魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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エルフの隠れ里

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 ふわふわのましろを抱っこして、案内されるままに食堂に向かった。
 そこにはお父上がニコニコしながら待っていて、俺の椅子の隣には、子供用の足の長い椅子も用意されていた。なんとイタレリツクセリ。
 俺をここに攫ってきたという張本人の姿はなかった。
 というわけで、俺はお父上との三人でお昼ごはんをいただく。
 昨日からわかったことだけど、エルフさんの食事はデザートまでも美味しい。ほんとに美味しい。悲しいのは俺自身の体で、こんなに美味しいのに少ししか入らない。なぜだ。育ち盛りの高校生男子なのに……!

「体の調子はどうだい?」
「大丈夫です」

 不調があるわけじゃない。だから、そう答えれば、お父上さんはにこにことうなずいてくれた。
 このお屋敷はアルフィオさんの持ち物らしく、お父上のお屋敷は別の場所にあるらしい。けど、息子がやらかしたため、昨日からこっちの屋敷に泊まってるとのことだった。

 ましろに用意されていた取手が二つついたマグカップのようなものには、ミルクが入れられてた。
 ましろは両手でそれを持ち上げて、んく、んく、って飲んでる。口を離したら定番のミルクひげもできててやっぱり可愛い。

「あーき、んもー」
「ん」

 切って盛り付けられてる果物に手を伸ばすましろに、小さな一欠を口に運んであげる。
 警戒も何もなく、かぱっと口を開ける様子もやっぱり可愛い。

「その聖獣の子は随分と君のことが好きなようだね。魔力のつながりができているのか…。もしかして、名前を与えたのかな?」
「え、と…?」

 なんのこっちゃと思ってしまって首を傾げたら、お父上は苦笑して「ごめんね」と言った。

「あの……、もしかして、俺、記憶喪失とかですか?」

 なんかもやっとするし。
 指輪をつけたらすごくホッとしたのに、ましろが教えてくれた結婚式のことも思い出せないし。
 ……くりす、っていう、俺の旦那さまらしい人のことも、思い出せないし。

「アルフィオが使った眠りの精霊魔法の副作用みたいなものだと思うんだけど、記憶喪失……記憶障害が起きているみたいだね。大丈夫。そのうちもとに戻るよ」
「はぁ…」

 お父上、中々に楽観的だった。
 そして俺も。
 戻るならまぁいっか、って、中々に楽観的だった。

「アルフィオが君に興味を持つのもわかる気はするんだ。何分この世界では自然と黒髪黒瞳の子が生まれることはないからね。異界から紛れ込んだ者が子を成したとしても、その子に黒は受け継がれない」
「……特別な色なんですか?」

 異世界転移物とかだとよく聞く設定だよね。チート能力持ちで、平民には絶対間違われない。異端か、救世主か、いずれかだ。

「特別な色だね。神がそう決めたから」
「神様……」
「そう。この世界を作った神。全てを放棄した愚かな神だよ」
「放棄……?」
「今この世界は女神の加護によって成り立っているんだ。あのままでは、世界は滅んでいたから」
「……あんまり平和じゃないんですね?」
「当時は、そうだね。地上に魔物が溢れて、畑の恵みもごくわずか。人々は手を取り合うこともせず争いばかり。私達エルフは自分たちを守るために森に結界を張って隠れ住むようになった。言ったかな?ここはエルスターの南の森の里だけど、他の地域にも里はあるし、他の国にもある。私達はこの二千年の間、人族に知られないように交流を続けてきたんだ」
「……二千年……?」

 ………お父上、一体何歳?
 確かにエルフは長寿、っていう設定はどのゲームにもあったと思うけど。

「エルフの寿命はまちまちでね。それでも千年は生きるかな。アルフィオはまだ二百歳で経験の少ない若造だからこその愚行だったわけだけど、それが許される理由にはならないからね」

 アルフィオさん、二百歳!!めちゃくちゃおじいさんでした!!なのに、『若造』と……!!寿命が千年と考えれば、確かにまだまだ若造……なのかもしれないけど、それでも普通の『若造』の十倍は色んな経験を積んでる人ってことだよ。すごいな……エルフの人……!!!

「異世界から来た子と話すのは数百年ぶりだから、色々聞きたいことがあったら遠慮なく聞いてくれていいよ。話してるうちに思い出すこともあると思うからね」
「は……はい……!」

 お父上……族長さん、すごく懐の広い方だった……!!

 このエルフの隠れ里には、今五百人前後のエルフさんがいるらしい。とても長寿なエルフさんだから、その弊害のように子供ができにくいんだって。性欲があまり強くなかったり、精子が、性行為自体に興味がなかったり……と言われたが。お年頃の高校生男子になんてことを言うのか。
 でもお父上には六人の息子娘さんがいるらしい。わぁ、すごいね。お父上…。ちなみにアルフィオさんが六人目なんだそうだ。
 お父上とアルフィオさんが言っていた『番』というのは、エルフさんにとっての結婚相手だそうだ。生涯でただ一人の相手なんだって。問答無用で一目惚れするらしいから、大変だね……エルフさん。一目惚れするのに色々しにくいってのも大変だね……。
 番………番かぁ。
 俺のこと、『王子の番』って言ってたから、俺の旦那様というくりすって人は、王子様なのか。……実感が、わかない。

 話は全然尽きなくて、昼食後、日当たりのいい部屋でソファでくつろぎながら話を続けた。
 ましろが俺の膝の上で寝始めて、俺もなんか眠くなってきたなぁって頃に、エルフさんの例のとても短いスカートの女の人がお父上を呼びに来た。

「到着したらしいね。行こうか」
「え」

 唐突な言葉に、なんのことかわからなかった。
 目をこすりながら起き上がったましろの手を握って、二人でお父上のあとについていく。
 玄関ホールみたいなところに出たとき、俺が着てる服と同じ服を着た人が四人いて。
 その中の銀髪にところどころ青色の差し色が入ってるすごいイケメンな人と、目が合った。



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