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幼馴染み二人と僕の15歳の試練
16 嬉しいこと①
しおりを挟む額に載せられた濡れたタオルが気持ちいい。
熱なんて、どれ位ぶりだろう。
朝からの緊張と疲れもあって、僕はぐっすり眠ってたみたい。
意識が浮上してきて、頬を撫でる絶対間違えないぬくもりに気づいて、大急ぎで目を開けた。
「「フィー」」
「え、うそ」
僕を覗き込んでた二人――――今この場にいるはずのないディーとエルが、くすくす笑い出す。
「嘘ってなんだよ」
「私達はおばけか何か?」
「え、だって」
会えるはず、ないんだもん。
「……僕の、」
「夢じゃないよ」
右の頬に、ディーがキスをしてくれる。
「本物の私達だよ?」
左の頬に、エルからのキス。
「あまり長居は出来ないが」
「依頼先から戻ったら、ディーリッヒさんって神官さんが私達を待ってたんだよ」
「え」
ディーリッヒさんが?どうして?
「フィーが熱出して倒れたって聞いて、いても立ってもいられなくて」
「二つ返事で来ちゃったから、私達かなり汚い格好してるんだけどね」
心配そうな顔のディーと、苦笑するエル。
……本物なんだ……って思ったら、目からぼろぼろ涙が落ちて。
「ディー…エル…!」
ガバっと起き上がって、二人に抱きついた。
「フィー、汚いから」
「戻ってきて服も着替えてないんだよ」
「汚くなんてないもん……!!」
ぎゅうぎゅう抱きついていたら、ふたりともやっぱり苦笑して、それでも抱きしめ返してくれた。
「熱下がったみたいだな」
「フィーの匂い……」
二人同時に涙を拭ってくれる。
…僕、ほんと、二人の前だと泣き虫になっちゃうよ……。
「あのね、ディー、エル」
「うん。でも、フィー」
「その前にね」
「「十五歳、おめでとう」」
「ありがとう!」
今日、言ってもらえるって、思ってなかったから、やっぱり僕は涙が止まらなくなる。
「フィー…」
ディーの、少し熱を持った声。
「ん……」
顎を指先だけで持ち上げられて、上向きに固定された。それから、少しかさついたディーの唇が、僕のに重なってくる。
「ん……んん」
キス……好き。
ディーの熱い舌が、僕の中に入ってきて、一生懸命それに僕の舌を絡めるように動かしてみる。
「ん…ふぁっ」
苦しくなって少し口を離してしまったけど、すぐにディーが追いかけてきた。
「可愛い」
耳元で、エルの声。
くぐもった声に、背中がぞわぞわって震えた。
「フィー……愛してる」
「んんぅぅ」
耳……熱いよ。
喉の奥に溜まったのをごくんって飲み込んだら、ディーがゆっくり離れていった。最後にちゅって音を立てて。
はふ…って息をついたら、すぐにエルの唇が重なってきた。
「んんぅ……んぅ」
二人の熱を感じていたら、身体がモゾモゾしてくる。足を伸ばしたり曲げたりしてたら、エルの手が僕の足をなで上げてきた。
「ふぁ……っ」
「だめ。逃げないで」
「んん……っ」
噛みつくように、食べられるように。激しくて。
「少しだけ…な。本当に時間がないから」
「あ、やぁ」
ディーが、耳を舐めながら、残念そうに言ってくる。
最初からずっと言ってた。
あ、そうだ。
僕も、言わなきゃ、ならなくて。
「あ……あの、ね」
エルの唇が離れて、熱い目元を自覚しながら、二人をただじっと見つめた。
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