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俺が魔法師である意味
17 魔法ならいくらでも
しおりを挟む今回の訪問の目的はお土産を渡すこと。
だから、目的は完了したわけなんだけど、ここに来るにはかなりの距離があるから、なんなら周辺の調査はしてしまおう…ってことで、俺の知らないところでクリスとリアさんのお父さんが話し合ってたらしい。
クリス隊のみんなは昨日到着後から慌ただしく動いてるのに、俺だけのんびりしてて何だか申し訳ない。しかも、二日目なんて昼近くまで寝過ごす始末だし…。
起きてすぐはクリスとマシロに癒された。
クリスは何してても格好いいし、マシロは何してても可愛い。
俺が何にもしてないなぁって気づいたのは、お昼ご飯を三人で終わらせてからだった。
ご機嫌なマシロを膝の上に抱えて遊ばせていた時に、オットーさんが報告書を持ってきたから。
ドアのところで報告書に目を通してオットーさんに指示をあれこれ出したクリスを見て、「あ、仕事してる」ってわかったんだよ……。そうだよね。遊び気分なのは俺だけみたいなもんだよね。
「あき?」
俺の表情が変わったからか、マシロが心配して俺の頬に手をあててくる。
「大丈夫」
「んと?」
「うん、ほんと」
笑ったけど、マシロの手は離れていかない。
「おはな、たべぅ?」
「え」
「あき、にこなる」
そういうと、すぐに自分のバッグの中から花びらを出してきて、俺の口に押し当ててきた。
「マシロ」
「ぁむ」
「あ…」
クリスも食べてたし。
それでマシロが笑うならいっか…って、花びらを口に入れた。
なんだか甘く感じる。それに、体の中もポカポカしてくるみたいだ。
「…あ、これ」
クリスの魔力を貰った時と似てる。なんか落ち着く。
「おいち?」
「うん。甘くておいしいね」
「う!」
魔力とか色々を含んでいるらしい花びら、確かに食べても害はなさそう。
この花って本当に何なんだろう。
女神様の力と俺の魔力で咲いた花、らしいけど。それで、精霊の力もあるんだったっけ。そう聞くととんでもなくレアなアイテムに聞こえるのに、マシロのおやつになってる現状……まあいいのか。
「アキ」
「ん」
クリスに呼ばれた。
おいでって手を振られるから、マシロを下ろしてクリスの傍に行く。
…部屋に入ってもらえばいいのに。こんなところで立ったまま打ち合わせしなくても。
そんなことも思いつつオットーさんを見たら、にこっと微笑まれた。
マシロは俺の後ろをついてきて、俺が立ち止まると俺の足にしがみついていた。
「えと……おはようございます……?」
「ええ、おはようございます、アキラさん」
厭味とかそんなものじゃなくて、オットーさんの言葉も表情もいつも優しい。
「俺…何もしてなくてごめんなさい…」
呼ばれた理由がわからなくてそう言ったら、オットーさんは今度は困ったように笑った。
「気にされなくていいんですよ」
「でも、俺も隊員……」
「隊員の前に殿下の伴侶殿ですから」
「うあ」
「それに、アキラさんの魔法で助けられてるのは私たちの方なんですから。休めるときは休んでいてください」
「…はい」
ザイルさんもそうだけど、オットーさんも俺に優しい。気遣ってくれるし、俺の考えとかもちゃんと尊重してくれる。頼りになるお兄さん、って感じだ。
「いつも気にしなくていいと言ってるだろ」
「そうなんだけどさ…」
クリスに肩を抱かれて、こめかみにキスをされる。
クリスは身内すぎて、そういわれてもなかなか安心できないんだよ。オットーさんやザイルさんも、身内みたいなものだけど、俺には嘘つかない気がするし。駄目なことは駄目だと言ってくれると思うし。
「んと、それで、クリス」
「ああ、悪い。エーデル領周辺の感知をしてもらいたい。明日には王都に戻るから、憂いは残したくないんだ」
「明日帰るんだ」
「ああ」
俺、日程を全く把握してなかった…。
そっか、明日か…なんてことを思ってる間に、俺の足にしがみついてたマシロがクリスの足にしがみついた。「うんしょ」って掛け声をかけながら足をよじ登ろうとしているマシロを、クリスがひょいと抱き上げた。
「邪魔するな」
「ぁぃ」
マシロが口を手でふさぐ。
邪魔しない、口を挟まない意思表示らしい。
「えっと…エーデル領内でいい?」
「ああ。無理のない範囲でいい」
「りょーかい」
クリスの手を握る。
それで魔力が流れてくるわけじゃないけど、それが落ち着くから。
軽く目を伏せる。
自分の魔力を広げていくと、すぐ傍にクリスの魔力を感じられる。
屋敷の中に、薄い黄色ぽい魔力の色。これはミナちゃんだろうか。
屋敷の外には、それなりに慣れた魔力。エアハルトさんと…、なんとなく俺を視るアルフィオさんの魔力。二人一緒にいるんだ。
それから、魔力の範囲を広げていく。
中心街から、もっと外へ。
通ってきた村以外にも、中心街周辺には村や街がある。
どこからどこまでがエーデル領なのかはいまいちわからないけれど、小さな魔力が固まってる場所が村や街の場所。そこからもう少しだけ広げて――――
「アキ、もういい」
「あき」
二人の声が聞こえて、意識が戻る感じがした。
「やりすぎだ」
クリスの表情が少し硬い。
そんなことないのに…って声を出そうとしたけど、こめかみに少し痛みが走って口を閉ざしてしまった。
魔力を使いすぎたわけではないけど、なんというか、細かく視すぎたのかもしれない。
繋いでいた手が冷たくなって、クリスは俺を止めたらしい。
「ん、ごめん」
少し疲れたかなぁくらいだから、深刻な状態じゃないんだけどね。
「んっとね、とりあえず気になるものはなかった。中心街の中に、魔力が高い人が多分二人…かな。子供か大人かはわからなかったけど、暴走しそうな感じではなかったし、冒険者の人かもしれない」
「わかった。ありがとう、アキ。――――オットー、そういうわけだ。これ以上は問題ないだろう。準備を進めてくれ」
「ええ、了解いたしました。アキラさん、ありがとうございます」
「役にたててよかったです」
魔法とか感知とか、それだったらいくらでもできるからね。
*****
そろそろ帰ろう…。
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