魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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新婚旅行は海辺の街へ

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 昼食は部屋で食べた。
 それから、リシャルにある氷室に氷を満たしてほしいと要望が出ているとクリスが教えてくれた。
 なので、制服に着替えると、マシロが「指定席です!」って勢いで俺の左肩に座った。マシロがそこに座ると、ほんとに動かないからなぁ。危ないことはないな…ってことで、そのまま部屋を出た。
 いつもの護衛コンビに加えて、フランツさんも部屋の前で待っていた。
 いつから待ってたんだろう。声、かけてくれればよかったのに。
 それに、なんだか、オットーさんとザイルさんの雰囲気が怖い。ニコニコ笑ってるのはいつも通りなのに、なんか怖い。なんでだろう。

 フランツさんに案内される形で、屋敷内の氷室にむかった。
 そこは大きな貯蔵庫にもなっていて、ついつい冷蔵庫をどうやって作ったらいいか考えてしまった。電気はないから、電気の代わりの魔石……とか考えこんでしまって、クリスから苦笑された。

「アキの魔力で作られた氷は溶けにくく割れにくいんだ。貯蔵用には丁度いい」
「丁度いいけど、飲み物に入れたりするには、ちょっと調整した方がいいってことだよねぇ。…あれ、でも、今まで飲み物にいれたことないよね?魔力で作った氷って、食べたり飲んだりしても体に害はないのかな??」

 基本的なところを考えてなかった。
 冷凍庫はないから、氷は冬の間に作ったものを氷室で保管する。
 それだって無限じゃないから、夏の間になくなってしまう。
 だから、飲み物にいれるとか、かき氷だとか、そういうものには使われない。使われているのを見たことがない。

「口にしても問題はないだろう。…飲み物にいれるのか」
「うん。冷たくて美味しいよ?葡萄のジュースにいれたら、夏場なんてすごくいいと思う」

 クリスに加えて、フランツさんまでふむ…と考え始めてしまった。

「とりあえず、ここに氷を出せばいい??」
「ああ」
「奥方様、可能であれば、あちらには塊でお願いできますか?こちらの樽には、こぶし大の氷があるとよいのですが…」
「ああ、はい」

 それくらいなら、特に問題ないかなぁ。
 でも、棚とかに並べるのは無理ぽいから、藁のような敷物の上に、四角い大きめの塊の出してみる。

「これくらいの大きさでいいのかな」
「すごい……十分です。奥方様」

 クリスも、護衛コンビも驚きはしなかった。だって、これなら簡単なんだよ。口のサイズを考えなくていいんだから。
 でも、フランツさんからしてみれば、俺がちょっと指を振っただけで氷の塊が出たわけだから、そりゃ驚くか。目を丸くしていた侍従?の人も、はっと我に返ったように氷の塊を運んでくれた。
 その作業を繰り返すこと三十分くらいかな。氷室が氷で満たされた。ちょっとやりすぎた気もするけど、ないよりはいいか。
 次はリシャルの町中の氷室に移動する。
 町中の氷室は全部で五か所。
 移動は馬車でしたけれど、馬車に乗って早々に、クリスからキスをされた。
 腰を抱かれて、体が重なって。触れ合わせた唇の間から、舌が入ってきて唾液を流される。
 もし、魔力体力ゲージが見えたとしたら、少し減っていたバーが一気に上限まで回復して、更に飛び出る感じ。
 氷をだしたくらいではあまり減らない俺の魔力だけど、消費した分を上回るくらい、クリスから補充された。

 町中の氷室には、会ったことのない漁師さんとかもいた。みんな厳つい顔してたんだけど、俺が指振りで氷を出していくと、面白いくらい目を真ん丸に見開いていて、滅茶苦茶感謝された。役にたてるならすごく嬉しい。
 漁師さんの街だから、やっぱり氷とかは大事だよね。俺の氷、長持ちするらしいから、少しは輸送とかに役にたてるかな。

「奥方様の魔法は本当に素晴らしいですね…」
「んー、でも、冒険者の方々の中にも氷属性の魔法が使える人がいるかもなので、冒険者宿に依頼を出してみてもいいかもですよ?報酬があれば冒険者の人たちもしっかりやってくれると思うし…。そうだよね?」
「ああ。そうだな。報酬を踏み倒したり減額しなければ、ここの宿の店主も嫌な顔はしないだろう」
「…冒険者の魔法師の方々も、奥方様と同じことができるのですか?」
「全く同じことはできないかもしれないな。魔法は攻撃向きに使うことがほとんどだ。それでも、熟練者であればできないことではない」
「熟練者……。それではほぼできないと言っているようなものですね」

 フランツさん、苦笑。
 うん、確かにクリスのその口ぶりではちょっと無理っぽい気がしてきた。

「一応、依頼は出してみます。もしかしたら、それをきっかけにやってみようという魔法師の方がいるかもしれませんし」
「うん、それがいいと思う」

 何事も前向きに、だね!

「フランツさん、ほんとここの領地のことよく見てるっていうか、考えてるよね」

 リアさんといい、俺の貴族への見方がすごく変わっていく気がする。
 俺は本気で感心して言葉にしたんだけど、クリスは無言だし、フランツさんは苦笑ばかり。

「ゼバルト伯爵領は妹のニノンが継ぐことが決まってますので、私はその補佐として盛り上げていく予定ですよ」
「え。そうなの?」
「ええ。…もともと、私は男性しか愛せないですし、後継を育てることが難しいですからね。ニノンにはそれも踏まえて領地経営に関する教育もされておりますから」
「そう……なんだ?」

 いきなりの告白にちょっと驚いた。
 でも、最初の話し合いのときだって、同席してたのはフランツさんだったのに。
 …伯爵家にも色々な事情があるってことなのか。
 ん。俺が首を突っ込むことじゃないって理解した。余計なことは考えないでおこう。そうしよう。



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