魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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自由の国『リーデンベルグ』

9 『丁度いいの』って?

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 プチ家族会議をした翌日。
 クリスが仏頂面で書き上げた書状を、エーデルに届けるよう、アルフィオさんに託した。もちろん、彼の希望通り、嫌がるエアハルトさんも同行。ついでにマシロの花も摘んできてもらう。
 アルフィオさんが一時的に不在になるので、トビア君にもアルフィオさんが戻るまではお休みということで話した。いつもと違うお休みだけど、家族とのんびりしてもらえればいい。
 リアさんへの書状については、リーデンベルグへ専属侍女(期間限定)として俺たちに同行してほしいって内容。
 完全にアルフィオさんを使いまくるような予定らしく、同行できる場合は数日後にまた迎えに行くとか書いてある。予定があわないならはっきり無理と断っていいとも書いてあるから、往生際が悪い。
 リアさんを知ってるみんなは、断るなんてありえないと思ってる。
 それは書状を用意した本人であるクリスも一緒で、リアさんが使える客室の準備をそうそうに始めた。
 顔見知りで料理の件でも認知度のあるリアさんだけど、一応、陛下とお兄さんにも、メリダさんの代わりに侍女として同行することになりそうだと伝えた。
 そのとき、マシロも同行することを伝えたらしいんだけど、マシロの同行についてだけ陛下が最後まで折れなかったらしい……。ははは。

 同行者については大体選定が終わった。
 けど、今度は生まれたての魔法師団の方の問題。
 今回の訪問に団員は連れて行かないから、俺がいない間に何をするかっていう問題が。
 クリス隊のようにできあがった組織じゃないし、ガンガン依頼がくるわけでもない。むしろ、今依頼が来ても対処できない。
 今回のトビア君のように一時的に家に戻ってもらうことも考えたけれど、意外な提案があった。

「冒険者にならないか?」

 そう、俺に言ったのは、相談役なギルマスだった。

「折角の魔法師だ。遊ばせておくのは勿体ないだろ?」

 と。
 どう勿体ないのか判断に迷うのだけど。

「こっちには魔法師を手配した方がいい依頼も普通に上がってくるからな。魔物討伐についていくのも経験にはなるだろうが、近場の依頼をこなすのもいい訓練になるだろ」
「でも、それっていいのかな?魔法師団って一応国所属だけど…」
「得られる報酬は寄付にでも回せばいい。冒険者って名前で経験を積むための訓練ってことにすれば問題はない、だろ?クリストフ」
「そうだな」
「それに、今後の身の振り方の参考にだってなるだろ。…団を抜けたくなったら、なんの制約もなく許可するだろ?坊主なら」
「うん」

 辞めたいと言われたらちょっと寂しいなとは思うけど、それは認める予定。自分がやりたいことをやってもらうのが一番だと思うから。
 そう思われないように頑張るしかないけど。

「まあ、あとはあいつらの考え次第だがな。最初はちゃんと指南役もつけてやる。丁度いいのがいるからな」

 丁度いい指南役……って、誰だ。
 冒険者の知り合いなんてたくさんはいないからわかんないよ、俺。

「あと、クリストフ、お前の隊からも若いやつよこせ。毎日じゃないんだ。王太子殿下の指示とうまく都合つけさせろ」
「……レヴィ、ここぞとばかりに人手を増やすことしか考えてないんじゃないのか?」
「いや?どちらにとってもうまい話しだと思ぞ?」

 ギルドに寄せられる依頼は本当に多種多様。
 魔物被害に関するものや護衛の依頼が多いけれど、薬草採取とか村や町の塀の建築依頼や田畑に関する依頼も多いのだという。

「それぞれの適正はあるだろうが、細かな魔法制御を身に着けるなら実際にやった方が早いこともある。幸い、お前のとこに来たやつはまともなやつばかりだ。魔法制御もできている。あとは実践経験だろ?戦闘ばかりが魔法師の仕事じゃないって、お前がいつも言ってることだ。その実践を積ませることができる」

 なるほど、と思った。
 城にいてばかりの訓練は確かに必要なものだった。今まで独学だった魔法の扱いを、ギルマスっていうベテランから指導を受けることでより洗練されたものへと高めることができているから。感覚的に魔法を使ってる俺なんかより、ギルマスの方が的確に指導ができるから。なんなら俺も時々指導をうけるくらいだし。
 でも、やっぱり限界はあるってことだ。

「みんなの同意を得られたら、そのときはお願いします」
「ああ」

 いつもとは違う改まった姿勢で、頭を下げた。
 普段フランクに話したりしてたけど、今はそういうものじゃない。俺が、お願いをする立場だから。

 その日のうちにナディアさんとマウリオさんには冒険者登録に関して話をした。
 二人とも悩んだりするかと思ったけれど、意外にもすぐにうなずいてくれる。

「私、あまり外にでたこともないですが、私にできることがあるなら引き受けたいです」
「俺もいいっすよ。水やりもできますんで」

 二人とも、とても軽かった。
 マウリオさん、水やりって。ちょっと笑った。
 これで、俺たちがリーデンベルグに訪問してる間、ギルマスのところで冒険者として活動することが決まった。あとはトビア君だけど、トビア君も多分受け入れてくれると思う。ギルマスのこと信用してるしね。ちゃんと話はするけれど。

 ……それにしてもさ。

 俺、まだ冒険者登録してないんだよ。
 クリスはしてもいいって言ってたのに、なんだかんだでしてないんだよ。
 いいなぁ。
 冒険者。
 俺も早く登録したい。





 ちなみに。
 ギルマスの言ってた『丁度いいの』。
 …エアハルトさんだった。
 うん、全くもって忘れてた。
 エアハルトさん、もともと冒険者だったね……。








*****
『丁度いいの』
エアハルトさんかエルかで迷いましたが、エアハルトさんになりました。
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