魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

文字の大きさ
59 / 216
エルフの隠れ里

しおりを挟む



 翌日。
 俺の服だというのを用意されたけど、濃紺の軍服ぽい服だった。
 手にとってぴら…って広げてみたけど、違和感半端ない。しかも、その服の下に着るシャツは、やたらフリルやレースでひらひらしてる。
 ……まあ、それよりもなによりも、昨夜風呂のときに用意されていた下着と自分がつけてた下着を見て叫びそうになったけど。俺、なんであんなえっちぃ下着つけてるの。総レースの白のスケスケ紐パンなんて、男の俺がつけてたって需要がないでしょ!?
 でも、もっと嫌だったのは、それが妙にしっくりくることだった。……俺、どうなってんの。純然たるトランクス派だったのに。

「意味分かんない……」

 とりあえずこれしかないから着替えよう。いつまでもホテル仕様のシャツワンピは落ち着かないし。
 シャツに腕を通して、ズボンも穿いて、靴下も履いて、ジャケットを着込んだけれど、すごくぴったり。動きやすいし、軽いし、濃紺の生地に銀色の糸がいい。
 鏡を見ながら左の手首と右の耳に触れた。
 なんだろう。なんか足りない。
 左手を眺めていても、もっと足りない気がする。
 そういえば装飾品…って言われたっけ。
 はて…と思いながらテーブルの上に置かれていたやたら豪華な箱を開けたら、これでもかって色々入ってた。

 片耳だけのイヤリング、不思議な色合いの羽根の飾り、珊瑚と真珠?の飾り、ブレスレット、指輪、それから見慣れない腕時計。
 腕時計を手に持って、こんなの持ってたかな?と首を傾げてしまった。
 それにしたって、装飾品多すぎではないだろうか。
 それに、ほとんどのものが、黒と青っぽい色の石が使われてる。宝石の名前なんて知らないよ。
 指輪を恐る恐る持ち上げて内側を見たら、『C to A』って書かれてるのがわかった。アルファベット……こっちの世界でも使われてるの?表側には、小さめの黒い石と、その両サイドにこれまた青っぽい石があしらわれてて。

「………」

 なんなんだろ……と思いつつ、指輪を置く気になれなくて、なんとなく、なんとなく、左の薬指にはめたら、すごくぴったりだった。
 ……俺、もしかして、すごく大事なこと、忘れてるのかな。
 この指輪見てるだけで、胸の奥がキュッて痛くなる。

「あーきー?」
「んー?」

 俺の身支度をベッドの上で待っていたましろ。
 俺が左手につけた指輪を見て、大きな耳がぷるぷるして、機嫌良さそうに三本の尻尾が揺れた。

「あーき、きらきら」
「ん?これ?」
「んー!きらきら!」

 まだ短い両手を上に上げて、『きらきら』って表現するように手を動かすましろ。可愛くて死にそう。

「ぅ、りーす、いーらい、け、ろ、きらきら、ぃれい!」
「うーん?」
「きらきら、あき、しゅき!」
「ふふ」
「あき、きらきら?」
「俺は別にきらきらしてないなぁ」
「うーん!あき、きらきら!」
「俺がきらきら?」
「うん!」

 ましろがベッドの上から飛び降りて、身振り手振りで教えてくれた。……けど、まあ……、中々俺に伝ってこない。

「ぅ、りす、ね」
「ぅりす」
「むー!」

 これ、ましろの名前を当てたときと一緒だ。じゃあ、『うりす』は名前ってことか。

「きゅ、ぃーす」
「きゅ??」
「うー!きゅ……、ぅ、くぅ、く!」
「く。………くりす?」
「うん!まーろ、いーらい!!」

 俺が名前をあてたのは嬉しいらしい。
 けど、俺がその名前を呼ぶのはどうにも嫌らしい。…表情がね。口をとがらすようにするから。
 いーらい……って、なんだ。
 くりす、いーらい……………あ、もしかして。

「いーらい……は、きらい?」
「う!!」
「ましろは、くりすが、きらい?」
「う!!!」

 大正解、らしい。
 にこにこと俺に抱きついてくる。
 ……こんなに可愛いましろから嫌われるくりすって、何したの、一体。

「ぅりーす、あき、じーめ!め!なの!」
「じーめ……」

 新しい単語が次から次へと出てくるけど、解読するのは難しいなぁ。

「あーき、ぅーぃす、っしょ、めーんのまーれ、いー、て」

 解読不能。
 ましろがまた床の上でバタバタし始めたのを、微笑ましく見るしかない。
 ましろは床の上で膝をついて、胸の前で手を合わせてた。なんだかそれは、何かに祈ってるような姿にも見える。

「きらきら」
「うん?」
「まーろ、きゃーで、まーろも、きらきら」

 尻尾がえらい速さで振り回されてた。
 ましろが『きゃー』でましろもきらきら。きゃー…って、悲鳴じゃないよね。昨日喜んでるときにも使ってたから。……多分、すごく嬉しくてましろもきらきらした、ってこと……かな。
 なんか、お遊戯会を見てるような心境になってると、ましろはまた俺のところに来て、左手を触り始めた。

「あーき、これ」
「指輪?」
「う」

 また、祈るようなポーズを取ったましろが、次には俺の左手をぎゅっと握って、指に何かをつけるような仕草をする。
 それでようやく、ましろが何を伝えたかったのか、少しわかった気がした。

「もしかして、結婚式?」
「う!」
「俺の?」
「あーきの!」
「誰と?」
「ぅりす!まーろ、いーらい!!けろ!!」

 くりすと俺の結婚式。
 アルフィオさんの言っていた『俺の旦那様』がくりす、っていう人、ってこと。
 何度か「くりす」って心のなかで呟いて、指輪をじっと見つめた。
 なぜだろう。
 男の人、って思ったときには「ありえない!」って思っていたのに、「くりす」って思ったら、全然……そんな気持ちにならなかった。










*****
「ましろは、くりすのこときらいだけど!」
と、一生懸命伝えようとするマシロ。
……可愛い(*´艸`*)
しおりを挟む
感想 290

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。

竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。 男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。 家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。 前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。 前世の記憶チートで優秀なことも。 だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。 愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~

TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】 公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。 しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!? 王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。 これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。 ※別で投稿している作品、 『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。 設定と後半の展開が少し変わっています。 ※後日譚を追加しました。 後日譚① レイチェル視点→メルド視点 後日譚② 王弟→王→ケイ視点 後日譚③ メルド視点

私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。  それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。  婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。  その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。  これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。

処理中です...