【完結】魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜婚約編〜

ゆずは

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閑話 ⑤

ああ……尊い……!!③ ◆セシリア

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 妄想までしていたのに、結局お二人の露天風呂シーンを見ることは叶わなかった。
 確かに何時でもいい…と伝えたのは私だけど、まさかの夜中に入浴されるなんて。
 お二人が露天風呂に入ったら私にそれが伝わるように侍女の手配をしていたというのに、露天風呂近くに配置した侍女の交代の隙をつかれた上に、「入浴中」という伝言は、私が熟睡していたが故に伝えられなかった。
 そうね。熟睡してる令嬢を起こしてまで伝えることではないものね。侍女たちは私の目的に気づいてないだろうし。
 溜息を隠しながら、少し早めの朝食をとる。
 移動中は乗馬が楽になる女性用のトラウザーズを着用する。
 まだ少し寝ぼけているミナに行ってきますのキスをして、大きなトランク三つを運んでもらいながら、お二人の部屋を訪れた。

「はい」

 返事とともに開けられるドア。
 開けてくれたのはやはりザイル様。
 私と、荷物を見て、貴族らしい笑みをみせてくれる。

「外套も羽織ってくださいね、セシリア様。では向かいましょう」
「はい」

 そうして、オットー様も部屋から出てくる。

「荷物はこれで全てですか?」
「はい」

 こんな大きなトランクは馬には乗せられない。
 どうするのだろう…と思っていたら、ザイル様が腰からポーチを外して口を開けた。オットー様はトランクを一つ軽々と持ち上げて、角をポーチの口に触れさせた――――途端。

「え」

 荷物が、消えた。
 これには荷物運びをしてくれた侍従たちも唖然としてしまったけど、もうそれは仕方がないことね。私でさえ驚いたのだから。
 でもすぐに、これがマジックバッグになってることに思い至り、こんな非常識なことをするのはアキラさんだけということにも気づいてつい笑ってしまった。
 私の小さな手荷物も含めて、全てその小さなポーチの中に納まってしまい、またザイル様の腰に巻かれた。

「では行きましょう」

 何事もなかったかのように、オットー様が促す。
 侍従たちには下がってもらった。

「便利ですね」
「ええ。本当にそう思います。天幕も入ってますよ」
「まあ」

 売ったら一生食べていけるだけの額にはなるはず。
 きっとそんなことなにも考えずに、「いいよ」の一言で作ってしまうんだろうな…アキラさんは。

「予想外のことばかりなので」
「そうですね」
「……お戻りになったときも、魔物に襲われていて」
「魔物に…」
「酷いですよね。殿下もオットーも、私には一言も教えてくれないんですから。二人はお戻りになることを知っていたのに」

 少し拗ねたような口調に、ちらりとオットー様がザイル様を見た。
 その目はあれですね。「悪かった」みたいな。きっと、ザイル様に言えなかったしっかりとした理由があったとは思いますけど。でもそれも聞いた上での愚痴だと思っておきますね。
 外に出るとお父様が待ち構えていた。
 オットー様は軽く会釈だけして、すぐに厩舎に向かってしまう。

「ご挨拶もせず申し訳ありません。ご令嬢は必ずお守り致しますので、ご安心ください」

 ザイル様はきっちりと貴族の礼をした。
 お父様もすぐに礼を返して、私は少し安堵する。

「娘をよろしくお願い致します」
「はい」

 今回は余計な波風を立てずにすみそうね。よかった。





 私はザイル様の愛馬に乗せられた。
 鞍の痛みは我慢するしかないと思っていたけれど、予想に反して私が座る位置には弾力のあるクッションが置かれていた。
 ザイル様から、アキラさんが乗馬するときにも使っている物と聞かされて、とても納得してしまった。
 私は横向きに、ザイル様の前に座る。申し訳ないと思いつつ、安定させるために体重をザイル様にほとんど預ける形になる上に、腕にしがみつくという姿勢になってしまう。
 これは仕方ないと思うの。
 いくらオットー様が短く舌打ちしたとしても、落馬しては元も子もないのだから。

 この世界、女性が乗馬することはほとんどない。
 女性騎士は本当に僅かしかいない。
 だから、いつもと違う景色を楽しみにしていたのに、そんな期待は早々に打ち砕かれた。
 多分、これは、乗馬じゃない。少なくても、私が想像していたような乗馬じゃない。
 もうこれは、ジェットコースターだわ。メリーゴーランドの馬に乗って、上下に揺らされながらジェットコースターのコースをめぐる感じ。
 当然、景色を見ている余裕はなく。
 耳が痛い。
 風が冷たい。
 息が苦しい。

 うわぁ、まじか、死ぬ、これは死ぬ…!!

 って心の中で叫んでいたら、頭からマントをかけられて、裂けるような風の音と耳鳴りが止んで、呼吸も楽になった。

「すみません」

 一言だけ断って、ザイル様の腕が私の肩を抱く。
 それに促されて私も背中にしがみついた。
 ……なんて優しいんだろう。走り方は全然優しくないけれど。
 死にそうになっていたのに、あっさりと復活した。そこら辺の令嬢なら即オチした気がする。
 けど、びしばしと視線を感じるのよ。とてもとても、刺すような視線をね……!!こんな殺されるような視線を受けながら恋に落ちるような気分にはなれないわ。








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すみません、あと一話…≻≺
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