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自由の国『リーデンベルグ』

37 マシロ、大泣きする

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 クリスも一緒にって条件を出して、ようやく許可が下りた。
 でも、俺とクリスの判断だけでどうこうできることではないのでグレゴリオ殿下に相談したら、案外あっさりと許可をくれた。しかも、「面白そう」という理由で、殿下自身も視察に行くことに。殿下経由で学長にも連絡を入れて、すんなり了承。
 王族の『お願い』なんて断れないよね…って思ったけど、学院長は王族のお願いだろうが、断るときは断る胆力のあるお方らしいから、本当に歓迎されているらしい。

「私もしばらく学院の視察をしてませんでしたしね」

 なんて笑いながらグレゴリオ殿下が言っていた。
 でも、最初の「面白そう」が本音なんだろう。
 面白そうってどういうことだ。俺が何かするとでも思われているんだろうか。

 とにかく、そんな感じで話をつけたけれど、納得しないのがもう一人。

「やらぁ!!ましろ、いっしょ、いく!!」
「マシロ」
「あきぱぱも、ういすぱぱも、おかえぃ、なぃ、やぁ!!ましろ、さみち!!」

 明日から泊まりで……って話したら、マシロの大泣きが始まった。

「マシロ」
「うー…、らって、ましろ、いちゅも、おりゅすばん、いっしょ、ないっ」

 俺の足にしがみつくマシロ。
 確かに、この国に来てからも、あまりマシロに構えていないけど。

「おやすぃも、およも、ちゅう、ない。ましろ、いっしょ、ない」

 寂しいってことだもんなぁ。
 なんか、俺、エルスターにいてもこっちにいても、マシロに寂しい思いしかさせてない。

「うん…ごめんね、マシロ」

 抱き上げたら小さな手で俺にしがみついてきた。
 ぴょこっと出た耳が元気なくふせている。

「あきぱぱ……ましろ、きらぃ?」
「なんで?」
「いっしょ、ない……」
「嫌うなんて絶対ないよ。マシロのこと大好きなのに」
「う…。ましろも、あきぱぱ、しゅき」
「うん」
「…いっしょ、いい?」
「うーん……」

 自分の国じゃないし、目的は学院生の魔物討伐演習だし、簡単に「いいよ」とは言えない。けど、連れていけないとも言えない。
 ひっくひっくと肩を揺らすマシロのもふもふな猫耳をなでたり頭をなでたり背中をなでたり(とにかくなでる)しながら、俺もうーんうーんって悩んでいたら、リアさんが「はい」っと挙手をした。なぜ。

「一緒に行けばいいかと」
「……リアさん」
「マシロちゃんが行くなら私も行くし。私、戦闘能力は皆無だけど、それなりに世渡りはうまいわよ。そこのところはアキラさんより多分。年の功で」

 ……本人から『年の功』と言われてしまうと、それ以上何も言えない。十四……あ、十五歳になったんだっけリアさん。

「昼間は子猫マシロちゃんとしてアキラさんと同行したらどうかしら。もちろん、外遊びは危ないからってことで、昼間はテントの中で過ごしてるってことにして、夜は私と一緒。一泊の演習なら可能だと思うのよ。マシロちゃんだって、人前で人の姿に戻るようなことはしないだろうし」
「う、なぃ」
「もちろん、子供姿のままで行くのもいいけど、それだとお城にいるのと変わらなくなっちゃう。マシロちゃんが寂しいって言ってるんだから、子猫マシロちゃんを連れていく方法は絶対ありだと思う。……というか、殿下はどう思われますか」

 リアさんはクリスと話すときはがらりと口調も雰囲気も変える。さすがです。

「いいんじゃないか?」
「クリス」
「俺とアキがいるんだ。どうにでもなるだろ。…俺自身がアキの傍に常にいられるわけじゃないしな。マシロ、アキを守れるか?」
「う、まもりゅ」
「なら、セシリアの提案で行こう」

 クリスが認めてくれてほっとした。
 マシロは俺から少し頭をあげて、大きな目をぱちぱちと瞬かせる。

「いっしょ?」
「うん。一緒に行こう」
「ほんと?」
「本当!」
「きゃああ!」

 泣いてたのはもう忘れたかのように、感激の声をあげて、出ていなかった尻尾が一瞬で現れた。

「うれち、ましろ、しぁわせ!!」

 うん。
 マシロの笑顔、可愛い。





 そして、当日。てか、翌日。

「あー……、では、今回の演習に関しては、隣国の王族の方が視察のため同行されることになりましたが、皆さん、臆することなく平常通りの行動を心がけてください。よいですか。少しでもいいところを見せようだとか、点数を稼ごうだとか、しないよう、平常心で、お願いします」

 疲れ切った俺たちの担任の教師先生の顔。なんかごめんなさい。絶対俺のせいだよね。
 その背後には、クリスたちが勢ぞろい。その顔ぶれに、生徒たちもざわめきを隠せない。
 さすがにマシロとリアさんは馬車の中で待機中。

「まじか…」

 隣から、呆然とする声。

「まじです…」
「アキラ、お前なにしたんだ」
「……行っちゃ駄目って言われたから、クリスも来たらいい……って軽く言ったら、こうなった」
「軽く……って、んな軽く言っただけでなんでこんなことになってるんだよ……」
「だよねぇ?」

 五学年と最高学年の担任の教師の人たちとほかに教師が三名(計五名)、魔法騎士団から五名。ここまではいつも通りの配置。
 更に、クリスが参加。クリスが参加することで、オットーさん、ザイルさんの護衛コンビが自動的に参加。普段あまりかかわりのない護衛で来ている近衛騎士団の方々も参加。
 クリスの参加を伝えられ、面白がってるグレゴリオ殿下が参加だから、護衛の方々も数名参加。

「ただの演習だぞ?なんでこんな本格的な討伐遠征に行くような面子になってるんだよ……」
「さあ…?」

 …ほんとにね。
 どんな魔物が出ても、瞬殺できるくらいのメンバーだよ……。




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