ぶ。けどクリスはそれを無視して、俺の腰を抱いてない右手で俺の頬をなで始めた。
「アキ」
……うん。
役目は果たした、ってことでしょ?
俺たち、新婚なんだよ。
大事な夜に不機嫌になる挨拶を受け続ける理由はない、よね。
クリスが俺に口付ける。
周りはざわついた。
けど、いい。
頬をなでていた手が腰に回る。腰に回っていた手は、俺の右耳を弄り始めた。
大勢の人の前でキスとか、いつもの俺なら恥ずかしくてできないことだけど、なんでか今は平気だった。
むしろ、見てほしい。
クリスは俺のものだし、俺はクリスのものなんだから。誰かが入ってくる余地はないんだから。
流石に舌を絡めるようなことはしなかったけど、軽いリップ音を響かせながらのキスは結構長かった。
唇が離れるとき、俺のおそらく赤くなっているだろう唇を、クリスはぺろりと舐めていった。
クリスはそのまま、流れるような仕草で腰を軽く折り、俺の左手をとって指輪に口付ける。
「私と踊っていただけますか?」
「はい」
悪戯をするような笑み。
間髪入れず応えた俺を、手を引きながら広間の中央に連れ出す。
挨拶の順番待ちをしていた人たちは、唖然としてるようだったけれど、クリスは何一つ気にしていない様子で、俺の腰を抱きながら、スタンバイしていた楽団の人に視線を送り頷いた。
そして流れ出すゆったりとした音楽。
その流れに乗るように、クリスは動き出す。
足元を見なくても間違わない。
俺はただただクリスを見つめるだけ。
うまくできるかとか、心配や緊張をしていた自分が嘘みたいだ。最後の練習のときには散々だったのに。
「アキ」
「ん」
「綺麗だよ」
「…ん」
流れる音楽とクリスに身を委ねる。
周りの雑音は耳に入ってこない。
……好きな人とのダンスって、こんなに楽しくて心地良いものなんだ。
リアさんにたくさん感謝しなきゃ。
楽しいって思えるのも、心地いいって思えるのも、リアさんの特訓があってこそ、だから。
「アキ」
「…ん?」
「俺のことだけ考えて」
ゆったりした曲だから。
ステップも早くはなくて。
だから、クリスが俺の腰に回した腕に力を入れて、俺たちの体がピタリとくっついても、特に問題はなかった。
「クリスのこと考えてるよ」
リアさんに感謝…とは、思ったけど。
「そう?」
ステップを踏みながら、クリスが俺の頬にキスをした。
その唇が耳元まで移動して、耳朶をかしりと甘噛みされる。
「んっ」
「俺のことだけで頭の中一杯にして」
そんなふうに、耳に吹き込まれて。
体がゾクゾクして息を詰めた。
……もう、頭の中、クリスのことだけで一杯なのに、これ以上どうやって?
「愛してるよ、アキ」
「んっ」
耳が熱い。
もつれそうになった足だけど、クリスがそれを躱して次のステップに移る。
その動きでさらに体は密着したのだけど……。
「っ」
ごり…って、お互いの昂りが触れ合った。それから、クリスの軽い笑い声。
夜会が終わったら――――
「くりす」
舌がうまく回らない。
どうしよう。
体中、あちこち疼いて仕方ない。
「終わろうか」
「っ、んっ」
耳を舐められて、甘噛みされて。
そんな都合よく曲が終わるわけ…って思っていたら、クリスの声が聞こえたかのように音が消えていく。
曲が終わるのとほぼ同時に足を止め、僅かに離れ終わりのお辞儀をする。周りからは拍手の音が。
それに応えてあとは最後の挨拶…と思っていたら、クリスに腕を引かれさくっと抱き上げられた。
「くりす?」
ざわめく会場に視線を戻すことなく、クリスはさっさと歩き始め、会場から出た。
「く」
流石にこれは…と思ったけど、歩きながら深く深くキスをされて、意見を言うことはできなかった。
仕方ない。
そう思う。
体は熱いままだし、俺もクリスから離れたくないし。
「ん……ん……っ」
廊下を歩きながら、舌を絡める音を響かせる。
俺もクリスの首に両腕を回して抱きついてる。
はやく
はやく
「アキ……愛してる」
「ん……すき、好き……っ」
夜会が今どうなっているかとか。
俺に気にする余裕はない。
いつの間にか部屋まで戻っていて、とさりと体をベッドに降ろされた。
「クリス……っ」
体にかかる重みが愛しく感じる。
舌を絡めて、上顎を擽られる。
そのたびに腰はビクビク震えて、クリスの体に押し付けてしまう。
お互いの昂りを感じる。
熱い。
熱くて、熱くて、疼いてどうしようもない。
喉の奥に溜まった唾液を飲み込んだとき、クリスの手がするりと俺の固くなったところを撫でた。
たったそれだけの刺激で、下着の中が湿り気を増す。
抱いてほしい。
クリスの熱を、体の奥の奥で感じたい。
「くりす……くりす」
無意識に腰をこすりつけた。
もう我慢しないんだよね?
抱いてくれるんだよね?
「アキ」
クリスは一度唇を離すと、軽いリップ音をさせながら触れるだけのキスをした。
すり…って頬を撫でられて、クリスがベッドを降りていく。
「…クリス?」
クリスはクローゼットからマントみたいな羽織物を取り出して、俺の頭からかぶせた。
「行こうか」
「へ?」
間抜けな返事をした俺は、笑いっぱなしのクリスにマントごと抱き上げられた。
*****
残りのハンガーボックス3個をたたむことができました……!!
………は、さておき。
あと数話で本編完結です^^
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