魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

文字の大きさ
98 / 216
マシロが養女(仮)になりました

21

しおりを挟む
*すみません。更新がうまくいかなくて、再度掲載直しました><








 当然だけど、マシロが人ではない、というところは完全に隠された。
 一応の理由としては、俺によく似た孤児を見つけて、俺たち(主にクリス)に情が湧いたから娘として引き取った……ってことにするらしい。
 名前は……どうしようもない。
 子猫がマシロって名前だってことを知ってるのは一部の人だけだから、なんとかなるだろ…っていうクリスの楽観視に俺も乗った。考えるのが面倒だったとは口が裂けても言わない。
 今後のことも考えて、魔水晶に見えるものを作るか作らないか…って話になったけど、俺自身も魔水晶は持ってないから、おいおいってことになった。

 第二王子が養女を迎えたことを周知するのは、春の三の月の一の日。
 この日、ティーナさんご懐妊の発表もあるから、一緒にしてしまえ、ってことらしい。
 お披露目も一緒。
 ティーナさんは身重だから、パーティーとかではなくて、明るいサロンのような部屋で、昼間に行われる挨拶だけのお披露目会だ。

「……と、いうわけで。マシロ」
「あぃ!」

 おはよーのちゅうを覚えた日の翌日。

「これからティーナさんと会うからね?これ以上驚かせたらだめだよ?」
「う!」

 旅行のお土産はお兄さんを通して渡してもらった。
 ティーナさんは俺たちが『養女を迎えた』と聞いて驚いていたらしい。でも、その養女がマシロだということは伝わっていない、はず。

「義姉上は大丈夫だろ」
「ほんとに…?」
「ああ」

 何かあっても困るので、クリスとお兄さんを交えたお茶会だ。
 陛下も何故か来たがったけど、クリスとお兄さんが却下してた。
 事情も事情なので、給仕にはメリダさんがついてくれて、お茶会の会場である庭園の中にはオットーさんとザイルさんが護衛に立つ。お兄さんたちの護衛である近衛騎士さんたちは、庭園の外での警備だ。なんかごめんなさい。

 マシロの小さな手を握る。
 今日は膝くらいの丈の薄いピンク色のワンピース。腰にまかれてるのは赤いリボン。瞳色とあっていて可愛い。
 ふわふわの白い髪はハーフアップで、青色のレースで縁取られた黒色のリボンを結んでいる。
 色的にどうなんだろう……とは思ったけど、そんなにチグハグ感もないからまあいいか。
 俺の右手とクリスの左手を握るマシロは、すごく機嫌がいい。良すぎて隠してた尻尾がスカートの裾からにゅっと出てきてちょっと慌てた。

「マシロ、尻尾っ」
「はわ」

 ひょこひょこしてた尻尾が消えた。
 尻尾と耳は可愛いんだけどね……。獣人がいないこの世界じゃ目立ちすぎるし明らかに人外だとわかってしまうから。
 後ろではザイルさんが笑ってる。
 俺たちの前を歩いてるオットーさんは、ちらっと振り返って口元だけに笑みを浮かべてすぐに前を向いた。

 お茶会はいつもの庭園だ。俺が大好きな場所だから。
 天気がよくてよかった。
 庭園に続く扉前にはもう騎士さんが立っていて、俺たちに気づくと、敬礼してから扉を開けてくれた。
 春の柔らかい色の花が咲く庭園の中の一角に、お兄さんとティーナさんがいた。テーブルではもうメリダさんがお茶のポットとかを用意してる。

「アキラさん!」

 最初に気づいたのはティーナさん。
 お腹を締め付けないドレスに、ゆったり結ばれた髪。うん。元気そう。

「ティーナさん!」

 左手で手をふる。
 今日は抱きついたりしないよ。
 四人で挨拶なんかを終わらせる。正式なお茶会ではなくて、報告会みたいなノリだから、主催とかはないんだよね。
 マシロはなんとなく俺の足にしがみついてる。ティーナさんとは何度も会ってるけど、幼児姿では初めてだから、マシロ的に大人しくしようと決めたらしい。

「その子が養女の?」
「うん。……マシロ、おいで」
「マシロ?」

 ティーナさんが驚いてお兄さんやクリスを何度も見る。

「マシロ、ご挨拶。練習したよね?」
「あぃ」

 マシロは俺の足から手を離すと、スカートの裾をちょこんともって、ぺこっと頭を下げた。色々中途半端だけど、これがまた可愛らしくて好評だ……(主に陛下から)。

「ましろ、れす。よしく、おぇがいしぁしゅ」
「ん、よくできました」
「う!」

 一日頑張った挨拶。
 抱き上げて頬をスリスリしたら、きゃあきゃあと喜ぶ。

「マシロ……って」
「うん。あのね、ティーナさん」

 マシロなんだよね。

 詳しい説明とかはしない。
 負担をかけないためにと、ティーナさんには俺が拐われたこととか知らされてないし。
 だから、結論だけ。

「……まぁ」

 ティーナさんは口元を手で抑えてやっぱり驚いた顔をしていたけど、すぐにふふって笑ってくれた。

「そうなの。だからこんなにアキラさんに似てるのね。マシロちゃん、ご挨拶してなかったわ。私はティーナよ。よろしくお願いします」

 スカートをつまみ上げて、軽く膝を折る完璧で綺麗な挨拶。
 マシロが見入っているから地面におろしたら、ティーナさんの真似をしようとしたんだけど…、わからなくなったらしくて首を傾げてた。
 可愛くてたまらないよ……マシロ。

「可愛い、マシロちゃん」
「かぁい?」
「ええ。とっても可愛い。……このドレス、もしかして、私の?」
「うん。宰相さん……お父さんが、ティーナさんが着てたものを持ってきてくれて」
「そうなの。お父様ったら……私に一言伝えてくれてもいいのに。抜け駆けなんて狡いと思わない?」
「父上も同じことを言ってたよ」

 そんな和気藹々な雰囲気で、すんなりと受け入れられたマシロ。
 嬉しいらしくてティーナさんのスカートの裾をぎゅっと握ってる。

「さあさ、皆様、お茶にいたしましょう」

 メリダさんの声に、俺たちは椅子に座った。立ちっぱなしはティーナさんにも悪いよね。
 マシロはクリスの膝の上に座ったけど、じ…っとティーナさんのお腹を見てる。…魔力を持った子供がいること、わかるんだろうか。

「マシロ?」
「あのね」
「うん」

 クリスの膝から俺の膝の上に移動してきたマシロ。

「ましろね、おなじのがね」
「う、ん?」
「あか、なって、うごかなく、なって」
「マシロ」
「ちぁぅひと、ぃたいことして」

 何を思い出して、何を感じているのか。
 はっきりとわからなくても、マシロの表情を見てたらわかる気がした。

「お前の母親がお前を守ってたんだ」
「は、は?」
「そう。守られていたから、お前はアキと会うことができたんだろ?」
「は、は」

 マシロはクリスの言葉に頷いた。
 俺の膝から降りて、ティーナさんのところに向かう。

「はは」

 ティーナさんを見上げて。
 それから、ティーナさんのお腹に手を当てて。

「おなじ?だいじ?」

 って、ティーナさんに聞いた。

「ええ。とっても大事。マシロちゃんのお母さんもマシロちゃんを守ってくれたのね。この子もマシロちゃんと同じ。私が守るし、とっても大事な子なの」
「だいじ」
「ええ。だから、生まれたら、マシロちゃん遊んでくれる?」
「う!」
「ふふ。嬉しい」
「ましろも、ぅれし!」

 多分、人に囚われたときのことを話してたマシロ。ティーナさんのお腹に子供がいることがわかって、自分に重なったのかな。守らなきゃ!って気持ちが伝わってくる。

 ティーナさんのお腹に手を当てていたマシロから、ふわりと優しいものが溢れた。
 それは魔力とは違っていて、多分精霊としての力。
 いつの間にかスカートの裾から尻尾が見えていて、それを何度も揺らしてる。

「だいじ」

 溢れたものは光になって、ティーナさんに降り注ぐ。
 それはまるで、神官の祝福の光のようだった。













*****
精霊の祝福です
しおりを挟む
感想 290

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。

竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。 男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。 家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。 前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。 前世の記憶チートで優秀なことも。 だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。 愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。

【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~

TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】 公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。 しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!? 王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。 これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。 ※別で投稿している作品、 『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。 設定と後半の展開が少し変わっています。 ※後日譚を追加しました。 後日譚① レイチェル視点→メルド視点 後日譚② 王弟→王→ケイ視点 後日譚③ メルド視点

処理中です...